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SpaceXの巨大ロケット「Falcon Heavy」を起き上がらせて発射台にセットする様子が公開中、2018年1月中に試験打ち上げを実施予定


人類の火星探索での活用を視野に入れて開発が進められているSpaceXの巨大ロケット「Falcon Heavy」が、2018年1月中の試験打ち上げの実施に向けてアメリカ・フロリダ州にあるケネディ宇宙センターの発射台にセットされました。

SpaceXを率いるイーロン・マスクCEOは、Falcon Heavyロケットが発射台にセットされる様子を収めたタイムラプス映像をTwitterInstagramのアカウントで公開。おそらくはまだ燃料が注入されていないとはいえ、全高70メートルという巨大な機体が台に支えられながらゆっくりと起き上がる様子は圧巻の一言です。

Falcon Heavy goes vertical pic.twitter.com/uG1k0WISv1

— Elon Musk (@elonmusk)


完全に寝かせた状態で運ばれ、発射台のすぐ横で立ち上がるFalcon Heavyロケット。よくみればロケット本体の下にトラス状のフレームが取り付けられ、下から支えられながら起き上がっていることがわかります。


Falcon HeavyロケットがセットされたLC-39 A発射台は、ケネディ宇宙センター第39発射施設に含まれるもので、「アポロ計画」で数々の宇宙飛行士を月に送り込み、その後の「スペースシャトル計画」の際にも使われていた発射台です。現在は、隣接するLC-40(第40複合発射施設)とともにSpaceXがNASAから施設をリースしてFalcon HeavyロケットおよびFalcon 9ロケットの打ち上げに用いられています。


ちなみに、今回とは別のLC-40発射台は2016年9月のFalcon 9ロケット大爆発の際にダメージを負っていましたが、修復作業が完了して2017年12月15日に再びFalcon 9ロケットの打ち上げが実施されました。

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Falcon Heavyロケットは、Falcon 9ロケットの左右に2基のブースターロケットを装着することで、大幅に打ち上げ能力を高めた巨大ロケット。宇宙空間に運ぶことができるペイロード(貨物搭載量)は目指すレベルによって異なりますが、地球を周回する低軌道であれば5万4400kg、静止衛星などに用いられる静止トランスファ軌道だと2万2200kg、そして火星軌道でも1万3600kgにも上る貨物や人員を運んで軌道に投入することが可能です。


ちなみに、人類が作った史上最大のロケット・「サターンV」ロケットの場合、低軌道に11万8000kgもの貨物を打ち上げることが可能。Falcon Heavyロケットはその約半分の能力ですが、それでも人類を火星へと送り込むことが可能です。サターンVロケットなき今、Falcon Heavyロケットは「世界最大のロケット」とも呼ばれます。

Falcon Heavyロケットは打ち上げの瞬間に500万ポンド(約227トン)の推力を発生させる設計で、ボーイング747型機18機分と同じパワーに相当します。これは、現在稼働しているあらゆるロケットの2倍となる性能で、最もパワフルなロケットと呼ばれるゆえん。

With more than 5 million pounds of thrust at liftoff—equal to approximately eighteen 747 aircraft at full power—Falcon Heavy will be the most powerful operational rocket in the world by a factor of two. https://t.co/NneqPRPr46 pic.twitter.com/oswCUreG6i

— SpaceX (@SpaceX)


ロケットの先端には、巨大なカーゴスペースとなる「フェアリング」が装着されています。「FH」(Falcon Heavy)の文字が描かれたフェアリングの内部には観光バスがそのままスッポリ収まるほどのスペースが設けられています。


マスク氏はFalcon Heavyロケットの最初の貨物として、自身が所有するEV「テスラ・ロードスター」を選んでいます。Falcon Heavyロケットに搭載されたテスラ・ロードスターは、映画「2001年宇宙の旅」の曲を再生しながら打ち上げられ、火星周回軌道に投入されることになる模様。

Payload will be my midnight cherry Tesla Roadster playing Space Oddity. Destination is Mars orbit. Will be in deep space for a billion years or so if it doesn’t blow up on ascent.

— Elon Musk (@elonmusk)


そのイメージが、SpaceXのSNSアカウントで公開されています。

A Red Car for the Red Planet https://t.co/PakS3rvp5C pic.twitter.com/440bvUHJeO

— SpaceX (@SpaceX)


マスク氏は2017年12月に、準備施設内で組み立てられている状態のFalcon Heavyロケットの様子を公開。その写真では、ロケット本体と2本のブースターに9基ずつ搭載される9×3=27基のマーリン1Dエンジンの様子が良くわかる状態で収められています。

Falcon Heavy at the Cape pic.twitter.com/hizfDVsU7X

— Elon Musk (@elonmusk)


今後はまず、発射台にセットした状態で燃料を注入し、実際の打ち上げは行わない静止状態でのエンジンの燃焼試験を実施。その後、2018年1月中に試験打ち上げが行われることになりますが、マスク氏が「あらかじめ想定していたどんな内容よりも困難だった」と語るほどFalcon Heavyロケットの開発は難題続きだったこともあり、はたして問題なく成功するかどうかに注目が集まるところ。とてつもない量の燃料を燃焼させ、とてつもなく巨大なロケットを猛烈なスピードにまで加速させて宇宙空間へと送り込む巨大ロケットの開発が容易でないことに疑問の余地はありませんが、仮に最初の試験が成功することになると、人類の火星探査の現実度がグッと高くなることになります。その意味においても、1月中に実施される予定の試験打ち上げは注目です。


ちなみにFalcon Heavyロケットの2本のブースターは基本的にFalcon 9ロケットの第1段ロケットを流用しています。そのため、2本のブースターと本体の第1段と第2段の各ロケットは全て、自ら所定の場所へと帰還することができるように設計されています。以下のムービーではそんな様子を描いたイメージ映像を見ることができます。

Falcon Heavy | Flight Animation - YouTube


さらに、Falcon Heavyロケットの後には巨大なロケット「BFR」も計画されています。火星探査の本命とも見られるBFRの計画からも目が離せません。

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in ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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