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「Googleマップはもはや教育現場には不向きなプラットフォームになった」と大学教授が非難


スティーブンス工科大学で核兵器の歴史について研究しているアレックス・ウェラーシュタイン教授が、かつてGoogleマップで公開していた「NUKEMAP」を、オンラインカスタムマップのMapboxに移植した経緯を説明しています。

Why NUKEMAP isn't on Google Maps anymore | Restricted Data
http://blog.nuclearsecrecy.com/2019/12/13/why-nukemap-isnt-on-google-maps-anymore/

NEW BLOG POST: Why NUKEMAP isn't on Google Maps anymore (or, why Google Maps API has become a lousy platform for small developers, esp. academic ones). Features antique screenshots of the never-distributed NUKEMAP from 2005 (!). https://t.co/wG2ecmZQW3

— Alex Wellerstein (@wellerstein)


ウェラーシュタイン氏が2012年に開発した「NUKEMAP」は、地図上の任意の場所に核兵器を落とした場合の、死傷者数や放射性汚染物質による影響範囲などを視覚化できるシミュレーターです。実際に使っている様子は以下の記事を読むと一発で分かります。

核爆弾が落とされた際の死傷者や汚染範囲をシミュレートできる「NUKEMAP」 - GIGAZINE


Google Maps APIで作成された「NUKEMAP」は、2012年2月に公開されてから1カ月も経たないうちに「100万回も爆弾が投下される」ほどの反響を呼んだだけでなく、それ以降も毎月約20万回のペースで利用されるなど、核兵器の脅威についての理解に役立てられてきました。ウェラーシュタイン氏は、最初にGoogleマップを選んだ理由を「無料で使用可能で、定期的に新機能を作り出す活発なコミュニティを持っている、便利で驚くべきツールでした」と述べています。

2016年からはGoogleがマップの利用料を請求するようになりましたが、料金は月額約200ドル(約2万2000円)とそれほど高額ではなく、費用はティーブンス工科大学が負担してくれていたので、ウェラーシュタイン氏はGoogleマップを利用して「NUKEMAP」の開発を続けました。しかし、2018年に入ると料金は200ドルから1800ドル(約20万円)へと高騰し、ウェラーシュタイン氏は支払いに窮するようになってしまいました。利用料があまりに急激に増えたため、ウェラーシュタイン氏がGoogleに問い合わせてみたところ、知らない間に価格表が改訂されていたことが判明。ウェラーシュタイン氏が価格交渉を行っても、Googleの対応はけんもほろろだったとのこと。


ウェラーシュタイン氏はなんとか「NUKEMAP」を維持する方法を模索しようと、Googleの「非営利団体向けプログラム」の利用を検討しましたが、「学校、教育機関、大学ではないこと」が条件だったため、同プログラムを利用することはできませんでした。


Googleの非営利団体向けプログラムの対象から教育機関が除外されているのは、教育機関向けにGoogleのサービスを無償提供するG Suite for Educationという別のプログラムが用意されているためですが、これを活用するには全学の代表者として申し込まなければならず、ウェラーシュタイン氏がスティーブンス工科大学の教授になる前から続けてきたプロジェクトである「NUKEMAP」が対象となるのは望み薄でした。この制度の使い勝手について、ソーシャルニュースサイトのHacker Newsでは、「大学内には非常に多数の開発プロジェクトがあり、これらは多くの場合、大学のIT所管課の関与なしで運営されています。こうしたプロジェクトに対して、大学全体を代表して申し込めというのは、外国の一企業が政府全体を巻き込んでソフトのライセンスを買い付けるのを期待するようなものです」と投稿され、複数の賛同を得ています。


ウェラーシュタイン氏は、「Googleは存在としての大学と、大学の研究者を区別できていませんが、両者には規模や目標などの点で大きな違いがあります。それに、Googleによるサポートは明日には消えてしまうほど不確かです。私は自分の仕事がGoogleに『公益に資する』と認められるかどうか、心配したくはありません」と述べて、最終的にGoogleマップの使用をあきらめた経緯を説明しました。

Googleマップの使用継続を断念したウェラーシュタイン氏は、代わりにMapboxとオープンソースのJavascriptライブラリであるLeafletを組み合わせて、「NUKEMAP」を再スタートさせることに決めました。Google Maps APIに依存するいくつかの機能は移植が困難でしたが、解決のめどは立っているとのこと。ウェラーシュタイン氏によると、「Mapboxのサポートは、あらゆる点でGoogleとは正反対です」とのことです。

NUKEMAP by Alex Wellerstein
https://nuclearsecrecy.com/nukemap/


ウェラーシュタイン氏は「『NUKEMAP』は、Mapboxに移植してからも十分な機能を発揮しています。ほかの機能も、すぐに追加できるでしょう」と話して、今後の開発継続に意欲をのぞかせました。

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in ネットサービス,   ウェブアプリ, Posted by log1l_ks

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