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アニメ企画はどうやって決まるのか?ボンズの名物プロデューサーが語る「ボンズパネル」


マチ★アソビではアニメやゲームを作る製作者たちが、その舞台裏を語るイベントも多く存在し、そんなイベントのひとつがアニメ制作会社のボンズが行う「ボンズパネル」です。毎回恒例の同イベントでは、名物プロデューサーの南雅彦さんが、ボンズの近況報告と「アニメ企画はどうやって決まるのか?」について語ってくれました。

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ステージに出演者が登壇する前に、ボンズの20周年を記念して制作された映像が上映。その後ステージに登場したのは、おなじみのボンズ南雅彦さんと、TVアニメ「モブサイコ100」で主人公の影山茂夫こと「モブ」を演じた伊藤節生さんと、ヒロインの高嶺ツボミを演じた佐武宇綺さんの3人でした。南さんいわく、そこら辺を歩いているところを捕まえてきたとのこと。


ゲストの2人が声優を担当するモブサイコ100の1期が放送されたのは2016年。2期は2019年1月から4月まで放送されていました。伊藤さんは30分のレギュラーアニメ作品で主役を演じるのは初めての経験で、ほぼデビュー作といってもよい状態だったため、最初は「借りてきた猫状態だった」とのこと。佐武さんも、当時の伊藤さんの印象を「すごい緊張してるイメージがあった」と語っており、実際、アフレコ前は毎回緊張しすぎて寝れなかったと伊藤さんは明かしています。

佐武さんの演じる高嶺ツボミは、可愛いのにズバッとものを言うキャラクターで、女の子としては憧れる部分があるそうです。また、2期1話のラストにあるセリフがすごく気に入っているそうで、ここに立川譲監督の原作愛を感じたとのこと。

佐武さんはマチ★アソビで有名な「スペース☆ダンディ」でQTを演じており、現在放送中のボンズ作品である「キャロル&チューズデイ」でもポンコツロボットのイデア役を担当しています。このイデアはスペース☆ダンディのQTを思わせるキャラクターだそうですが、キャロル&チューズデイのワンシーンにQT自身もチラッと登場するとのことなので、気になる人は探してみてください。

また、モブサイコ100もOVAの制作が決定しており、ボンズのBスタジオは鋭意制作中とのこと。

TVアニメ『モブサイコ100Ⅱ』完全新作OVA制作決定!!!!!スぺシャルCM - YouTube


モブ役の伊藤さんは、「交響詩篇エウレカセブン」でボンズが大好きになったそうで、自身が所属する声優事務所のAIR AGENCYを選んだのも、代表取締役の藤原啓治さんがホランド・ノヴァクを演じていた影響があると語っています。

続いて、「モブって難しい役だよね」というお話。伊藤さんは1期のアフレコ時にはモブは演じるのが難しいキャラクターとは感じていなかったそうです。その理由は、あの演技しかできなかったためとのこと。しかし、1期のあとにさまざまな経験を積み、2期のアフレコに挑んだところ、そこで初めて「モブは難しい」と感じたそうです。現場でも伊藤さんの演技が上手くなっていることを感じるスタッフや声優さんがいた一方で、「でも、モブってこうか?」と、成長しすぎた影響でモブらしさが失われるという奇妙な事態に陥っていたことを明かしてくれました。伊藤さんはモブサイコ100の舞台にもモブ役で出演していたため、そういった芝居などを通して大きく演技が変わったとのこと。

佐武さんも2.5次元系の舞台への出演が決まっているそうで、舞台アオアシへの出演が決まっているとのこと。佐武さんは、南さんからポンコツロボットしかできないじゃダメだから、舞台を観て出て生身の芝居を頑張れと言われたことも明かしています。

#舞台#アオアシ」に出演します‼️

チケットは【5/6 まで2次先行予約販売(抽選)受付中】#佐武宇綺 で予約お願いします????????✨https://t.co/h61JOGSMPh

佐武さんの出演は、
7/13(土) 13:00/18:00
7/14(日)13:00/18:00 の4公演です‼️

青春を一緒に謳歌しましょう⭐️☺️#9nine #うっきー pic.twitter.com/X44lq32Zcz

— 佐武 ʚ♡ɞ 宇綺(9nine) (@lespros_uki)


