サイエンス

質の高い睡眠がアルツハイマー病のリスク低減に役立つ可能性

by Tracey Hocking

深い睡眠(ノンレム睡眠)時に発される脳波が脳脊髄液の流量増加を促し、アルツハイマー病やその他の疾患の原因であるとみられる毒素を洗い流していることがわかりました。

Coupled electrophysiological, hemodynamic, and cerebrospinal fluid oscillations in human sleep | Science
https://science.sciencemag.org/content/366/6465/628


Sleep And Alzheimer's: Cerebrospinal Fluid Washes Away Toxins : Shots - Health News : NPR
https://www.npr.org/sections/health-shots/2019/10/31/775068218/how-deep-sleep-may-help-the-brain-clear-alzheimers-toxins

これはボストン大学のローラ・ルイス助教授らの研究により明らかになったもので、論文はサイエンス誌に掲載されました。


アルツハイマー病と睡眠との関係としては、これまでに「アルツハイマー病患者はしばしば睡眠に問題を抱えている」ということ、「睡眠障害の人はアルツハイマー病になりやすい」ことがわかっています。

「脳の健康と睡眠」に着目したルイス助教授らは、眠っているときに脳の中で何が起きているかを調査しました。すでに、2013年の動物を対象にした研究により、睡眠中には脳脊髄液の流れが増加し、アルツハイマー病に関連する毒素などの老廃物が取り除かれることがわかっていましたが、ルイス助教授らは人間の脳内でもこの動きが起きることをリアルタイムで確認しました。

by DANNY G

さらに、ニューロンで「徐波」(スローウェーブ)が起こって数秒後に脳脊髄液の流れが起きていることもわかりました。サイクルはおよそ20秒に1回でした。徐波はノンレム睡眠になると現れること、アルツハイマー病の患者は徐波が少ないことが分かっています。これは、徐波の減少が「脳内洗浄サイクル」を減少させ、毒素の除去能力低下につながっていることを示唆しています。

また、ルイス助教授らは、脳脊髄液の流量が増えると脳内の血液量が減ることも発見しました。これは、脳脊髄液が老廃物を運ぶ余地が大きいことを示しているとのこと。

ノンレム睡眠とアルツハイマー病患者の脳に蓄積するベータアミロイドとの関係を研究しているカリフォルニア大学バークレー校のウィリアム・ジャガスト教授は「質の高い睡眠を確保することは、アルツハイマー病のリスク低減に役立つ」とコメント。

ジャガスト教授によれば、今回の研究結果は睡眠とアルツハイマー病に関する他の研究結果とよく一致するものだとのこと。アミロイドが睡眠の質を落とし、それによりアミロイドが増加、老廃物の除去も減る、という悪循環になっている可能性があるとのことです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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