「新型コロナウイルス対策に大量のビタミンDが有効」という証拠はない、副作用の懸念もあるとの指摘
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策の外出制限により、日光を浴びる機会が減っていることからイギリス栄養士会(BDA)がビタミンDのサプリメント摂取を推奨するなど、ビタミンDがにわかに注目を集めています。また、これまでの研究でも新型コロナウイルスの重症患者はビタミンD不足だということが示されています。その一方で、栄養学者らはビタミンDの過剰摂取が招く有害な副作用について警鐘を鳴らしました。
Vitamin D and SARS-CoV-2 virus/COVID-19 disease | BMJ Nutrition, Prevention & Health
https://nutrition.bmj.com/content/early/2020/05/15/bmjnph-2020-000089
High doses of vitamin D supplementation has no current benefit in preventing or treating COVID-19 -- ScienceDaily
https://www.sciencedaily.com/releases/2020/05/200521104641.htm
ビタミンDは体内でのカルシウムやリン酸の濃度を調節し、骨や歯、筋肉といった体組織の維持のために重要な役割を果たしている必須栄養素の1つです。このビタミンDとCOVID-19について取り上げた研究の中には、成人の耐容上限量である「1日当たり4000 IU」を大きく超える高用量のビタミンDを摂取することで、感染のリスクを低減させることが可能だとするものが散見されます。
しかし、イギリス・サリー大学栄養学部の学部長を務めるスーザン・ランハム=ニュー教授らの研究チームがこうした研究の内容を詳しく検討したところ、高用量のビタミンDを摂取することがCOVID-19の予防または治療に役立つとの証拠を発見することはできませんでした。そのため、研究チームは「現状では、ビタミンDの過剰摂取を勧める主張は、この分野をきちんと調査した研究に基づくものとはいえない」と結論しているとのことです。
ランハム=ニュー教授はビタミンDの適切な摂取について、「確かに、体内におけるビタミンDレベルを十分に保つのは、全身の健康に不可欠です。あまりに不足している場合は、くる病や骨粗しょう症を引き起こします。しかし、ビタミンDを過剰摂取すると、今度は高カルシウム血症などの問題が発生します」と述べました。
また、研究チームはインフルエンザなどCOVID-19以外の感染症とビタミンDを結び付けた研究の精査も行いました。これらの研究では、確かにビタミンD濃度の低下が急性呼吸器感染症と関連していることが明らかなっています。しかし、こうした研究は主に発展途上国から収集したデータに基づいているという限界があるため、先進国に住んでいる人々の栄養状態に適用することはできないとのこと。そのため、「ビタミンDの摂取量と感染症に対する抵抗力には、これまでのところ明確な関連性はない」と研究チームは考えています。
バーミンガム大学で筋骨格の機能と疾病について研究しているキャロライン・グレイグ氏は、「私たちはビタミンDのほとんどを日光浴から得ています。しかし、外出制限により日光を満足に浴びることができない場合は、ビタミンDの十分な供給が課題となります。こうした場合には、ビタミンDの補給が推奨されますが、その際は医師の指示や適切なガイダンスに基づく必要があります」と述べました。
論文の共著者であり、イギリス栄養財団の事務局長でもあるジュディ・バトリス氏は、適切なビタミンDの摂取について「私たちは、イギリス栄養士会(BDA)のガイダンスに基づき、1日あたり10マイクログラムのビタミンDサプリメントの摂取を検討することをお勧めします。これは10~3月の冬季についてのものですが、外出制限下では通年で有効です。また、食事から摂取する場合は、脂がのった魚や赤身肉、卵黄、ビタミンDが添加された朝食用シリアルなどを含むバランスの取れた食事を心掛けてください」と話しました。
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