舞台の仕事と声優の仕事は「演技」という根底部分が同じなので、出演すると自身の演技を大きく変えるきっかけとすることもできるとのこと。そんな声優陣の成長話を聞き、南さんは久々に仕事で会った際に演技が成長していたりするとうれしい、と語ってくれました。


続いてボンズ作品について。ボンズ作品では女の子のパンツなどがあまり登場しないということで、南さんは「好きなのになんでだろう?」とコメント。その理由は「そういうアニメの作り方がわからないから」だそうで、南さんが元々サンライズでガンダムやボトムズ、ダグラムといった硬派な作品の制作の中で育ってきたため、「そういうアニメ」を作るのが苦手なのだと明かしてくれました。

そんな南さん率いるボンズでは、現在70名ほどの社員が働いており、A・B・C・D・Eという5つのスタジオに分かれてアニメ制作を行っているそうです。

Aスタジオで制作しているのが、キャロル&チューズデイ。南さんいわく「しっとり見られる素敵なアニメ」とのこと。Netflixでも配信されてしているので、「是非見てね」とのこと。

TVアニメ「キャロル&チューズデイ」PV - YouTube


Bスタジオで制作されているのは、モブサイコ100。OVAの制作も決定した作品で、ゲストの伊藤さんと佐武さんが出演している作品でもあります。

Cスタジオで制作しているのは、2019年10月から第4期の放送が決定しているTVアニメ「僕のヒーローアカデミア」。

『僕のヒーローアカデミア』(ヒロアカ)TVアニメ第4期PV第1弾 - YouTube


僕のヒーローアカデミアは、今冬にも劇場版第2作目を公開予定。1作目と同様に原作の堀越耕平さん総監修のオリジナル作品となるそうなので、こちらも要チェックです。

ヒロアカ劇場版最新作、今冬公開決定!/『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE』最新作発表映像/映画ヒロアカ - YouTube


Dスタジオでは現在放送中の「文豪ストレイドッグス」の3期を制作中。

TVアニメ『文豪ストレイドッグス』第3シーズンPV - YouTube


そしてEスタジオは、交響詩篇エウレカセブンを担当しているとのこと。まだ詳細を発表することはできないものの、映画「交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション」は3部作なので、3作目も乞うご期待とのこと。

他にも、2018年に放送され第22回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞した「ひそねとまそたん」が、2019年6月にアヌシー国際アニメーション映画祭で公式上映されることが決定しており、小林寛監督と共に現地でトークイベントを行う予定とのこと。

TVアニメ『ひそねとまそたん』【HD】4月12日放送 - YouTube


ほかにも、2018年1月にボンズはProduction I.Gと共にアメリカの映像配信サービスNetflixと包括的業務提携を発表しており、これに関連するプロジェクトとして、「キック・アス」や「キングスマン」といったアメリカン・コミックスの原作者であるマーク・ミラーの、「スーパー・クルックス」という漫画をアニメシリーズとして制作することが発表されています。

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そのほか、2020年に向けて巨大プロジェクトも始動しており、TVアニメの延長にあるような作品ではなく劇場完全オリジナルの作品も計画中とのことでした。

◆アニメの企画はどうやって決まるのか?
続いてアニメの企画はどうやって決まるのかについて、過去作品を挙げるとその制作経緯を南さんが語ってくれるという流れになりました。

会場に「企画の経緯を聞きたいアニメは?」と問いかけたところ、最初に挙げられたのは2002年放送の「ラーゼフォン」でした。

ラーゼフォンはガンダムシリーズや機動警察パトレイバーのメカニックデザインを手がけた出渕裕さんが監督した作品。出渕さんは「勇者ライディーン」の世界観が好きで、それを踏襲したファンタジックなロボットものということでラーゼフォンという作品が誕生したそうです。なお、当時はオリジナルアニメブームだったため、2クールとなったそうです。

