貧しい人々が心臓病になりやすいのは「職業と睡眠不足の両方」が原因との指摘

by stokkete

過去の統計調査により「経済的に貧しい人ほど心血管疾患になりやすい」ことが突き止められていますが、収入だけでなく睡眠も考慮した調査により「貧しい人々が心血管疾患になりやすいのは職業と睡眠不足の両方が関与している」ことが分かりました。

contribution of sleep to social inequalities in cardiovascular disorders: a multi-cohort study | Cardiovascular Research | Oxford Academic
https://academic.oup.com/cardiovascres/advance-article/doi/10.1093/cvr/cvz267/5634171

Communities Exposed to Adverse Socioeconomic Factors Found to Sleep Less, Have Increased Risk of Cardiovascular Disorders
https://www.ajmc.com/focus-of-the-week/communities-exposed-to-adverse-socioeconomic-factors-found-to-sleep-less-have-increased-risk-of-cardiovascular-disorders

Huge Study Hints at a Key Reason Why Poor People Have Higher Risk of Heart Disease
https://www.sciencealert.com/here-s-one-key-reason-why-poorer-people-might-have-a-higher-risk-of-heart-disease-a-lack-of-sleep

働き方と睡眠の関係がもたらす心臓病のリスクについて明らかにしたのはスイスの総合医療公衆衛生センターで疫学について研究しているドゥシャン・ペトロヴィッチ氏らの研究グループです。ペトロヴィッチ氏らは、合計11万1205人が参加した8つのコホート研究をメタ分析して、「睡眠時間」「生涯にわたる社会経済的地位(SES)」「心血管疾患(CVD)」の3つの要素の関係性を調べました。

なお、「睡眠時間」は「適正(6～8.5時間)」「長時間(8.5時間より長い)」「短時間(6時間未満)」に、SESは参加者の父親と成人後の参加者自身の職業を「高(専門家や管理者、給料が高い事務職)」「中(小規模事業主や農業従事者、技術者など)」「低(給料が低い事務職、営業職、肉体労働者)」にそれぞれ分類。CVDは「心血管疾患(冠動脈性心疾患／CHD」と「脳卒中」の2種のデータが採用されました。

分析の結果、参加者の父親の職業に起因するSESが低かった場合は、CHDのリスクが男性で19％、女性で25％上昇。また、参加者自身の職業に起因するSESが低かった場合はCHDのリスクが男性で48％、女性で53％上昇しました。さらに、男性のCHDのうち13.4%が睡眠時間の短さに起因していることが判明しました。なお、脳卒中のリスクはどの要素とも関連していなかったとのこと。

by Rawpixel

SESが低いことによって増加するCHDのリスクが男性より女性の方が高い点についてペトロヴィッチ氏は、「社会経済的地位が低い女性は、多くの場合肉体的・心理的負担の多い低賃金の仕事と家事を兼務しており、そのストレスにより男性よりも睡眠不足やその他の要因からの影響を強く受ける可能性があります」とコメントしました。

ペトロヴィッチ氏はさらに「今回の研究により、社会経済的地位の低さと睡眠不足との相互作用が、健康に甚大な被害をもたらす可能性が高いことがわかりました。これは、父親の社会経済的地位が低いことで、睡眠が妨害されるような騒がしい環境での生活を余儀なくされたり、本人の社会経済的地位が低いことで、勤務時間が不規則な交代制の仕事やストレスの多い仕事に就かざるを得なくなったりしているという実態を浮き彫りにしています」と指摘し、社会改革の必要性を強調しました。