サイエンス

「細菌を壊れないようにする」という全く新しいタイプの抗生物質が発見される


青カビから発見されたペニシリンのように、「微生物が作り出し、他の微生物の発育を阻害する物質」が抗生物質です。しかし、抗生物質の乱用によってスーパーバグ(耐性菌)が登場していると近年報じられており、「多くの命を救ってきた抗生物質が無効化されてしまうのでは」と危惧されています。そんな中、これまでになかった新しいタイプの抗生物質が発見されたと、マックマスター大学の研究チームが報告しています。

Evolution-guided discovery of antibiotics that inhibit peptidoglycan remodelling | Nature
https://www.nature.com/articles/s41586-020-1990-9

Antibiotics discovered that kill bacteria in a new way
https://phys.org/news/2020-02-antibiotics-bacteria.html

抗生物質には大きく3つにわけて、細菌のRNA合成を邪魔する核酸合成阻害薬、細菌の細胞壁の合成を邪魔する細胞壁合成阻害薬、細菌のタンパク質合成を阻害する蛋白合成阻害薬が存在します。たとえば人類が初めて発見した抗生物質であるペニシリンは、細菌の細胞壁の主要成分であるペプチドグリカンの合成を阻害することで細菌の発育を抑えます。しかし、このペニシリンを分解する酵素を発現することで、ペニシリンに高い耐性を示す菌が登場しています。


しかし、マックマスター大学で生化学および生物医学を研究するエリザベス・カルプ氏が土壌バクテリアから発見した糖ペプチドコルボマイシン」と、既知の糖ペプチド「コンプレスタチン」は、上記3種類に属さない全く新しい抗生物質であることが判明しました。カルプ氏によれば、コルボマイシンとコンプレスタチンには「ペプチドグリカンに結合することで細胞壁の破壊を防ぐ」という、ペニシリンと真逆の作用があるとのこと。

細菌が発育するためには、細胞壁の分解と再構築を繰り返して大きくなり、細胞分裂を行う必要があります。しかし、コルボマイシンとコンプレスタチンがペプチドグリカンに結合することで細胞壁を分解する酵素の働きを阻害し、細菌の細胞分裂が不可能になってしまうという仕組みです。

by Y tambe

「細胞が成長するためには、大きくなって分裂しなければなりません。細胞壁の分解を完全に阻止することで、細菌は刑務所に閉じ込められたような状態となり、細菌は成長することも大きくなることもできません」とカルプ氏は語っています。

また、カルプ氏は「バクテリアのゲノム配列から、新しい抗生物質となる糖ペプチドグループを予測する」という方法で、コルボマイシンとコンプレスタチンを発見したと報告しています。「このアプローチは他の抗生物質にも適用でき、異なる作用機序を持つ新しい抗生物質の発見に役立ちます。今回の研究で全く新しい抗生物質を発見しましたが、他にもコルボマイシンと同様に作用するような抗生物質の発見が予想されます」とカルプ氏は述べました。

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in サイエンス, Posted by log1i_yk

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