トランプ大統領が史上4人目の弾劾調査対象に、手続きはどう進められるのか？

by Darren Halstead

バイデン前副大統領の息子に関する疑惑の調査と引き換えにウクライナのゼレンスキー大統領へ「不適切な約束」をしたとして、アメリカ下院のペロシ議長が、トランプ大統領に対する弾劾調査を始めることを発表しました。

米下院、トランプ大統領の弾劾調査開始へ　米史上４例目：朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASM9T1QB5M9TUHBI002.html

Impeachment: how does it work and what happens next? | US news | The Guardian
https://www.theguardian.com/us-news/2019/sep/24/impeachment-how-does-it-work-and-what-happens-next-trump

今回問題となっているのは、トランプ大統領が2019年7月下旬にウクライナのゼレンスキー大統領と交わした電話の中で、前大統領であり次の大統領選で民主党候補の1人となっているジョー・バイデン氏、およびその次男でウクライナのガス会社・ブリスマの取締役だったハンター・バイデン氏に関する疑惑を調査するよう依頼したという件。電話会談の直前に、ウクライナに対する4億ドル(約430億円)規模の支援を保留しており、圧力をかけたものとみなされています。

弾劾にあたってはまず、「弾劾につながる可能性のある犯罪」を下院のいずれかの委員会が調査します。そして、調査結果に基づいて弾劾決議案が作成され、下院司法委員会で審議されます。決議案は下院司法委員会で可決されると、下院本会議にかけられます。

決議案が賛成多数で通過すると、上院での「弾劾裁判」が始まります。この弾劾裁判で、出席議員の3分の2以上の賛成があれば、大統領は解任されます。

過去に弾劾調査が行われたのは1868年のアンドリュー・ジョンソン(第13代大統領)、1974年のリチャード・ニクソン(第37代大統領)、1998年のビル・クリントン(第42代大統領)の3例で、トランプ大統領が4例目です。トランプ大統領は2016年に行われた大統領選挙時のロシアによる干渉疑惑「ロシアゲート」の際にも弾劾を求める声がありましたが、調査は行われませんでした。下院による弾劾調査を経たものとは別に、議員から弾劾を求める動議が提出されることもあって、その一例として、2008年にデニス・クシニッチ下院議員の提出したジョージ・W・ブッシュ大統領の弾劾案があります。この弾劾案は下院司法委員会に送られたものの、大統領の任期切れまで約半年だったため委員会で審議されることはなかったようで、下院本会議に弾劾決議案が出されるには至りませんでした。

なお、2019年時点のアメリカ上院の構成は定数100名に対して民主党45名、無所属2名、共和党53名なので、トランプ大統領の解任条件を満たすには、民主党議員と無所属議員全員に加えて、共和党から20名強の「離反者」が出る必要があります。