サイエンス

四肢麻痺の患者が神経移植手術により腕の機能を回復することに成功


四肢麻痺とは、外傷による神経の損傷などが原因となり、両腕と両足がともに動かせなくなってしまう症状です。この四肢麻痺の状態になると体をほとんど動かせなくなるため、患者は普通の生活がほぼ不可能になってしまいますが、新しい手術の手法により、四肢麻痺患者らが腕の機能を回復することに成功していたことが分かりました。

Expanding traditional tendon-based techniques with nerve transfers for the restoration of upper limb function in tetraplegia: a prospective case series - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(19)31143-2/fulltext

Pioneering surgery brings movement back to paralysed hands | Science | The Guardian
https://www.theguardian.com/world/2019/jul/04/pioneering-surgery-brings-movement-back-to-paralysed-hands

Nerve surgery helps people with paralysis control their hands and arms | New Scientist
https://www.newscientist.com/article/2208867-nerve-surgery-helps-people-with-paralysis-control-their-hands-and-arms/

Paralyzed man regains use of hands thanks to innovative nerve surgery - CNN
https://edition.cnn.com/2019/07/04/health/nerve-transfer-surgery-paralysis-australia-intl/index.html

新たな手術の手法により、四肢麻痺患者の腕部機能の回復に成功したのは、オーストラリアのオースティン病院に勤めるナターシャ・ファン・ゼイル氏らの医療グループです。ファン・ゼイル氏らは、平均年齢27歳の四肢麻痺患者16名に対し、神経移植と腱移植を組み合わせた手術を実施しました。その結果、13名の患者において腕の機能を回復させることに成功したとのことです。


手術と機能回復の仕組みは以下のとおりです。

1:最初に、患者の肩にある損傷していない神経を切除する。
2:損傷した神経の部位を遠回りするようにして、再接続する。
3:神経の電気信号が肘などの筋肉に伝達されるようになる。


この手法のポイントは、腱移植と組み合わせて相乗効果を得ることができたという点にあります。腱移植や神経移植はこれまでも行われてきた手術ですが、腱移植には「力は出せるようになるものの限定的な動作しかできない」という欠点があり、神経移植には「柔軟な動作が可能になるものの力はあまり出せない」という欠点がありました。今回の手法により、四肢麻痺患者は数kg程度なら持ち上げることができるほどの力を取り戻しつつ、食事や機器の操作などの繊細な動きも可能になるまでに回復することができたとのこと。

手術が成功した13名の四肢麻痺患者は、これまでほぼ寝たきりだった状態から、車いすなどを使用してある程度の日常生活を行うことができるようになりました。ファン・ゼイル氏によると「神経移植はこれまでも行われてきましたが、四肢麻痺患者の腕の機能を回復することができたのはこれが初めて」だとのことです。

以下の画像に写っている車いすに乗った男性は、オーストラリア在住のポール・ロビンソン氏です。ロビンソン氏は2015年にバイク事故で椎骨を骨折し、それ以来自宅をめったに出ることができないという生活を送っていましたが、手術により自分の手でビールを飲めるようになるまでに回復しました。


ただし、この手術には「足の機能は回復させることができない」という制限があります。また、手術の効果を期待するには、原因となった神経の損傷から6~12カ月以内に行うことが望ましいとされており、機能が十分に回復するまでには数カ月から数年以上のリハビリテーションが必要となる場合もあるとのこと。さらに、16名のうち3名の患者の機能が適切に回復しなかった理由はまだ分かっておらず、機能が回復するメカニズムについては未解明な部分も多く残されています。

ファン・ゼイル氏は今回の成果について、「我々の神経移植手術は、四肢麻痺の患者が日常生活や仕事を取り戻し、自由で自立した社会参画ができるようになるための新たな選択肢となります」と語り、さらなる研究に対する意欲をのぞかせました。

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in サイエンス, Posted by log1l_ks

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