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従業員から「新型コロナウイルス対策が不十分だ」と非難されているAmazonが「ディスタンス・アシスタント」を開発


Amazonは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック中に通販需要が増大したことを受け、「新型コロナウイルス特需」を経験しています。その一方で従業員からは「職場のCOVID-19対策が不十分だ」と非難されていましたが、2020年6月16日のブログ投稿で「従業員が他者と適切な社会的距離を保つことをサポートする『Distance Assistant(ディスタンス・アシスタント)』を開発した」と、Amazonが発表しました。

Amazon introduces 'Distance Assistant'
https://blog.aboutamazon.com/operations/amazon-introduces-distance-assistant

Amazon’s AI-powered ‘distance assistants’ will warn workers when they get too close - The Verge
https://www.theverge.com/2020/6/16/21292669/social-distancing-amazon-ai-assistant-warehouses-covid-19


COVID-19のパンデミックに伴って多くの国々で都市封鎖などの対策が実施されたため、オンラインショッピングの需要が急激に増加していることが明らかとなっています。Amazonもこの特需の恩恵を受けていますが、物流拠点であるフルフィルメントセンターなどの現場で働く従業員たちはAmazonのCOVID-19対策に不満を持っており、従業員らによるストライキも実施されています。

また、フランスでは「業務の制限や健康に配慮した手順の導入」を求める裁判所命令を受けて、Amazonの倉庫が一時閉鎖される事態にもなりました。

Amazonがフランスの倉庫を一時閉鎖、新型コロナウイルス対策が不十分だったことが原因 - GIGAZINE


そんな中、Amazonでロボットイニシアチブのヴァイス・プレジデントを務めるブラッド・ポーター氏は新たなブログ投稿で、AmazonがAIを活用して従業員同士が一定の距離を保つことをサポートするシステムを開発したと発表しました。

COVID-19のパンデミックが始まった時、Amazonのエンジニアたちは必要な製品を顧客に届けるために働く従業員の健康と安全を守るため、社会的距離を保つ方法を模索し始めたとのこと。エンジニアたちは建物内のカメラ映像にAIと機械学習を適用し、建物内でも特に人通りが多い場所を特定して社会的距離を保つための追加のソリューションである「ディスタンス・アシスタント」を実装したそうです。


実際にAmazonのディスタンス・アシスタントが動作する様子は、以下のムービーで確認できます。

Amazon introduces "Distance Assistant" - YouTube


ディスタンス・アシスタントは大きなモニターとカメラ、深度センサー、オフラインのローカルコンピューターを使用して、社会的距離に関するフィードバックを従業員に提供するシステムです。モニターの中に映っている人の周囲に緑色の円が表示されており、この円が緑色の場合「周囲の人と適切な社会的距離が保たれている」ことを意味します。円の大きさは半径6フィート(約1.8m)です。


Amazonの建物内には大勢の従業員がいるため、人通りの多い通路では適切な社会的距離を保てないケースもあります。


従業員同士が近づきすぎると、モニター中に表示されている円が赤色に変化し、従業員らに警告を発するとのこと。


モニターは建物内の目立つ場所に掲げられており、従業員たちはモニターをチラリと見ることで自分が安全かどうかを確認できます。


集まっている人々のうち誰かがモニターを見て、自分たちの円が赤色であることを認識すれば……


お互いに離れて適切な社会的距離を取り戻せます。


ディスタンス・アシスタントに必要なデバイスは全てスタンドアローンユニットとなっているため、電源さえ確保できれば建物の入り口やその他の交通量が多くて視認性が高い場所に迅速に展開し、従業員らに社会的距離を保つように注意を促すことができるとのこと。

ポーター氏によると、ディスタンス・アシスタントは記事作成時点で一部の建物のみに導入されており、従業員らはモニターを通じて即座に視覚的なフィードバックを得られることに価値を感じているそうです。従業員からのポジティブなフィードバックに基づき、Amazonでは数百のディスタンス・アシスタントユニットを今後数週間で展開するほか、ソフトウェアやAIをオープンソース化することも検討しているとポーター氏は述べました。

テクノロジー系メディアのThe Vergeは、Amazon以外の企業もAIとカメラ映像を組み合わせて社会的距離について警告するシステムを開発しており、中にはBluetoothを利用して従業員同士の社会的距離を保とうと考えている企業もあると指摘。こうした対策は従業員らが倉庫などで勤務するために必要であるものの、新たなテクノロジーが企業による従業員の監視を強めるのではないかと懸念するプライバシー専門家もいるとのことです。

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in ソフトウェア,   ハードウェア,   動画, Posted by log1h_ik

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