サイエンス

ウイルスに強い体を作るためには「ほどほどの運動」が大事、運動しすぎはむしろ逆効果


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に猛威を振るっていますが、COVID-19治療薬が開発されるめどは立っておらず、現段階でCOVID-19を治療できるのは自分自身の肉体のみといえます。アメリカのウェイン州立大学で運動科学・スポーツ科学について研究するタマラ・ヒューバトラー氏とマリアン・フォールマン氏が、「運動量は多すぎても少なすぎても良くない」という一連の研究結果について解説しています。

Mucosal IgA and URTI in American College Football Players: A... : Medicine & Science in Sports & Exercise
https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2005/03000/Mucosal_IgA_and_URTI_in_American_College_Football.6.aspx

Thieme E-Journals - Sports Medicine International Open / Abstract
https://www.thieme-connect.de/products/ejournals/abstract/10.1055/s-0043-119090

Should I exercise during the coronavirus pandemic? Experts explain the just right exercise curve
https://theconversation.com/should-i-exercise-during-the-coronavirus-pandemic-experts-explain-the-just-right-exercise-curve-133861

ヒューバトラー氏とフォールマン氏の主張は、「運動量は多すぎても少なすぎても良くない」というもので、ヒューバトラー氏らはこの結論を示す研究結果を複数挙げています。


香港大学の研究チームは、1998年に香港でH3N2亜型インフルエンザが流行した際の死者2万4656人を分析し、インフルエンザに関連した自然死・心血管疾患・呼吸器疾患のリスクを運動習慣から分類するという研究を発表しています。この研究によると、「運動をめったにしない(月1回未満)」というグループは基準値よりも死亡率が5.8%~8.5%高く、「低~中頻度で運動する(月に1回~週3回)」というグループは基準値よりも死亡率が4.2%~6.4%低く、「高頻度で運動する(週4回以上)」というグループは基準値と同等の死亡率でした。このことから研究チームは、「『運動をめったにしない』状態に比べると、『低~中頻度で運動する』ことはインフルエンザの死亡率を引き下げます」と結論付けています。

同様の結果が、アリゾナ大学とバース大学の合同チームの研究でも示されました。この研究によると、感染性病原体に対する全身性反応と呼吸器の粘膜免疫応答を調べた結果、運動が体の免疫系に与える影響は、「運動量が多すぎても少なすぎても良くない」ことを示すJカーブ効果が見られたとのこと。

マウスを使った実験も同じ結果になりました。イリノイ州立大学の研究チームは、「インフルエンザに感染したマウスを病状が出るまで定期的に運動させる」という実験を行い、運動量とマウスの生存性について調査を行いました。調査の結果、1日20分~30分という中程度の運動を行ったマウスの死亡率は18%にとどまりましたが、運動をしなかったマウスの死亡率は57%、1日2.5時間の運動を課せられたマウスの死亡率は70%に達しました。


以上のように、複数の研究結果が「運動量は多すぎても少なすぎても良くなく、適度な運動を行うべき」という結果を指し示しています。ヒューバトラー氏らも運動量と免疫に関する研究を行うため、ウイルスなどの病原体を中和するために免疫システムが使用するタンパク質「分泌型免疫グロブリンA」に着目。大学のフットボールとクロスカントリーという運動量の激しい競技者を被験者として、体内の分泌型免疫グロブリンAレベルと体の症状についての調査を行いました。

フットボール選手とクロスカントリー選手に対する調査は別個に行われました。フットボール選手に関する調査の結果、体内の分泌型免疫グロブリンAレベルが最も低下したときに、被験者は急性上気道炎(かぜ症候群)の症状を最も顕著に示すことが判明。いずれの調査でも過度に運動したときには分泌型免疫グロブリンAレベルが低下することから、「免疫に関していえば、運動量を増やすことが必ずしも良いとは限らない」とヒューバトラー氏らは結論付けています。

そんなヒューバトラー氏らが導き出した、「パンデミック中の運動」に関するガイドラインは以下。

・強度は軽度から中程度(20分~45分程度)に限り、回数は週に3回まで。
・隔離期間中は筋力と体力の増強ではなく「維持」に努める
・チームスポーツを行うときは、感染を拡大させないために物理的な接触を避ける。
・使用後にはスポーツ用具を洗浄して消毒する。
・スポーツジムを活用する場合は、換気が十分で他人との社会的距離をとれるスポーツジムを選ぶ。
・チームメイトとはオフラインでの接触せず、ソーシャルメディアを使って交流する。
・よく食べて寝て、免疫力を高める。
・「過ぎたるは及ばざるがごとし」と楽観的な気分を維持する。


対照的に、「してはいけないこと」のリストが以下。

・消耗しすぎるほどの運動。一例では、マラソンのレース後には、病気のリスクが2.2%から13%に上昇するとのこと。
・インフルエンザのような症状が出ている場合に運動すること。
・週5回以上の運動
・混雑した閉鎖空間での運動
・飲み物や食器の共有


以上の「してはいけないこと」に加えて、ヒューバトラー氏らはウェイン州立大学の「水分を大量にとっても体内の毒素を洗い流せるわけではない」という研究を挙げ、「病気の際に水分の過剰摂取も控えてください」とコメントしています。

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in サイエンス, Posted by log1k_iy

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