インターネットもGPSも使用しないウェアラブルな「新型コロナウイルス接触追跡デバイス」がシンガポールで配布される

2020年3月ごろまでは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の死者がたった2人しか確認されておらず、COVID-19対策の手本とされてきたシンガポールですが、その後COVID-19感染者が急増し、一転して「東南アジア最悪」の被害を出しています。そんなシンガポールが、インターネットやGPSを使用しないという新しいアプローチの「新型コロナウイルス接触追跡デバイス」を発表しました。
Contact-tracing device will not track location; people can use TraceTogether if they prefer, says Vivian Balakrishnan, Singapore News & Top Stories - The Straits Times
https://www.straitstimes.com/singapore/contact-tracing-device-will-not-track-location-and-people-can-use-tracetogether-if-they
Singapore looks to ease privacy fears with 'no internet' wearable device | ZDNet
https://www.zdnet.com/article/singapore-looks-to-ease-privacy-fears-with-no-internet-wearable-device/
シンガポール政府は2020年4月に、Bluetoothを用いた接触追跡アプリのTraceTogetherをリリースしました。政府の発表によると、TraceTogetherは人口の25%に当たる約180万人が自分の端末にインストールしていますが、理想的な参加率とされる75%にはまったく届いていないのが実情とのこと。

by Government Technology Agency of Singapore
TraceTogetherの普及が進まない背景には、インストールした端末のバッテリーの寿命が大幅に短くなるという不具合や、iOSの「アプリがバックグラウンドになるとBluetoothを一時停止する」という仕様によりiPhoneなどでは適切に動作しないという問題があると指摘されています。
そこで、シンガポール政府は6月8日に、アプリに代わる新たな取り組みとして「TraceTogetherトークン」をシンガポール在住者に配布する計画を発表しました。シンガポール政府のIT事業「Smart Nation」の担当相であるVivian Balakrishnan外相は記者会見で「特に強調したいのは、TraceTogetherトークンには電子タグもGPSもないことです。その代わりに、Bluetoothで検知した接触データのみが記録され、接触を追跡する用途でのみ機能します」と述べました。
TraceTogetherトークンはスマートフォンなどとは独立したウェアラブルデバイスで、6月の後半から順次シンガポールに住む人への配布が開始される予定です。また、Balakrishnan氏によると、配布されてもトークンの携行は義務づけられていないとのこと。ただし、今後の義務づけについては「現時点では予測できません」と述べて、COVID-19の感染状況や保健当局の判断次第では、何らかの規制が行われる可能性に含みを持たせました。

政府が新たに始める接触追跡の取り組みに対し、シンガポール国民からはプライバシーを懸念する声があがっています。オンライン署名サイトChange.orgでは、TraceTogetherトークンの配布に反対する署名活動が展開され、記事作成時点で3万9727件の署名が寄せられました。
こうした懸念に対し、Balakrishnan氏はFacebookへの投稿で「プライバシーに関する懸念を寄せてくれた皆さんに感謝します。私も同じ気持ちです。だからこそ、私はTraceTogetherトークンがGPSやインターネット接続をしないことを保証します。利用者に関するデータは暗号化され、25日後には削除されます。唯一データが活用されるのは、利用者がCOVID-19の検査で陽性と診断された場合に、接触者の特定する必要がある時のみです」と述べて、理解を求めました。
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