サイエンス

新型コロナのワクチンに関する臨床試験データが隠されているとして医学誌が透明性を要求


2009年の豚インフルエンザ流行時に各国政府が数十億ドル(数千億円)を投じて備蓄した抗インフルエンザ薬について、備蓄の根拠となった試験の多くは製薬会社の後援を受けたもので、信頼性の高い第三者検証機関の研究者は生データにアクセスできませんでした。このことを受けてデータ透明性についての議論が巻き起こり、新たなポリシーが作られたはずなのですが、再び新型コロナウイルスのワクチンで同じ事が起きていると、イギリスの医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(BMJ)が指摘しています。

Covid-19 vaccines and treatments: we must have raw data, now | The BMJ
https://doi.org/10.1136/bmj.o102


BMJの指摘によると、ファイザーのワクチンの臨床試験は、ファイザーが資金を提供しており、設計・実施・分析・論文執筆に至るまでファイザーの従業員が行ったとのこと。臨床試験に関するデータはファイザーとその受託研究機関がすべて保有しており、データの要求は2023年5月まで受け付けないことになっています。

データ開示に消極的なのは他の製薬会社にも共通しており、モデルナは「2022年に最終的な結果を公開する予定」で「試験完了後、要求に応じてレビュー対象となる」とのこと。第1相試験の完了予定日は2022年10月27日です。

また、アストラゼネカは2021年12月31日に第3相試験の結果公開要求に応じる見込みですが、一方で、要求があってからのタイムラインはそれぞれ異なり、データ取得には最長で1年かかると説明しています。


BMJによると、新型コロナウイルス感染症の治療薬に関する基礎データも入手が困難で、たとえばリジェネロンのモノクローナル抗体療法治療薬「REGEN-COV」の第3相試験の報告書には「参加者データは他者には提供しない」と明記されているとのこと。ギリアド・サイエンシズが開発したレムデシビルはアメリカ国立衛生研究所が資金提供したことから、データ共有用のポータルが設けられていますが、公開されているデータセットは限定的です。

研究者でもデータへのアクセスが限られる中、規制当局はレビューの一環としてはるかに詳細なデータを受け取っていますが、たとえば多くのデータを持っているはずのアメリカ食品医薬品局(FDA)も積極的な情報公開は行っていません。当初、情報公開を求められたFDAは「月500ページの公開」を提案しましたが、これでは全公開までに数十年かかってしまうことから法廷闘争となり、FDAの主張は却下され「月5万5000ページの公開」が命じられています。情報は以下のサイトで公開されています。

Public Health and Medical Professionals for Transparency - Public Health and Medical Professionals for Transparency
https://phmpt.org/


BMJは、COVID-19のワクチンを製造している製薬会社のうち、少なくとも3社は過去に刑事上・民事上の和解で数十億ドル(数千億円)を支払っており、他の企業は事前の実績がまったくないにも関わらず、このパンデミックが多くの「製薬長者」を生み出し、ワクチンを製造している会社に数百億ドル(数兆円)をもたらしていると指摘。規制当局がやるべきことは、製薬会社と歩調を合わせてさらに会社を富ませることではなく人々の健康を守ることであり、そのためにも、研究に必要なデータの透明性を求めると主張しています。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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