サイエンス

気温の上昇は人体にどのような影響を与えるのか?

by Adam Kontor

地球温暖化による気温の上昇は地球の環境を変えてしまうだけでなく、人々の生活にも多くの影響を与えます。2019年の夏は、日本で最高気温が35度を超える「猛暑日」を連日のように記録しているほか、ヨーロッパやインドでも猛暑により多くの死者が出る事態になりました。「気温の上昇は人体にどのような影響を与えるのか?」という疑問について、オーストラリア国立大学で名誉研究員を務めるエリザベス・ハンナ氏が解説しています。

How rising temperatures affect our health
https://theconversation.com/how-rising-temperatures-affect-our-health-123016

ほとんどの哺乳類や鳥類と同じく、人間は自らの体温を気温や水温に左右されず一定に保つことができる恒温動物です。人間にとって快適な内部温度はおよそ36度~37度ほどであり、気温が22度の部屋で静かに座っている人でも、体内で15度近くの熱を生成しており、体内温度を37度近くに保っています。

人間は代謝によって熱を生み出しており、たとえ気温が人体の快適な温度を上回る38度になったとしても、代謝による熱は生まれます。余剰な熱は人体から放出される必要があるため、人間は汗をかき、皮膚表面から汗を蒸発させることで、気化熱によって体温を下げています。

周囲の空気が高温多湿だと汗が蒸発しにくいため、人間は同じ温度であっても、湿った空気より乾燥した空気の方が過ごしやすくなるとのこと。また、風を浴びると皮膚と接触する飽和した空気が取り除かれるため、汗の蒸発と放熱が促進され、人間は爽快感を覚えます。

by un-perfekt

上手く人間の体温調節システムが機能すれば多少の高温は耐えられるものの、体内の温度が過剰に上昇してしまうと人間は命の危機にさらされます。体温が38.5度に達すると、ほとんどの人間は疲労感を覚えます。加えて人間を構成するタンパク質は熱に弱く、体温の上昇によって体内のタンパク質が壊れてしまう危険性もあるとのこと。

また、心臓や脳、腎臓といった重要な器官の温度が上昇することで、人体を生存させるための重要な機能が失われることもあります。心臓はポンプとして血液を体中に送り届けていますが、体内温度の上昇は心臓に大きな負荷を与えます。また、大量に汗をかくことで脱水状態となって血管内の水分量が減少すると、さらに多くの仕事が必要となり、心臓が負荷に耐えられない場合は心不全などを起こしてしまいます。


普段から多くの有酸素運動を行っている人々はある程度熱に強いそうですが、たとえ一流のアスリートや若者であっても、暑すぎる場合には命を落とす危険があります。また、高齢者や肥満の人々はさらに危険性が高いほか、病気の治療でさまざまな薬を服用している人も注意が必要だそうです。

加えてハンナ氏が注意を促しているのが、妊娠中の女性です。妊娠後期になるとホルモン反応と代謝率の増加により、通常時よりも体温が0.5度ほど上昇します。成長中の胎児にも多くの血液が送り届けられますが、胎児の体温が上がりすぎると、早産や先天性心疾患といった健康上の問題が引き起こされる可能性もあり、妊娠女性は特に高温に対する注意が必要だとのこと。

by Garon Piceli

人間の体は一定の高温には耐えることができる機能を有していますが、それには限界があるとハンナ氏は指摘。どれほど外が暑くても、人間の社会は外に全く出ることなく生活することが難しいシステムになっており、地球温暖化は人間の健康に悪影響を与えるとハンナ氏は述べました。

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in サイエンス, Posted by log1h_ik

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