SpaceXが人工衛星でインターネット環境を構築する「Starlink」プロジェクト用衛星を新たに60基打ち上げることに成功
イーロン・マスク氏が共同設立者およびCEOを務める宇宙開発企業のSpaceXが、人工衛星を用いて地球の隅々にまでインターネット接続環境を届ける「Starlink」プロジェクト用の衛星60基を新たに打ち上げています。プロジェクトでは地球周回軌道上に約1万2000基もの衛星を配置する予定で、今回打ち上げた60基の衛星は約420基目の衛星になるとのことです。
SpaceX successfully launches latest batch of 60 internet-beaming satellites to orbit - The Verge
https://www.theverge.com/2020/4/22/21229845/spacex-starlink-satellites-broadband-falcon-9-rocket-launch-watch-live-stream
SpaceXのStarlinkプロジェクトは、既存のインターネット環境にアクセスできない僻地で暮らす人々に対しても高速なインターネットを提供するために提案されたもの。当初は4000基以上の小型人工衛星を地球の周回軌道上に打ち上げることで、巨大なインターネット接続環境を構築することが計画されていました。そんなStarlinkプロジェクトがアメリカ連邦通信委員会(FCC)から承認を受けたのは、2018年3月のこと。
4000基以上の人工衛星で世界中にネットを提供するSpaceXの「Starlink」計画に当局からゴーサインが出る - GIGAZINE
By Official SpaceX Photos
その後、現地時間の2019年5月23日にStarlinkプロジェクトで用いられる人工衛星60基が初めて地球周回軌道上に打ち上げられました。打ち上げに使用されたのはSpaceX製の再利用可能ロケットである「Falcon 9」で、60基の衛星の詳細や様子については以下の記事にまとめられています。
SpaceXが人工衛星を用いてインターネット環境を構築するStarlinkプロジェクト用の最初の衛星60基を打ち上げ - GIGAZINE
そして2020年4月22日(水)の午後、SpaceXがStarlink用衛星を新たに60基打ち上げることに成功しました。これはStarlinkプロジェクトとしては7度目の衛星打ち上げであり、プロジェクトの中で打ち上げが予定されている約1万2000基の衛星のうち、420基以上が地球周回軌道上に投入されたこととなります。
今回の打ち上げでも再利用可能ロケットのFalcon 9が使用されており、Falcon 9は海上の回収スペースに無事着地することに成功しています。今回の打ち上げの様子は以下のムービーでチェック可能です。
Starlink Mission - YouTube
SpaceXは「2019年は最大6度の打ち上げを予定しており、2020年にはそのペースを加速させ、720基ほどの衛星を周回軌道上に乗せることで、地球上で最も人口の多い地域を継続的に網羅できるようにする予定です」とTwitter上で述べており、サービス開始までに打ち上げる必要があるのは残り300基ほどという計算になります。なお、記事作成時点ではまずはカナダとアメリカ北部の一部をカバーしたインターネット接続サービスがスタートする予定で、同サービスが全世界をカバーするのは2021年頃になる見込みです。
Falcon 9 launches 60 Starlink satellites to orbit – targeting up to 6 Starlink launches this year and will accelerate our cadence next year to put ~720 satellites in orbit for continuous coverage of most populated areas on Earth pic.twitter.com/HF8bCI4JQD
— SpaceX (@SpaceX)
マスクCEOはStarlinkプロジェクトに「初期運用能力」を提供するには約400基の衛星が必要であると語っており、これを「重要な運用能力」にまで引き上げるのに約800基の衛星が必要であるとしています。ただし、Starlinkが「重要な運用能力」を得るためには課題も多数存在しています。
これまで7度の衛星の打ち上げでは、Falcon 9のメインエンジンが停止するなどのトラブルも起きています。メインエンジンが停止したFalcon 9は、海上に配置されていた回収用のドローン船への着地に失敗し、船が大破したそうです。ただし、海外メディアのThe Vergeは、「Falcon 9の着陸はStarlinkプロジェクトの『衛星を周回軌道上に載せる』という根幹部分とは関係ありませんが、SpaceXが着陸に失敗するのはまれです。ただし、SpaceXがFalcon 9の着陸に失敗したのは今年で2度目です」と指摘しています。
SpaceXはStarlink衛星の打ち上げで複数のパーツを再利用しています。SpaceXが今回打ち上げたFalcon 9のメインエンジンは4度目の利用で、衛星を囲むために使用されるノーズコーンという部品も再利用されたものだそうです。
Falcon 9 launches 60 Starlink satellites to orbit, completing this booster's fourth flight pic.twitter.com/JQhkI9bcfX
— SpaceX (@SpaceX)
なお、Starlinkプロジェクトが成功すれば世界をどのように変えうるのかは、以下の記事に書かれているので気になる人はチェックしてみてください。
世界の隅々まで高速なインターネット環境を提供する「Starlink計画」はどのように世界を変えるのか? - GIGAZINE
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