続いて挙げられたのは2003年放送開始のTVアニメ「鋼の錬金術師」。同作品はスクウェア・エニックスの「月刊少年ガンガン」に掲載された同名の漫画が原作となった作品です。企画はキャラクターデザインを担当した伊藤嘉之さんがたまたま原作漫画を「表紙買い」したら面白く、「アニメ化しませんか?」という話になったとのこと。なお、当時はまだ2巻ほどまでしか出ていなかったそうです。鋼の錬金術師は「ファンタジーだけど、痛みを持った作品」ということで、ボンズの得意とする「アクション」と「ドラマの深さ」の両方が表現できるうってつけの作品だったとのこと。当時はスクウェア・エニックスと仕事したこともなかったため、飛び込みで相談し、そこから企画はトントン拍子で進んでいったとのこと。その後、毎日放送からは「機動戦士ガンダムSEED」などと同じ土曜夕方6時のアニメ枠をもらうことができたそうです。なお、当時のボンズにはAスタジオとBスタジオの2つしかなかったそうで、TVアニメ版「鋼の錬金術師」が決まり、急遽Cスタジオを作ることとなったとのこと。

そして2009年に放送されたTVアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」について。こちらのアニメ企画は原作漫画の最終回が見えてきたタイミングでスタートしたとのこと。そして、制作が決まったタイミングでボンズは再びスタジオを増設し、Dスタジオが誕生したそうです。

続いて、2007年公開の映画「ストレンヂア」について。無印の鋼の錬金術師が大ヒットしたことで、「好きなものが作れる!」となり、ストレンヂアを制作することになったとのこと。劇場向けのオリジナル作品は当時なかなか存在しなかったそうですが、安藤真裕監督とアクションの面白い作品を作成しようということで、ファンタジーものが選ばれがちなところを思い切って「時代劇」の劇場版作品としたそうです。海外では非常に評価の高い作品で、配信版もパッケージ版も存在するので「是非見てね」とのこと。

マチ★アソビで人気の高いTVアニメ「スペース☆ダンディ」の企画は、総監督を務めた渡辺信一郎さんと深く関わっています。アニメにはいろいろなジャンルがあり、人気の高いジャンルは特に多くの競合が存在します。渡辺監督は「アニメではもっといろんなものが描けるのでは?」という考えがあったそうで、今放送しているものとは違うものを作ろうという考えがあったそうです。みんなが期待するのはカウボーイビバップのようなものであり「それは嫌」、さらには渡辺監督が担当した「坂道のアポロン」や「残響のテロル」のようなものも嫌、そんな中で生まれたのがスペース☆ダンディだそうです。渡辺監督は映像でみせるのがうまく、「音楽を使えば日本一だと思う」と南さん。そんな渡辺監督のために、自由に作品を作れる枠を作ろうということで、スペース☆ダンディはさまざまなアーティストやクリエイターとコラボレーションできるような形になったそうです。

スペース☆ダンディはマチ★アソビで何度もイベントを開催しています。

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2010年公開のTVアニメ「HEROMAN」は、マーベル・コミックの重鎮であるスタン・リーが、日本アニメとコラボした作品を作りたいということでボンズに話が来たものだそうです。「是非会いたい!」ということでロスへ赴き、打ち合わせの中でスタン・リーが子どもの頃から「ヒーローもの」「子どもとロボットもの」をやりたい語り、自身もヒーローものにこだわっている部分があり、見事作品となったとのこと。

2007年に放送されたTVアニメ「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」は、南さんではなく大藪芳広プロデューサーが「自分のオリジナルをやりたい」ということで作った作品とんこと。大藪さんは岡村天斎監督とタッグを組んで制作した「WOLF'S RAIN」の頃からオリジナル作品をやりたいと言っていたそうで、企画書をもらった南さんは方々に営業回りをしたそうです。

近年日本のアニメ作品を実写映画化するケースが増加していますが、ボンズ作品の中では「ストレンヂア」や「DARKER THAN BLACK -黒の契約者-」などオリジナルものに声がかかることが多いそうです。

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in 取材,   動画,   アニメ, Posted by logu_ii

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