サイエンス

「傷口に細菌が感染すると色が変わる包帯」によって治療を最適化する仕組みが開発される

by Pressmaster

抗生物質に抵抗性を持つスーパーバグは人間にとって大きな危機であり、多くの研究者らがスーパーバグへの対抗策を模索しています。そんな中、「傷口に細菌が感染すると色が変わり、細菌がスーパーバグかどうかも判別可能な包帯」を、中国科学院の研究チームが開発しました。

Colorimetric Band-aids for Point-of-Care Sensing and Treating Bacterial Infection | ACS Central Science
https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acscentsci.9b01104

Smart Bandages Automatically Sense and Treat Bacterial Infections
https://scitechdaily.com/smart-bandages-automatically-sense-and-treat-bacterial-infections/

Scientists Made a Colour-Changing Bandage Designed to Detect Bacterial Infections
https://www.sciencealert.com/scientists-have-developed-a-colour-changing-bandage-to-detect-bacterial-infections


傷口に細菌が感染したかどうかや、感染した細菌が抗生物質に耐性を持っているかどうかを監視することは、最適な治療を行う上で重要です。しかし、感染した細菌がスーパーバグかどうかを調べるのは一般的に時間がかかる上に、専門家の知識や高価な機器が必要になると研究チームは指摘。そこで、研究チームは「感染した細菌の種類によって色が変わる包帯」を開発し、一目で細菌の感染やスーパーバグの有無を判別できるようにしました。

包帯には酸性度に応じて緑色から黄色に変化する材料が使われており、通常時は緑色の包帯が、細菌感染によって酸性化した傷口に触れると黄色に変化するとのこと。また、包帯には薬剤感受性がある細菌を殺す抗生物質を放出する材料も含まれています。薬物耐性を持つスーパーバグは抗生物質に反応して酵素を放出していますが、包帯はこの酵素を感知すると赤色に変化するそうです。つまり、包帯は傷口が細菌に感染していない又は細菌の濃度が低い場合は緑色に、薬剤感受性のある細菌に感染すると黄色に、薬剤耐性のあるスーパーバグに感染すると赤色に変化すると研究チームは述べています。

以下の画像が、マウスの傷口に新開発の包帯を貼り、細菌の濃度や種類を変えて傷口に感染させた際に現れた色の違いを撮影したもの。上の列が薬剤感受性のある細菌(DS)を感染させたもの、下の列が薬剤抵抗性のあるスーパーバグ(DR)を感染させたものであり、一番左が細菌が感染していない状態で、右に行くに従って傷口に感染する細菌の数が増加しています。細菌に感染していない状態の色はいずれも同じですが、細菌の数が増えるにつれてそれぞれの色が変化し、一目で「スーパーバグに感染しているかどうか」をチェックできることがわかります。


研究チームは、傷口に貼った包帯の色に応じて、治療者が適切な治療方法を選択できると述べています。たとえば、包帯の色が黄色であれば通常通りに抗生物質の投与を行い、赤色であればスーパーバグに有効な光線力学療法(PDT)を用いた治療を選択可能とのこと。

また、包帯が黄色になったのを確認して抗生物質を投与した後に、包帯の色が赤色に変化するというケースも考えられます。この場合、「抗生物質の投与によって細菌がスーパーバグに変化した」と判断できるため、治療者が追加の治療を行い、スーパーバグがさらなる耐性を獲得することを防止することが可能です。

包帯は簡単に持ち運び可能であり、手当に使うのに特別な技能は必要ありません。「従来のPDTベースの抗菌戦略と比較して、私たちが開発した方法は治療による意図しない副作用を軽減し、治療効果を最大化し、肉眼で薬剤耐性の変化をリアルタイムに追跡できます」と、研究チームは述べました。

by seventyfourimages

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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