メモ

文化的・社会的な違いが遺伝情報の1つとしてDNAに刻まれている可能性が判明

By Dave Fayram

ヒトをはじめとする全ての生き物は生物的な遺伝情報をつかさどるゲノムを体内に持っています。その情報は遺伝子の構造によって保持されていますが、実際にはその働きはさまざまな要素によって影響を受けており、それらを含めた遺伝情報の発現はエピジェネティクスという分野で研究が進められています。この分野で行われた研究からは、ゲノムの働きには人間の住んでいる社会や文化などの要素によって影響を受けているとしか思えない現象が存在していることが明らかになっています。

Cultural differences may leave their mark on DNA – Science Bulletin
http://sciencebulletin.org/archives/9060.html

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の科学者らによる研究チームは、DNAが持つ情報のうち、いわば情報の「注釈」に相当するDNAメチル化について詳細な研究を行いました。DNAメチル化はDNAの配列の一部にメチル基が付着する現象で、ゲノム配列そのものには変化を与えることなく、遺伝情報が細胞の構造と機能に現れる「遺伝子発現」をコントロールするなどの働きがあります。

研究チームは、さまざまなラテン系民族の子どものグループを対象に、DNAメチル化の状態を調査しました。その結果、メキシコ系とプエルトリコ系のグループの間で数百件の差異が確認されたのですが、その4分の3だけが祖先からの遺伝が原因として説明でき、残りは明確な原因がうまく見いだせなかったとのこと。研究チームではこの差異について、異なる経験や習慣、住んでいる環境における環境暴露などによる「生物学的スタンプ」が反映されたものである可能がある、と指摘しています。

By Victoria Pickering

この発見は、民族の異なる集団における社会的、文化的、および環境的な要因が遺伝的特長にどのような影響を与え、医療などが健康に与える状況(健康アウトカム)の差を生みだすかを理解するのに役立つ可能性があると論文には記されています。論文の共同執筆者で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の准教授であるNoah Zaitlen博士は「これらのデータは、社会的概念としての人種および民族性と、生物学的概念としての遺伝的な祖先との相互作用がこれまでに我々が理解していたよりも複雑なものであることを示唆しています。医学的に見て、これらの要素は価値のある情報を与えてくれます」と語っています。

研究者や医療にたずさわる人々は、さまざまな人種や民族によって病気に罹患する割合や医薬品に対する反応が異なることを経験しているといいます。また、標準的な臨床試験でも大きく異なる結果を示すこともあるとのこと。人種や民族間における健康の差異は、異なる食事を食べたり、汚染が多少ある地域で暮らしたり、さまざまな貧困層を経験したり、タバコを吸う割合の違いなどといった要素によって、影響を受けている可能性があると指摘されています。Zaitlen博士は「私たちの研究の多くは、集団間の健康上の差異がどれほど遺伝的であり、あるいはどれほどが環境に左右されているかを分別するところにあります」と語っています。


研究チームの論文は、以下のリンクから閲覧することが可能です。

Differential methylation between ethnic sub-groups reflects the effect of genetic ancestry and environmental exposures | eLife

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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