抗生物質が効かない「スーパーバグ」に対抗すべく「抗生物質のカクテル」で効き目を上げる方法8000通りを研究者が発見

by JeongGuHyeok

複数の薬を組み合わせると、通常、薬同士で効果が相殺されて効き目は小さくなります。しかし、カリフォルニア大学ロサンゼルス校の生物学者たちは、有害な細菌に対して高い効果を発揮する抗生物質の組み合わせを発見しました。これは、一度に4～5種類の抗生物質を合わせるという方法で、組み合わせはおよそ8000通り存在するとのこと。研究はまだ初期段階ですが、将来的に抗生物質が効かなくなった細菌に対して用いられる可能性があります。

8,000 new antibiotic combinations are surprisingly effective, UCLA biologists report | UCLA
http://newsroom.ucla.edu/releases/8000-combinations-antibiotics-surprisingly-effective

Scientists Just Found 8,000 New Drug Cocktails For Fighting Antibiotic Resistance
https://www.sciencealert.com/8000-new-drug-combinations-could-fight-antibiotic-resistance

研究を行ったPamela Yeh氏は、「私たちは服用する抗生物質を1つ、あるいは2つに限定すべきではありません。複数の抗生物質を組み合わせることで、現存する抗生物質よりも高い効き目をあげることができます」と語っています。

Yeh氏らは大腸菌に対する効き目を見るため、8つの抗生物質を使う方法から検討しはじめ、4～5種類の抗生物質を組み合わせる方法の有効性を確認したとのこと。最終的に1万8278通りの組み合わせを、服用量を調整しつつ実験したそうです。

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研究者によると、4つの抗生物質を組み合わせる方法では1676通り組み合わせが、5つの抗生物質を組み合わせる方法では6443通りの組み合わせが予想より高い効果を発揮したとのこと。一方で、研究者の予想より効果が低かった組み合わせも、4つの抗生物質の組み合わせで2331通り、5つの抗生物質の組み合わせで5199通り存在したといいます。

「抗生物質の数を増やすことで、効果を上げる組み合わせがこんなにも存在することに驚きました」「人々は薬の組み合わせがどう作用するかについて知っているようで、知らないのです」と研究を行ったVan Savage氏は語っています。

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抗生物質はものによって細菌にアプローチする方法が異なるため、複数の組み合わせによって複数のアプローチが可能になるというのが、効果が上がる背景にあります。「細胞壁を攻撃するものもあれば、内側からDNAを攻撃するものもあります。要塞や城を攻撃する時のように」とSavage氏。

ただし、今回行われたのは大腸菌のみを対象とし、「ラボ」という限定的な環境で行われた実験だということには留意すべき。また、特定の病気を治療するためには注意深く系統的な薬の選択が必要になるという点にも気をつけなければなりません。さらに、2013年の研究では、複数の抗生物質を使う事は細菌の攻撃性を上げることも示されています。

抗生物質がきかないスーパーバグの危険性は世界的に叫ばれており、イギリス政府は耐性菌による伝染病がまん延し、3秒に1人が死ぬ未来がやってくる可能性を示唆しています。

2050年にはスーパー細菌が3秒ごとに1人を殺すかもしれないという衝撃的なレポート - GIGAZINE

このような状況で、将来的なパンデミックを防ぐためにも、細菌に対する新たな対抗方法の発見や開発が求められています。アメリカ国立衛生研究所のMichael Kurilla氏は、「耐性菌の存在は、抗生物質が開発される前の時代にヘルスケアを巻き戻す恐れがあり、有効性が薄れてきている既存の抗生物質を組み合わせる賢明な方法は歓迎されています」と述べました。