「今世紀中に数十億人が住む地域で暑さが人体の限界を超える」と気象学者が警告
by geralt
地球温暖化対策の必要性が叫ばれるようになって久しい中、気象学者が「今世紀中に何十億人もの人々が暮らす地域で気温が人体の限界を超える」との警告を発しています。
Heatwave: think it's hot in Europe? The human body is already close to thermal limits elsewhere
https://theconversation.com/heatwave-think-its-hot-in-europe-the-human-body-is-already-close-to-thermal-limits-elsewhere-121003
「2019年6月は観測史上最も暑い6月」だったことが人工衛星を用いた地球観測計画「Copernicus Programme」により明らかになりました。さらに、フランスのパリでは2019年7月25に気温が42.6度に達し、実に72年ぶりに観測記録を更新するなど、ヨーロッパを中心に気温の上昇が取り沙汰されるようになってきています。
2019年6月は「観測史上最も暑い6月」だったことが判明 - GIGAZINE
そこで、イギリスのラフバラー大学で気象学の講師を務めるトム・マシューズ氏は、気象学の見地から人体が耐えられる暑さを探ってみたそうです。
人間の体温の平均は36度前後で、気温がこれを下回っている間は常に体表から熱が放散されますが、気温が35度に到達すると体から熱がほとんど逃げなくなります。そうなると、人体の冷却システムは発汗作用に頼ることになりますが、マシューズ氏によると発汗による冷却能力の限界が「湿球温度」35度だとのこと。
by geralt
湿球温度とは、温度計を湿らせた布で包むなどして計測した温度のことで、いわゆる普通の気温を表す乾球温度と比較して湿度を割り出す時などに用いられる温度基準です。マシューズ氏が湿球温度を採用したのは、人体は発汗により体温を調節しているため、気温だけでなく湿度の影響も受けることが理由です。
なお、日本の平均的な湿度はおおむね60%ですが、気温43度ほどで湿球温度が35度に達するので、この43度前後がマシューズ氏が提唱する「日本における人体の限界の気温」ということになります。
2019年現在では湿球温度35度に到達した地域はほとんどありませんが、中国の一部や南アジア、中東地方のペルシア湾付近といった地域ではこの温度への到達が目前に迫っており、マシューズ氏の見立てでは「今世紀中に何十億人もの人々が暮らす地域で湿球温度が35度に達する」とのこと。
by Fabio Partenheimer
エアコンに頼るのも手ですが、エアコンには膨大な電力を消費するという問題があります。ある試算では、「エアコンによるエネルギー需要は2050年までに3倍になる」とされており、世界中の火力発電所が盛んにエネルギーを生み出すようになれば地球温暖化がさらに加速するのは想像に難くありません。
そうなった場合のシナリオをマシューズ氏が同僚とシミュレーションしてみたところ、平均気温が地球温暖化が始まる前から4度以上高くなると、2017年にドミニカやプエルトリコに襲来し未曽有の被害をもたらしたハリケーン・マリア級のハリケーンが毎年発生することが分かったとのこと。
マシューズ氏は「暑さから身を守ることは今後、きれいな水を確保することと同じくらい大切な最優先課題になります」と話し、地球温暖化を回避すべく世界的な取り組みが必要になると警鐘を鳴らしています。
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