新型コロナウイルス感染者を追跡するために世界ではどのようなテクノロジーが用いられているのか?
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)はヒトからヒトに感染が拡大するため、流行の広がりを調べるためには、「感染者の行動」を調査することが重要です。そんな感染者の行動調査のためにどのようなテクノロジーが用いられているのか、IT系ニュースサイトのVentureBeatが解説しています。
The technologies the world is using to track coronavirus -- and people | VentureBeat
https://venturebeat.com/2020/05/18/the-technologies-the-world-is-using-to-track-coronavirus-and-people/
◆スマートフォン
感染者と接触した人物をしらみつぶしに調べる「接触追跡法」は、19世紀後半から使われてきた感染者の特定方法です。しかし近年は、スマートフォンによって接触追跡法が効率化されています。一例では、AppleとGoogleが協力して「COVID-19接触通知API」を開発しています。
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スマートフォンで感染者を追跡する方法には、接触者のデータをサーバー上で管理する「集中型アプローチ」と、サーバー上で情報を管理しない「分散型アプローチ」があります。このうち集中型アプローチについて、VentureBeatは「個人情報がサーバー上に集められてしまうため、情報流出などにつながる危険がある」とプライバシー上の問題を指摘しました。実際に、アメリカ・ノースダコタ州公式のCOVID-19追跡アプリは位置情報などを第三者に送信していると指摘されています。
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なお、AppleとGoogleが共同開発したAPIは、分散型アプローチを採用しています。
◆ウェアラブルデバイスとアプリケーション
アメリカでは、リストバンドや足かせ型のモニターを使用して、COVID-19感染者の行動を追跡するという措置を執っている自治体も現れています。
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by Jérémy-Günther-Heinz Jähnick
このほかにも、体温や血圧などのバイタルサインを測定する機能のあるリストバンド型デバイスが、COVID-19を完治させた人の健康状態の監視に用いられているとのこと。
また、COVID-19に関するアプリケーションも多数開発されています。カリフォルニア州リバーサイド郡のCOVID-19関連公式アプリ「RivCoMobile」は、大規模な集会を行っている人や重要なビジネスの場面でフェイスマスクを着用していない人を「通報」できる機能が搭載されています。
◆サーモグラフィー
COVID-19に感染すると発熱する可能性があるため、空港や軍事基地などでは、物体の熱量を遠隔から測定して視覚化する「サーモグラフィー」が感染者の特定に役立てられています。VentureBeatによると、サーモグラフィーは顔認証技術とは異なり、匿名性が高い点が利点とのこと。
by Timothy Vogel
ただし、発熱やせきなどの症状が現れない無症状病原体保有者が多数存在したり、発熱するまでの潜伏期間中も感染性を示すなどの理由から、COVID-19感染者の特定に関するサーモグラフィーの有用性を疑問視する声もあがっています。サーマルカメラメーカーのFLIRは、「当社の製品は、新型コロナウイルスの診断には使用できません」と明言しています。
VentureBeatは「サーモグラフィーには精度が低いものもある上に、病気によって熱があるのか、単に運動して体が温まっているのかの区別もできません」と述べています。
◆顔認証技術
中国やロシアは、顔認証技術を用いた検疫を実施しています。顔認証技術を用いれば、街中の監視カメラなどを使って「特定の人物がどのように移動したか」を追跡し続けることが可能です。
一方で、顔認証技術はプライバシー上の問題を抱えています。VentureBeatは「顔認証技術は最もディストピア的なテクノロジーです」と述べて、顔認証システムに対する懸念を表明。COVID-19のパンデミックという緊急事態が、顔認証技術を用いた監視システムを配備する「言い訳」として使われる可能性を指摘しています。
◆ドローンなどの無人機
ヒトとヒトの接触を減らすため、無人で駆動するドローンや自動運転車が医療機関などで使われ始めています。
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しかし、無人機の運用に関する法整備は完全なものではありません。電子フロンティア財団はCOVID-19関連の監視・追跡を目的として無人機を活用するために、使用法に関するガイドラインを制定すべきだと主張しており、その危険性について警告しています。
VentureBeatは、無人機はヒトとヒトの接触を減らし、COVID-19の流行を抑える可能性がある技術ですが、警察国家の一部として運用される危険性のある技術でもあります」とコメントしています。
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