「インターネット上の著作権侵害の歴史」を保存するプロジェクトが進行中

by Victoria Heath

「Warez」とは、非合法な方法で商用ソフトウェアや電子コンテンツをやり取りすることを指す言葉で、日本では違法ダウンロードのことをWarezから転じて「割れ」などとも呼びます。著作権を侵害した違法な配布・販売・あるいはダウンロードは古くから行われており、「著作権侵害ウェブサイトからメタデータを収集してインデックスを作成し、著作権侵害の歴史を残す」というプロジェクトが進行中です。

Index of /public/Piracy/The Eye
https://the-eye.eu/public/Piracy/

Archivists Are Saving the History of Internet Piracy - VICE
https://www.vice.com/en_us/article/akww84/archivists-are-saving-the-history-of-internet-piracy

著作権が侵害されているインターネット上の配布物は、必ずしも目的のソフトウェアやコンテンツ単体でダウンロードできるわけではありません。時にはコンテンツに付属する「.nfoファイル」に、アスキーアートや説明文、海賊版作成グループのロゴやブランド名など、さまざまなメタデータが添付されています。

Warezの歴史は非常に古く、日本でも1970年代後半からソフトウェアの不正なコピーが行われており、海賊版に付属するメタデータの記録は、アンダーグラウンドのサブカルチャーに関する数十年におよぶ盛衰を記録するものでもあります。テクノロジー系メディアのMotherboardによると、自身を「Archivist(活動家)」と名乗る人物が、絶え間なく変化するインターネットの歴史をカタログ化するために「著作権侵害に関するメタデータを収集してインデックスを作成する」というプロジェクトを行っているとのこと。

Archivistはこれまでにも、「削除されたものを含むYouTubeに投稿されたムービーのメタデータ」や、「Instagramに投稿された大量のコンテンツ」など、インターネット上のあらゆる歴史を収集することに注力してきました。これらのプロジェクトの活動資金は、全て寄付で賄われているとArchivistは語っています。

by Jefferson Santos

「著作権を侵害したファイルのメタデータには、ユニークなアートワーク、著作権を侵害して海賊版を配布するグループそのものに関する情報、グループ間やグループ内の問題、メンバーの確執、法執行機関による襲撃、グループがコンテンツを収集する方法、クラッキングの方法などが含まれます」とArchivistは述べ、これらのメタデータは巨大なオンライン世界の歴史を知る手がかりになるものだと主張しています。

YouTubeやInstagramのコンテンツと同様に、著作権侵害ファイルのメタデータを追跡・収集する上での大きな問題は、関連ファイルがあまりにも膨大になる点だとのこと。すでにArchivistは「srrdb.com」などの海賊版サイトから大量のSRRファイルをダウンロードしており、400GB以上のファイルを解凍・圧縮して収集済みですが、プロジェクトの完了時にはインデックスの総データ量が5TBを超えるとみられているそうです。

一般的に、海賊版をはじめとする著作権を侵害したコンテンツやウェブサイトは、インターネット上のコンテンツをアーカイブする試みから取り残されがちです。著作権侵害は「悪意のある行為である」という側面のみが取り上げられますが、しばしば著作権侵害は「見えない競争」の一形態として機能し、公式のコンテンツやストリーミングサービスの充実に寄与しているとも指摘されています。

もちろん著作権を侵害したファイルを配布・販売することは法律に違反しているものの、「1975年ごろから行われてきた著作権侵害のサブカルチャーの長い歴史は、アーカイブする価値があります」とMotherboardは述べました。

by dimitrisvetsikas1969