大声で喋ると新型コロナウイルスを含む飛まつが1分間に1000個以上も口から放出される
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染メカニズムは完全に明らかになっていませんが、物体表面を介してウイルスを獲得する「接触感染」とくしゃみ・せきによって口から放出される飛まつが粘膜に付着する「飛まつ感染」が主な感染経路だと考えられています。この飛まつ感染に関して、「大声で喋ると1分間に新型コロナウイルスを含む可能性のある飛まつが1000個以上も口から放出される」という研究結果が発表されました。
The airborne lifetime of small speech droplets and their potential importance in SARS-CoV-2 transmission | PNAS
https://www.pnas.org/content/early/2020/05/12/2006874117
High SARS-CoV-2 Attack Rate Following Exposure at a Choir Practice — Skagit County, Washington, March 2020 | MMWR
https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/69/wr/mm6919e6.htm
Coronavirus spread: One minute of talking releases 1,000 droplets
https://www.inverse.com/mind-body/louding-speaking-spray-coronavirus-droplets
COVID-19は、唾液や鼻水などの「飛まつ」が空気中に拡散することで感染が拡大すると考えられています。そんな飛まつが会話によってどの程度放出されているかを調べるため、アメリカ国立衛生研究所のPhilip Anfinrud氏率いる研究チームは、「レーザー光線を照射することで飛まつを視覚化して会話中に放出される飛まつの数を計測する」という実験を行いました。
この実験の結果、大声で喋った場合には秒間数千個もの飛まつが放出されることが判明。この中でも、新型コロナウイルスを含む可能性のある直径10マイクロメートルから100マイクロメートルの飛まつは、1分間に1000個以上も放出されていたとのこと。以下がレーザー光線によって視覚化された飛まつの例です。
個々の飛まつがどれだけ空気中にとどまるかは、サイズによって異なりますが、そのサイズは空気中で空気中で変化します。今回の調査によると、口から放出された直後に飛まつは小さくなり始め、元のサイズの20%から34%まで縮小します。しかし、いずれのサイズでも8分間から14分間は空気中にとどまるという結果が得られました。なお、今回の調査は空気のよどんだ閉鎖環境で行われたため、空気の対流があるような開放空間では異なった結果が得られる可能性があります。しかし、研究チームは「開放された空間では飛まつの飛距離が伸び、空気中に広く拡散する可能性がある」と指摘しています。
また、2020年5月15日にアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が「発声がCOVID-19を拡散させた」と思われる事例を発表しています。この事例は2020年月にワシントン州スカジット郡で行われた「2.5時間の合唱練習」に関するもので、61名の練習参加者のうちに1人の感染者がいたというケースです。練習後、32人がCOVID-19に感染し、20人が感染の疑いがあると診断されたため、計52人(全体の87%)にウイルスが拡散した結果となりました。なお、感染者のうち3人が入院、2人が死亡しました。
この結果について、CDCは「練習中に接近したことに加えて、歌う行為によって感染が促進された可能性があります」と記しています。
今回の研究と事例を報じたThe Inverseは、飛まつ対策として有効なのは「マスク」だと言及。一方で、「大声で喋る人にマスクを着用してもらうのは困難かもしれません」ともコメントしています。
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