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一体なぜ「新型コロナウイルス感染症の被害データは致命的にも軽微にもなるのか?」を分かりやすくまとめたムービー


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が落ち着きを見せ始めた地域では、「COVID-19がもたらす被害と、経済を閉鎖することによる影響のどちらが大きいのか?」といった議論が再燃しています。そこで、アメリカのニュースメディアVoxが、「なぜCOVID-19の被害の大きさを推しはかるのが難しいのか?」を分かりやすいムービーにまとめました。

Why Covid-19 is more AND less deadly than we knew - YouTube


COVID-19がもたらした被害は甚大なものでした。アメリカのニューヨーク市だけでも、2020年5月16日までに18万9031人がCOVID-19検査で陽性と診断され……


2万720人がCOVID-19で命を落としています。


しかし、専門家は「COVID-19検査は暗い部屋の中の懐中電灯のようなもの」と指摘しています。これは、懐中電灯で照らした所しか見えないように、検査した人の感染者数および死亡者数しか分からないという意味です。


統計学の分野では、既知のCOVID-19症例数と死亡者数の関係は「致命率」と呼ばれています。


ニューヨーク市の場合、致命率は11%、つまりCOVID-19にかかった人の約9人に1人が命を落としている計算になります。しかし、この数字は地域によって大きく異なります。


例えば、新型コロナウイルス対策としてロックダウンを行わないという独自の方針を採ったスウェーデンでは、5月中旬までに新型コロナウイルスの致命率は12%を越えましたが、アイスランドは1%を下回りました。


また、タイミングによっても異なります。アメリカも、3月末には致命率が1%近くまで落ちましたが、数週間後には再び増加してしまいました。


致命率にこれほどの差があるということは、地理的な要因がかなり大きいということを示しています。例えば、医療システムが行き届いていない地域や高齢者が多い地域では、より致命率は高くなると考えられます。


また、検査体制にも大きく左右されます。もし大規模な調査により重症ではない人もCOVID-19感染者としてカウントされていれば、分母が大きくなるため致命率は小さくなります。しかし、ほとんどの国々ではCOVID-19感染者が見過ごされているといわれています。


また、死亡者も見過ごされる傾向にあります。ニューヨーク・タイムズの推計によると、ニューヨーク市の公式発表に含まれていないCOVID-19での死亡者は数千人以上にものぼるとされています。致命率を割り出すために必要な数字は変動が大きいので、COVID-19の被害を正確に推し量るのは難しいというわけです。


しかし、手がかりはあります。それにはまず、2017~2019年におけるあらゆる死因を調査しグラフにします。


これに、2020年のデータを重ね合わせると、2020年の死亡者数が突出して多いことが分かります。この飛び出た領域が「超過死亡」です。


COVID-19にまつわる超過死亡は、イギリス


トルコのイスタンブール


スペインなど世界各国で見られます。超過死亡には自宅で死亡した人や、検査から漏れたCOVID-19の死者も含まれているので、このデータを踏まえるとCOVID-19のパンデミックはこれまで以上に致命的になる可能性があります。


しかし、逆にCOVID-19の影響を軽微にするような要因もあります。ニューヨーク市では、食料品店の買い物客を対象とした「抗体検査」が実施されました。これは、COVID-19に感染すると血液中に産生される抗体の有無を調べることで、検査対象者が過去にCOVID-19にかかったことがあるかどうかを検査するものです。


この検査の結果、ニューヨーク市民の実に19.9%がCOVID-19にかかったことがある可能性が示されました。これをニューヨーク市の人口にあてはめると、5月上旬のCOVID-19感染者数は150万人以上にも膨れあがります。


死亡者数を変えずに、感染者数を増やして再計算すると、11%(9人に1人が死亡)だった致命率は1.1%(60~90人に1人が死亡)にまで下がります。


しかし、これはいいニュースとはいえません。なぜなら、多くの人が自覚のないままCOVID-19の感染を拡大させ、本来なら防げたかもしれない多くの死者が発生した可能性が高いからです。


COVID-19とほかの死因を比較するのにも、限界があります。例えば、アメリカではたった3カ月の間に、2018年に交通事故で亡くなった人を上回る人数がCOVID-19で亡くなりました。


その一方で、がんや心臓病に比べればCOVID-19の死者数はかなり少ないといえます。


数の大小以前に、交通事故やがんと違ってCOVID-19は伝染病であるため、媒介者である人間の行動を予測することは困難だという問題もあります。


「従って、COVID-19の死者数を調べるどんなにいい統計データがあったとしても、このパンデミックがもたらした犠牲の本当の大きさを知ることはできません」とVoxは結論付けています。

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in 動画, Posted by log1l_ks

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