ハードウェア

SpaceXが人工衛星を用いてインターネット環境を構築するStarlinkプロジェクト用の最初の衛星60基を打ち上げ


電気自動車メーカーのテスラと同じくイーロン・マスク氏により設立された民間宇宙開発企業のSpaceXが進める、4000基以上の小型人工衛星を地球の周回軌道に打ち上げ、巨大なブロードバンド通信網を作りだそうというのが「Starlink」プロジェクトです。このプロジェクトのカギとなる人工衛星の「最初の60基」が打ち上げに成功しました。

SpaceX’s first 60 Starlink broadband satellites deployed in orbit ? Spaceflight Now
https://spaceflightnow.com/2019/05/24/spacexs-first-60-starlink-broadband-satellites-deployed-in-orbit/

地球の周回軌道上にある人工衛星を用いてブロードバンド通信網を構築すれば、既存のインターネット網では網羅できないような僻地で暮らす人々にも平等に高速なインターネットアクセスを提供可能となります。SpaceXの「Starlink」プロジェクトは、そんな宇宙空間を用いたブロードバンド通信網の構築を目指しており、2018年3月にはアメリカ連邦通信委員会の承認を受けたことが明らかになっていました。

4000基以上の人工衛星で世界中にネットを提供するSpaceXの「Starlink」計画に当局からゴーサインが出る - GIGAZINE


そして現地時間で2019年5月23日、アメリカ・フロリダ州ケープ・カナベラルにある宇宙ロケット打ち上げ基地から、Starlinkプロジェクトで用いられる人工衛星60基が地球周回軌道へと打ち上げられました。なお、打ち上げに使用されたのはSpaceX製のロケット「Falcon 9」です。

Starlink用の衛星を積んだFalcon 9が打ち上げられた瞬間

by Official SpaceX Photos

Falcon 9の軌道を長時間露光で撮影した写真

by Official SpaceX Photos

Falcon 9に積んで打ち上げられたStarlink用衛星はフラットパネルデザインとなっており、1度に大量のパネルを同時に運ぶことができるようになっています。1基当たりの重量は約227kgで、4つのハイスループットフェーズドアレイアンテナや、太陽光発電用のソーラーアレイを搭載。また、SpaceXによると、Starlink用衛星は「クリプトン燃料イオンスラスタ(宇宙空間での位置調整に使用される推進システム)を搭載した初の衛星」だそうです。加えて、スペースデブリとの衝突を自動で避ける機能を有しているとのこと。

by Official SpaceX Photos

マスク氏によると、「(打ち上げられたStarlink用衛星は)テラビット級の接続性を持ち、最初の7回(の打ち上げ)で合計420基の初期型衛星が打ち上げられる」ことになるとのこと。また、Starlink用衛星はKuバンドKaバンドVバンドという3つの周波数帯をサポートしています。マスク氏によると1年に1000~2000基のStarlink用衛星の打ち上げを行っていく予定で、2020年のサービススタートを目指しているとのこと。

なお、Starlink用の人工衛星の数が少ないうちはインターネットのカバー範囲は狭くなりますが、「24回の打ち上げですべてを網羅する」としており、地球周回軌道に1440基程度が打ち上げられれば、地球全土をカバーするブロードバンド通信網が完成する模様。ただし、あくまでも高速なインターネット通信サービスを提供するには、Starlink用衛星の数をより増やしていく必要があります。

SpaceXは「2019年は最大6度の打ち上げを予定しており、2020年にはそのペースを加速させ、720基ほどの衛星を周回軌道上に乗せることで、地球上で最も人口の多い地域を継続的に網羅できるようにする予定です」とTwitter上で述べています。


マスク氏は「Starlinkプロジェクトは私がこれまで見てきた中でも最も困難なエンジニアリングプロジェクトの1つであり、非常に上手く実行されました。Starlinkには多くの新しい技術が詰め込まれているので、衛星のいくつかが機能しない可能性、さらにはごくごく小さな可能性としてすべての衛星が機能しないということも考えられます。そんなことは全く望んではいないが、Starlinkの衛星は素晴らしい設計のもと開発されたもので、我々は成功の可能性を最大にするために全力を尽くしました」と語っています。


Falcon 9が60基のStarlink用衛星を運ぶ様子は地上からも確認されており、光る点が列になって空を流れていく様子がムービーで撮影されています。

SpaceX Starlink objects train 24 May 2019 on Vimeo



打ち上げ後、所定の位置で衛星を展開することに成功したことを伝えるツイート。


その後、マスク氏は「間もなく60基のStarlink用衛星がオンラインになり、発電用のソーラーアレイを展開する」とツイートしています。


なお、SpaceXはStarlink用衛星の打ち上げに成功したのち、Starlink用の新しいウェブサイトをオープンしています。この公式サイトによると、SpaceXは2019年内に6度の打ち上げを行った後、アメリカ北部とカナダの緯度でブロードバンドサービスを開始する予定とのことです。

Starlink
https://www.starlink.com/

この記事のタイトルとURLをコピーする

・関連記事
4000基以上の人工衛星で世界中にネットを提供するSpaceXの「Starlink」計画に当局からゴーサインが出る - GIGAZINE

SpaceXが地球上どこでも利用できるギガビット級インターネット網構築のため4000基の人工衛星打ち上げを計画 - GIGAZINE

民間の宇宙開発ベンチャー「スペースX」は数百の通信衛星を使って火星でも通信可能なインターネット環境の構築を計画中 - GIGAZINE

Amazonが3000以上の人工衛星で全地球をインターネットで網羅する「Project Kuiper」を始動 - GIGAZINE

Googleが180個の人工衛星を使って全世界のどこでもネットを可能に - GIGAZINE

in ハードウェア,   動画, Posted by logu_ii

You can read the machine translated English article here.