サイエンス

新型コロナウイルス感染症の症例数が増えても死者数が増えていないのはなぜか?


イギリスでは、2020年6月ごろに落ち着きを見せていた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数が2020年7月以降急増していますが、死者数は横ばいになっていると報告されています。COVID-19の感染者数が増えているにもかかわらず、死者数が増えていない理由について、イギリスにあるオックスフォード大学の地理学教授ダニー・ドーリング氏が解説しました。

Coronavirus: why aren’t death rates rising with case numbers?
https://theconversation.com/coronavirus-why-arent-death-rates-rising-with-case-numbers-145865

以下は、イングランド政府とウェールズ政府の発表を元にドーリング氏が作成した、1日に発生したCOVID-19の症例数と死亡者数のグラフです。赤枠で囲われた2020年7月以降の部分をみると、1日当たりの症例数(青線)が増加している一方で、1日当たりの死者数(赤線)は増えていないことが分かります。


ドーリング氏は、「症例数が増えているのは、COVID-19を患っている人の数が増えているからではなく、より多くの検査が行われているからです」と指摘。その上で、「死者数が増加していないのは、検査を受けた人口100万人当たりの実際の症例者数は増加していないからです」と述べました。つまり、検査数が増加したことにより検査で判明したCOVID-19感染者が増えている一方で、実際の感染者数そのものは増えていないため、死亡者数も増えていないということになります。

また、ドーリング氏は「6月以降、COVID-19検査で陽性と診断される人は着実に増えていますが、その中における若者の割合は増加し、高齢者の割合は減少しています。これにより、COVID-19にかかっている人の死亡率が以前に比べて格段に低くなったと考えられます」と述べて、COVID-19で死亡するリスクが高いとされる高齢の感染者の割合が減っていることが、症例者数の増加に反して死亡者数が増えていない理由の1つだと指摘しました。

ドーリング氏の主張の裏付けとなるのが以下。表は左から年齢、イングランドとウェールズにおける1週間の死者数(男女別)、1000人当たりの死亡率(男女別)となっており、年齢が高ければ高いほど死者数が増えて死亡率も高くなる傾向があることが示されています。


なお、COVID-19に関する初期の調査でも、年齢層が上がるにつれて致死率が上がることが分かっています。

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ドーリング氏がイギリス国家統計局から入手したデータによると、2020年8月末の時点におけるCOVID-19の死亡率は、65歳の男性と75歳の女性では1000人に1人、30~34歳では5万人に1人、20~24歳では10万人に1人と、年齢が若ければ若いほど死亡率が低かったとのこと。

このことからドーリング氏は「若い人が高齢者にCOVID-19をうつすとの懸念もありますが、若い人が病気にかかっても将来的に発症する可能性が非常に低い場合、将来高齢者にCOVID-19を感染させる可能性はとても低いものになります。これが、症例数が増えてもパニックに陥ってはならない理由の1つです」とコメントしました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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