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海賊版撲滅のためには正規のより安い代替品を出すのが最も効果的

by JESHOOTS.com

「映画や音楽の海賊版を撲滅するにはユーザーを犯罪者として扱うのではなく、より入手しやすい選択肢を作るのが最も効果的である」ということを示す調査結果が公開されました。これまでも「Netflixの広まりによって海賊版の利用が減少した」という内容が示されてきましたが、ニュージーランドの数千人を対象とした調査でも同様の結果が示され、従来の「フィルタリングを行う」「訴訟を起こす」というような方法が非効率的であることが示唆されています。

Netflix is killing content piracy | Scoop News
http://www.scoop.co.nz/stories/BU1902/S00685/netflix-is-killing-content-piracy.htm

Studies Keep Showing That the Best Way to Stop Piracy Is to Offer Cheaper, Better Alternatives - Motherboard
https://motherboard.vice.com/en_us/article/3kg7pv/studies-keep-showing-that-the-best-way-to-stop-piracy-is-to-offer-cheaper-better-alternatives

コンテンツの著作権を有する企業は、違法に音楽やゲーム、映像ファイルなどを入手可能にする海賊版コンテンツ撲滅のために巨額の賠償金訴訟を起こしたり、プロバイダにブロックを命じたりと、さまざまな手だてを講じています。しかし一方で、海賊版を利用するユーザーはコンテンツにより多くお金を使っていることが調査で示されており、海賊版を利用するユーザーを犯罪者として扱うのではなく、ダウンロードの代替手段を用意する方が賢明ではないのか?ということが研究者によって度々主張されてきました。

そんな中、通信事業者であるVocus Groupが資金提供を行い2018年12月にニュージーランドの住民数千人を対象に調査が実施されたところ、「調査対象となった人の約半数は海賊版コンテンツを利用した経験があるということ」、そして「海賊版を利用する人の数はストリーミングサービスのような『合法な代替手段』が増加するにつれ減少していったこと」が示されました。

2018年12月時点で、違法なストリーミングサービス経由でコンテンツを入手している人は全体の11%、BitTorrentといったプラットフォーム経由で不正にコンテンツをダウンロードしている人は10%とのこと。しかし、多くのユーザーは同様のコンテンツをNetflix(55%)やテレビ(75%)経由で見るようになっていることがわかりました。

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Vocus GroupのTaryn Hamilton氏は「要するに、人々が海賊版から離れるようになった理由は、その価値に比べて面倒さが勝ったということです」と述べています。

歴史的にエンターテイメント業界は、海賊版を利用する人を「何もかもを無料で手に入れたがる人」だと見なしてきましたが、現実にはそうではなく、「広く利用可能であれば喜んでお金を払う人」だったことが調査によって示されたわけです。Hamilton氏は「違法コピーは犯罪者ではなく、欲しいコンテンツが簡単・手頃に入手できない人によって引き起こされます」とコメントしました。


上記の調査結果に賛同する専門家も多く、アイダホ大学で著作権を研究する法学教授のAnnemarie Bridy氏は、アメリカやEU内、そして国際的に行われた数々の調査で、「正規なアクセス方法が利用可能であるとき、多くのユーザーが海賊版よりもそっちを利用する」ことが示されていると説明。これは、海賊版の違法ダウンロードにはセキュリティのリスクが伴うと、多くのユーザーが知っていることも一因だといいます。

著作権の専門家であるTechdirtの共同創業者であるMike Masnick氏は、自身が行った2015年の研究でも同様の結論が出ていると述べています。「インターネット・フィルターのような積極的な反海賊版の手段が講じられると海賊版の利用率は下がりますが、その回避方法がわかると再び利用率は上昇します」として、ユーザーを「犯罪者」とみなす既存の方法には限界があることを示しました。スウェーデンでは厳格な反海賊版の法律が制定されましたが、法制定前と法制定後で海賊版の利用率は変化せず、テレビでの海賊版利用率はむしろ増加傾向にありました。しかし、その数年後にNetflixが広まると、海賊版利用率は減少し始めたとのこと。

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さらに、インディアナ大学の研究者であるAntino Kim氏は、海賊版の横行が独占的な市場に「影の競争」をもたらしたことが、海賊版が容易にまねできない革命的なエリアに企業を投資させたと主張しています。「使いやすさ、速く途切れないストリーミング、質の高い映像と音声、複数言語のサポート、ユーザーに合わせたサービスなどにおいて、企業は海賊版をしのぎ、海賊版との差別化を図っています」とKim氏は述べています。

ただし、ストリーミングサービスと放送局の競争が激しくなるにつれ、所有するコンテンツを有料化させるといった行為が増え、ユーザー側のコストが増加する可能性もあります。そうなると海賊版をめぐる事態は反転し、「アクセスしづらいコンテンツ」を見るために海賊版が増えるという可能性も示唆されています

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in ネットサービス, Posted by darkhorse_log

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