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スター・ウォーズ初の実写ドラマ「マンダロリアン」にはこれまでになく新しい撮影方法が取り入れられている


「遠い昔、はるか彼方の銀河系で……」というオープニングで知られるスター・ウォーズの舞台となるのは地球上ではなく、誰もが見たことないような惑星や宇宙船です。そのため、撮影するためには大がかりなセットを組んだり、CG映像と実写を合成したりする必要があります。スター・ウォーズシリーズで初の実写ドラマとなる「マンダロリアン」では、「ゲームエンジンによるリアルタイムレンダリングを撮影に用いる」という従来の映画やドラマの撮影には見られなかった新しい技術を使って半分以上のシーンが撮影されています。

マンダロリアンの制作陣向けに新しい道を切り開く
https://www.unrealengine.com/ja/blog/forging-new-paths-for-filmmakers-on-the-mandalorian


「マンダロリアン」はジョージ・ルーカスが長年夢見ていた実写ドラマですが、「スター・ウォーズ」映画本編に比べると与えられた時間と予算は限られています。そのため、「マンダロリアン」では大規模なセットを作ることができません。


大規模なセットを組まずとも、グリーンバックを用いたクロマキー合成で、実写とCGを組み合わせれば撮影することはできます。しかし、「マンダロリアン」の主人公である賞金稼ぎのマンダロリアンは常にアーマーを身にまとっており、グリーンバックで撮影すると背景の緑色がアーマーに写り込んでしまうため、合成する時にはアーマーを含めたグリーンバックの写り込みを丁寧に処理しなければなりません。この処理もまたコストがかかってしまうため、全編をクロマキー合成で制作するのは難しいものがあります。

そこで、制作総指揮を務めるジョン・ファブロー氏は「リアルタイムのインタラクティビティとコラボレーションを制作プロセスに取り戻すこと」をコンセプトに、「Epic Games開発のゲームエンジンであるUnreal Engineでレンダリングした背景をリアルタイムで表示して撮影する」という方法を「マンダロリアン」シーズン1の撮影に取り入れました。

実際にどんな感じで「マンダロリアン」が撮影されているのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。

The Virtual Production of The Mandalorian, Season One - YouTube


インダストリアル・ライト&マジック(ILM)が開発したデジタル撮影スタジオが以下。ILMのロゴが表示されているのは円形の舞台をぐるりと取り囲む270度のLEDウォールです。


NVIDIA GPUを搭載した4台のPCがUnreal Engineを実行し、高解像度にリアルタイムレンダリングされた壁や天井をLEDウォールに映し出すという仕組み。


LEDウォールに映し出されるのは、カメラの視点に応じて視差と照明を補正した上でレンダリングされた映像。これによって、違和感のない背景を再現しているというわけです。


実際の撮影風景はこんな感じ。「マンダロリアン」シーズン1は50%以上のシーンがLEDウォールを使って撮影されています。


LEDウォールの内側に床や小道具などのセットが組まれています。以下の場面はLEDウォールに何も表示していない時の風景ですが……


LEDウォールに部屋の壁や天井を表示するとこんな感じ。


以下の場面では、手前に映っている演者や小道具はカメラで撮ったままで、ピントがややぼけた背景はLEDウォールに映し出された映像。知らなければ大がかりなセットで撮影しているようにしか見えないクオリティに仕上がっています。


専門のスタッフがシーンの背景、ライティング、エフェクトを操作しています。また、カメラのプレビューモニターでリアルタイムに確認することもできるそうです。また、バージョンアップデートで撮影データをシーケンサーに取り込んだり、LEDウォールの環境をiPadからリモートでコントロールできるようになったとのこと。


Unreal Engineの開発チームは「『マンダロリアン』は、刺激的な挑戦であっただけでなく、Unreal Engineのあらゆるユーザーに役立つツールを開発し、制作現場で実証するチャンスともなりました」と述べ、「『マンダロリアン』で開発したテクニックやテクノロジーは、氷山の一角に過ぎません。将来がどのようなものになるか、非常に楽しみです」と語っています。

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in ソフトウェア,   動画, Posted by log1i_yk

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