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異文化の人と仕事で成功を収めるためには「文化的知性」が必要


通信網や交通手段の発達により、近年は自分とは違う文化を持つ人と仕事でやり取りする機会が増加しています。文化が違うと行き違いや思い違いが発生しやすいものですが、「グローバル化が進むビジネスの世界で文化の違いを乗り越えるために必要な能力」があるということで、オーストラリアのビクトリア大学で上級講師を務めるRevti Raman Sharma氏が「文化的知性」(Cultural intelligence)という能力について解説しています。

Cultural Intelligence and Institutional Success: The Mediating Role of Relationship Quality - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1075425317304428

What it takes to navigate cultural differences in a global business world
https://theconversation.com/what-it-takes-to-navigate-cultural-differences-in-a-global-business-world-119975


Sharma氏が指摘する文化的知性とは、「文化的に多様な状況で、物事を適切に把握し、論理的な推論を展開し、効果的に行動する能力」と定義されている概念とのこと。

文化的知性に優れた人は、自身が生まれ育った狭い文化的境界を飛び越えて、異文化がぶつかり合う場面における複雑な相互作用を読み解くことができるとSharma氏は説明しています。ビジネスパートナーが自分たちとは異なる文化の出身である場合、コミュニケーションや仕事の進め方についての合意に問題が生じるケースがあります。このように、慣れない環境での不安や不確実性を管理する必要がある場面で、文化的知性が役に立つそうです。


高度な文化的知性を持つマネージャーは、何事も一方的に決めつけるのではなく、好奇心旺盛で、曖昧さを許容し、偏見を持たずに受け入れる寛容さがあるとSharma氏は指摘。「自分たちの文化が他の文化にとってどのように受け止められているのか」という視点も、文化的に異なる人々との信頼関係を築く上で重要だとのこと。

スイス軍将校を対象に行われた2011年の研究では、多国籍の人々が入り交じる環境におけるリーダーシップの予測因子として、文化的知性が一般的な知能や感情的知性よりも有効であることが判明しました。また、この研究は同じ文化を持つ人々が集まる国内の環境で優れたリーダーシップを発揮する人でも、グローバルな環境では優れたパフォーマンスを発揮できない可能性を示しています。


Sharma氏はニュージーランドの取引先とビジネスを行う186人のインド人マネージャーを対象に、文化的知性に関してさらなる研究を行いました。この研究では、文化的知性における「認知」「メタ認知」「動機付け」「行動」という4つの項目における相互作用と、人間関係の質、所属する組織がどれほどの成功を収めたのかについて調査しました。「認知」「メタ認知」「動機付け」「行動」という項目は、Sharma氏の研究チームが立てた理論に基づく項目であり、これらの相互作用が文化的知性を形成していると考えられています。

文化的知性における「認知」の項目が優れている人は、外国の政治や文化、経済システムなどに関する幅広い知識を有しています。その一方で、なまじ多くの知識を持っているために、「広範な知識に基づいた、洗練されたステレオタイプ化」を行って、特定の文化に属する人を一まとめにしてしまう可能性があるとのこと。

この「認知」がもたらす負の効果を弱めるのが、文化的知性における「メタ認知」だとSharma氏は指摘。メタ認知のスキルを持っている人は自身のステレオタイプを積極的に見直し、異文化交流の中で勝手な文脈を判断基準に持ち込まないようにできます。メタ的な視点を持ち、他の人に対する文化的な好みを意識的に知ろうとすることで、文化的な前提に疑問を投げかけて自身の考えを微調整できるそうです。

また、「動機付け」は文化的に多様な環境の中で、高いパフォーマンスを発揮しようとする意欲の高さを示す項目です。「行動」は自分とは違う文化を持つ人に対し、適切な行動を取ろうとする積極性についての判断項目だとのこと。Sharma氏の研究チームは各被験者がこれら4つの項目についてどれほど優れているのかを調査し、人間関係の質や組織の成功と照らし合わせ、どの項目がグローバルな環境下で重要なのかを分析しました。


研究の結果、「認知」が最も管理職としての成功と関連性が高いことが判明し、これに「メタ認知」を組み合わせることで人間関係の質も向上することがわかりました。また、「動機付け」も人間関係の質および組織の成功にとって大きな正の効果をもたらしたそうですが、「行動」の項目が高いと組織の成功に対して大きな負の効果があったとのこと。「行動」が組織の成功にとって悪影響を与える点について、Sharma氏はさらなる研究が必要だと指摘しています。

Sharma氏は、「今回の研究は、『認知』および『メタ認知』が相互作用して、ビジネスパートナーとの質が高い関係を確保し、文化の違いを上手く管理できることを示しています。以前の研究で示された、グローバルな環境で文化的知性が発揮するポジティブな効果と、今回の調査結果を考慮して、マネージャーはトレーニングと実践を通して文化的知性を強化する必要があります」と述べ、多様な文化的経験を通じて他文化への共感、感情的な安定性、柔軟性を向上させる必要があると主張しました。

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in メモ, Posted by log1h_ik

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