中国で新型コロナウイルス接触追跡アプリをそのまま市民の健康追跡アプリにする計画が進行中
Appleが公開したiOS 13.5では、ついにAppleとGoogleが共同開発した「新型コロナウイルス接触追跡システム」用のAPIが導入されました。AppleとGoogleの開発したシステムだけでなく、世界中の公衆衛生機関が独自のアプリをリリースすることで、新型コロナウイルス感染症の感染者が「誰と濃厚接触したか」を追跡しています。中国では、この新型コロナウイルス追跡アプリを市民の健康状態を追跡するアプリに進化させる計画が進行中です。
Chinese city plans to turn coronavirus app into permanent health tracker | World news | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2020/may/26/chinese-city-plans-to-turn-coronavirus-app-into-permanent-health-tracker
Chinese city Hangzhou proposes permanent health tracking app with score
https://www.cnbc.com/2020/05/26/chinese-city-hangzhou-proposes-permanent-health-tracking-app-with-score.html
China’s Plan to Make Permanent Health Tracking on Smartphones Stirs Concern - WSJ
https://www.wsj.com/articles/chinas-plan-to-make-permanent-health-tracking-on-smartphones-stirs-concern-11590422497
中国では新型コロナウイルス対策に、個人の感染状況をチェック可能なQRコードを表示することができる、新型コロナウイルス対策の健康追跡アプリが導入されています。中国ではこのアプリを用いて、個人が移動できる範囲を決定しています。
このアプリが最初にリリースされたのは、中国の大手IT企業であるアリババの本拠地である浙江省杭州市でした。その杭州市の保健委員会は、新型コロナウイルスの接触追跡アプリを拡張し、より広く人々の健康状態を監視できるようにする計画を発表しました。
杭州市保健委員会のSun Yongrong局長は、2020年5月22日(金)に行われた会議の中で、新型コロナウイルス接触追跡アプリは既に目標を達成しているとして、今後はさらに多くの健康指標と統合することで、より万能な健康追跡アプリに進化させることを提案しました。
進化した健康追跡アプリでは個人のステータスが色分けされ、医療記録・身体検査の結果・活動レベル・喫煙の有無・その他のライフスタイルに基づいて100点満点で個々の健康状態が評価されます。アプリではユーザーの相対的な健康状態を示す数字とカラーバー、その日に喫煙したタバコの本数、歩数、睡眠時間などが表示されるそうです。また、例えば白ワインを1杯飲むとスコアが1.5ポイント低下し、7時間睡眠すると1ポイント増加するといったように、健康状態が数値化されるとのこと。
現地メディアの報道によると、杭州市保健委員会は2020年6月までにアプリのアップデートを実施予定。杭州市保健委員会は「アプリが人々の健康と免疫力を強化するためのファイアウォールになる」と述べています。
ただし、杭州市保健委員会による新型コロナウイルス接触追跡アプリは、プライバシーの懸念および動作の不透明さから問題視されていたという過去があります。なお、The Guardianは「最終的にアプリは『新型コロナウイルス対策としての必要性』から市民に受け入れられることとなった」と記しています。
杭州市保健委員会の提案する健康追跡アプリに対して、中国で人気のSNS・Weibo上には「パンデミック期以外では、アプリが引き起こすプライバシーの問題が深刻です」「私の喫煙、飲酒、睡眠習慣といった情報があなたと何の関係があるのでしょう?」「私たちにプライバシーは一切残っていません」といったコメントが寄せられています。
他にも、Weiboユーザーの中にはアプリが恒久的なものとなった場合、「保険料の設定」や「求職者のスクリーニング」にアプリが使用される可能性を危惧する声もあります。そのため、エンジニアのLawrence Li氏は「新しいアプリは市民の権利を保護するために、健康追跡機能はユーザーの許可があったのちに機能するのが理想的です」と述べました。
さらに、「新型コロナウイルス感染症に関する接触追跡システムの場合、人々は喜んでシステムに参加したいと思うでしょう。しかし、当局が計画中のアプリのような広範な健康関連の情報を収集するアプリを『新しい常識』にしたいと考える場合、それはまったく別の話になります」ともLi氏は述べ、新しいアプリが市民に広く受け入れられるかはわからないとしています。
・関連記事
AppleとGoogleが「新型コロナウイルス追跡システム」をiOSとAndroidに組み込む - GIGAZINE
AppleとGoogleが共同発表した「新型コロナウイルス追跡システム」に対して浮かぶセキュリティおよびプライバシーに関する疑問への回答 - GIGAZINE
AppleとGoogleの「新型コロナウイルス追跡システム」を実装したアプリでは位置情報の追跡を禁止 - GIGAZINE
「iOS 13.5」が公開、AppleとGoogleの「新型コロナウイルス感染症接触通知API」が実装される - GIGAZINE
AppleとGoogleによる「新型コロナウイルス追跡システム」がOSにどんな風に組み込まれるかわかるスクリーンショットが公開 - GIGAZINE
AppleとGoogleが技術提供した新型コロナウイルス感染追跡アプリ「COVIDSafe」が公開、どのようなシステムなのか? - GIGAZINE
・関連コンテンツ