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GoogleとAppleが共同開発した新型コロナ接触追跡APIはなぜアメリカで普及しないのか?


2020年6月13日に厚生労働省が、「新型コロナウイルス接触確認アプリ」を6月中旬にリリースすると発表しました。このアプリに活用されているGoogleとAppleによる接触追跡APIは、特に感染者数の多いアメリカで大きな注目を集めましたが、「実際にこの接触追跡APIを導入する州がいまだ存在しない」と海外ニュースメディアのNBCニュースが報じています。

Coronavirus contact tracing apps were tech's chance to step up. They haven't.
https://www.nbcnews.com/tech/tech-news/coronavirus-contact-tracing-apps-were-tech-s-chance-step-they-n1230211


Androidを提供するGoogleとiOSを提供するAppleは、新型コロナウイルスの感染拡大を追跡するためのシステムを2020年4月に発表しました。この接触追跡システムはスマートフォンのBluetooth通信を利用し、新型コロナウイルスに感染した人と接触したかどうかを特定し、通知することを可能にするもの。さらに両社はiOS端末・Android端末間で相互運用を可能にするAPIをリリースしました。

AppleとGoogleが「新型コロナウイルス追跡システム」をiOSとAndroidに組み込む - GIGAZINE


ニュージャージー州のフィル・マーフィー知事は、新型コロナウイルスの感染拡大を追跡する取り組みとして、感染の疑いがある人に電話をかけて行動を追跡するための人員1600人を採用するという計画を発表しました。この計画にはスマートフォンアプリを使った連絡先追跡は含まれておらず、マーフィー知事は「少なくとも現時点では、ニュージャージー州はウイルスへの暴露通知や警告を行うデジタル技術の推進を行っていません」と明言しました。

カリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は早い段階から接触追跡アプリの運用に意欲的な姿勢を見せていましたが、カリフォルニア州公衆衛生局の広報担当者であるアリ・ベイ氏によれば、2020年6月時点でカリフォルニア州ではスマートフォンアプリによる接触追跡システムは未構築だとのこと。ベイ氏は「感染者の接触追跡作業のほとんどは電話やメール、チャットで行うことが可能です」と述べました。


NBCニュースによると、ニュースメディアのBusiness Insiderが「GoogleとAppleの接触追跡APIを導入する予定かどうか」を各州の公衆衛生局に尋ねた記事を、2020年6月11日に発表。その記事によれば、2020年6月時点でGoogleとAppleの接触追跡APIを導入する予定と答えたのは、アラバマ州・ノースダコタ州・サウスカロライナ州の3つのみ。それどころか、スマートフォンの接触追跡アプリの使用に関心を示していた州の多くが、アプリの運用を撤回しており、2020年6月時点で実際にGoogleとAppleの接触追跡APIを導入した州は1つもないとのこと。

NBCニュースはGoogleとAppleに「どの州が接触追跡APIを採用しているのか」を尋ねましたが、コメントを得られなかったそうです。


GoogleとAppleの接触追跡APIの導入がアメリカで遅々として進まない理由は、「新しいシステム開発には多くの人材投資が必要だから」だとNBCニュースは指摘。世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム事務局長は「デジタルツールは接触追跡に必要な人的能力に取って代わるものではありません」と述べています。

Live from WHO Headquarters - COVID-19 daily press briefing 08 June 2020 - YouTube


また、NBCニュースは「大統領府もアメリカ疾病予防管理センター(CDC)も、GoogleとAppleの接触追跡APIを承認していないことも、システム開発が進まない理由の1つ」と述べています。アメリカでは接触追跡アプリについてのまとまった国家プロジェクトがないため、各州がシステム開発に必要な資金と人材を独自に用意する必要があり、州にとって大きな負担となります。

新型コロナウイルスの感染拡大アプリを開発するプロジェクト・Corona Traceの創設者であるタルン・ニッマガッダ氏は「CDCとGoogleとAppleが協力してアプリを開発するべきでしたが、結局州ごとに対応することになっています」と語り、「州政府や自治体に開発したアプリをアピールすることを諦めて、今は商業向けのアプリ開発を検討しています」と述べました。


Microsoftとの新型コロナウイルスの接触追跡アプリの共同開発に携わる、ワシントン大学法学部のライアン・カロ准教授は、「慈善寄付からソーシャルメディアでの誤報への取り組みまで、テクノロジー業界はさまざまな方法でパンデミックと戦ってきました」と述べ、接触追跡アプリが成功しなかったとしても、テクノロジー業界が試みたことに意味があると主張しています。

また、カロ准教授は「トランプ大統領がやってきて『お前は何をしたんだ?』と尋ねてきても『私たちは接触追跡APIを提供しました。州がAPIを使用していないとしても、私たちにそれをどうすることもできません』と答えるでしょう。テクノロジー業界は一種の義務を果たしたのです」と述べました。

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in モバイル,   ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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