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フィリップスが「受注済みの人工呼吸器を納品せずに新たに1万台を4倍の価格で受注した」という報告


オランダのヘルスケア製品・医療関連機器メーカーであるフィリップスが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の緩和治療に必要な「人工呼吸器」の製造・納品についてアメリカ政府に対して不義理を働いたと報じられています。公益を目的とした非営利の報道機関プロパブリカが、「フィリップスはアメリカ政府と結んだ人工呼吸器の契約を履行しないばかりか、4倍の価格で新たに契約を結ぼうとしている」と報告しました。

A Company Promised Cheap Ventilators to the Government,… — ProPublica
https://www.propublica.org/article/a-company-promised-cheap-ventilators-to-the-government-never-delivered-and-is-now-charging-quadruple-the-price-for-the-new-ones

Philips, US government collaborate in ventilator production - News | Philips
https://www.philips.com/a-w/about/news/archive/standard/news/press/2020/20200408-philips-and-the-us-government-collaborate-in-ventilator-production-ramp-up-to-combat-covid-19-pandemic.html

2020年4月8日、アメリカ合衆国保健福祉省(HHS)は、フィリップスに6億6670万ドル(約720億円)を投じてアメリカ国内の人工呼吸器の生産能力を拡大すると発表しました。納品される人工呼吸器の価格は1台1万5039ドル(約160万円)で、フィリップスは2020年5月までに2500台を納品し、年内に計4万3000台を納品する予定です。

しかし、プロパブリカはこの契約について、「HHSは2014年にすでにフィリップスに安価かつ耐久性のある人工呼吸器の開発を発注していた」ことを指摘。HHSは省内のバイオテロ対策部門であるBARDAの提言を受けて、「国内の人工呼吸器の備蓄を増やす」という方針を2014年に固めており、フィリップスと契約を交わしていました。2014年に結ばれた契約において、HHSがフィリップスに投じた資金は1380万ドル(約15億円)。さらに、この契約には「開発される人工呼吸器は1台あたり3280ドル(約35万円)で1万台納品する」という条項が存在したとのこと。


プロパブリカによると、この契約に基づいてフィリップスは人工呼吸器「Trilogy Evo Universal」を開発。2019年7月には、アメリカ国内の医療機器などを管轄するアメリカ食品医薬品局(FDA)が「Trilogy Evo Universal」を承認し、9月には生産準備が整っていました。

しかし、この契約には納期が存在していなかったため、フィリップスは新型コロナウイルスがアメリカに到達して猛威を奮っても「Trilogy Evo Universal」を納品しなかったとプロパブリカは報告。フィリップスは安価な「Trilogy Evo Universal」ではなく、より高価な上位モデルを製造し、アメリカ国内や海外に販売しているそうです。同社の広報担当者であるスティーブ・クリンク氏は、「『「Trilogy Evo Universal」』は少量ずつ製造しており、大量生産される予定のないモデルであるため、生産能力を増やしたくありません」「アメリカ政府が投じた資金は、開発費用を全額カバーしたわけではありません」とコメントしました。


2020年4月8日に発表された新たな契約では、アメリカ政府から「すぐに納品可能なもの」という要望があったため、納品されるのは一般販売モデルの「Trilogy EV300」。アメリカ政府の指示によって開発された「Trilogy Evo Universal」ではありません。この契約に関する公式発表の中で、フィリップスは「2020年1月から3月にかけて、フィリップスはすでに人工呼吸器数千個をアメリカ国内の病院に納品しています」「生産量を増加した結果、フィリップスはニューヨーク市内の病院に1台ずつ人工呼吸器を追加で配備することができました。この人工呼吸器は、COVID-19患者の緩和治療に役立てられています」と記しています。

プロパブリカは、人工呼吸器を2020年内に納品するという新たな契約は、COVID-19の流行が続く現状では「納品が遅すぎる」と指摘。ミネアポリス市の救急医療専門医のジョン・ヒック氏の「新たに人工呼吸器が納品されるというのはいいニュースですが、同じだけの資金を投じるならば価格が4倍のモデルを買うよりも、安価モデルを4倍の個数買うべきです」という意見を報じています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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