サイエンス

音を使って深い眠りへ誘い、記憶力を高める方法

by Cris Saur

「脳波のリズムとシンクロする、流れる滝の音のような優しい音」は、高齢者が深い眠りに入る助けとなり、記憶力を高める役に立つことが新しい研究で明らかになっています。

Frontiers | Acoustic Enhancement of Sleep Slow Oscillations and Concomitant Memory Improvement in Older Adults | Frontiers in Human Neuroscience
https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fnhum.2017.00109/full

This noise could deepen sleep and boost memory
https://knowridge.com/2018/01/this-noise-could-deepen-sleep-and-boost-memory/

睡眠には「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の2つの状態が存在しており、「レム睡眠」は「浅い眠り」、「ノンレム睡眠」は「深い眠り」と表現されることがしばしばあります。この「ノンレム睡眠」は、脳が完全に眠っている状態にあり、記憶を定着させるために重要な役割を担っていると考えられています。しかし、中高年になってくるとこのノンレム睡眠の時間が減少してくるとのことで、科学者によるとこの「ノンレム睡眠時間の減少」が老化による記憶力の低下を引き起こしているそうです。

そんな「ノンレム睡眠時間の減少」を防ぐのに効果的な方法を示す研究結果が、Frontiers in Human Neuroscience上で公開されました。研究はノースウェスタン大学のCognitive Neurology and Alzheimer's Disease Centerが行ったもので、60歳以上の13人の被験者を募り、一晩中「音による刺激」と「偽の刺激」を聴きながら寝てもらうという実験を行うことで方法を導き出しています。

by elizabeth lies

この実験で用いられる「偽の刺激」というのは、「音による刺激」と同じ音を鳴らすものの、被験者の睡眠中には何の音も出さなくするというもの。睡眠中に鳴りっぱなしとなる「音による刺激」との差異を比べることで、睡眠中に聴いた音が人体にどのような影響を与えるかを調べるために用いられます。なお、被験者が「音による刺激」と「偽の刺激」の実験に参加する際は、寝る前と起きてからの2回にわたって記憶に関するテストを受けてもらいます。

また、実験では被験者の脳波をリアルタイムで読み取ることで睡眠中に聴かせる音と脳波を位相同期回路のようにシンクロさせてから被験者に聴かせたそうです。なお、人間が深い眠りに入っている際に起きるニューロンの発火は人それぞれでタイミングが異なるため、睡眠中に聴かせる音はそれぞれの被験者向けにチューニングする必要があります。

実験の結果、「偽の刺激」を聴いた場合は寝る前と起きてからの記憶力テストでわずか数%の改善しかみられなかったのに対し、「音による刺激」としてピンクノイズを聴き続けた場合は起きてから受けたテストのスコアが平均で3倍も高くなり、明らかに記憶定着に効果を発揮していることがわかりました。

ピンクノイズというのは以下のようなノイズ音。こういった類いのノイズを睡眠時の脳波とシンクロさせて被験者に聴かせたとのこと。

エージング用ピンクノイズ30分 - YouTube


この実験が行われている最中の被験者の脳波を検知したところ、寝る際にピンクノイズを聴いた被験者は、明らかに脳からの信号が少なくなり、深い眠りに入っていることがわかっています。これはノンレム睡眠のうち、出現する脳波の周波数が低い「徐波睡眠」が長くなっているともいえ、被験者の間で記憶力の改善が起きていることを示唆する結果であるといえます。つまり、高齢者にとっては徐波睡眠の長さが記憶力を維持するのに重要な働きを担っていると推測されており、その徐波睡眠を長くするのに脳波とシンクロさせたピンクノイズが有効であることが実験から明らかになったというわけです。

なお、ノースウェスタン大学の研究者たちは「音による刺激」を毎晩聴き続けた場合の影響についてはまだ研究できていないものの、「家庭で長期間にわたって実施できる方法となる可能性もある」と語っています。

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in サイエンス,   動画, Posted by logu_ii