サイエンス

すべての文化に共通な7つの道徳的規範とは?

by Maciej Pienczewski

戦争や紛争、あらゆる悲惨な出来事のすべてが何世紀にもわたり文明を悩ませてきました。そこから、「人間社会の相いれない文化同士は、絶えず衝突を続けるもの」という悲劇的な考えを持つようになる人も多くいます。しかし、最新の研究によると、あらゆる文化は7つの「共通の道徳的規範」によって成り立つそうです。

Is It Good to Cooperate? Testing the Theory of Morality-as-Cooperation in 60 Societies | Current Anthropology: Ahead of Print
https://www.journals.uchicago.edu/doi/full/10.1086/701478

These 7 Rules Could Be The Universal Moral Code Shared by Every Culture, Study Finds
https://www.sciencealert.com/these-7-rules-form-a-universal-moral-code-shared-by-every-culture-study-finds

世界中に存在する600以上の文化的記録および60以上の地域社会から集められた情報という、同分野の研究における最大の研究サンプルを用いた研究が行われました。データを分析した結果、道徳的価値観は人々を分断させるよりも団結させるケースの方がはるかに多いことが明らかになっています。

by Josh Gordon

研究に参加したオックスフォード大学の人類学者であるオリバー・スコット・カレー氏は、「どの地域で暮らす誰であっても、共通の道徳的な規範を共有していることが明らかになりました」と語り、文化の違いにより道徳的規範が異なるわけではないと指摘。さらに、「すべての人が協力することに賛同しており、公益を推進することは正しいことであると認識しています」と述べています。

世界中の様々な民族の社会や文化について書かれた文献を、地域・民族別に集め、すべてのページの内容を専門家が独自の分類方法を使って分析したファイル資料のHuman Relations Area Files(HRAF)を、カレー氏らの研究チームは分析しています。研究チームは「人々が協力を促進するために、人間文化における道徳的規範を進化させてきた」という理論を証明するために、HRAFに収録されている60万語以上の民族誌的記述から「7つの別々の道徳的行動規範」を調査しています。

HRAFを分析したところ、あらゆる文化において「家族を助けること」「自身の所属するグループを助けること」「互いに報いること」「勇敢であること」「尊敬すること」「公平であること」「財産権を認めること」という7つの道徳的行動規範が普遍的なものとして存在することが判明しています。

by Tom Watkins

調査によると、異なる文化で共通してみられた7つの道徳的規範は、一様に「ポジティブで道徳的に優れたもの」と考えられており、これらの行為が道徳的に悪いことと解釈されることは決してなかったとのこと。また、異文化で共通して見られた7つの道徳的規範の大部分は、ほとんどの文化で見られるものであり、世界のさまざまな地域で同じような頻度で見つけられるものであるとのこと。

論文には「我々はこれらの7つの協力行動が普遍的な道徳上のルールとして妥当な候補であると結論付けた」と記されており、さらに「協力としての道徳的行為は、人類学的にはこれまで存在しないものと考えられてきた、『ひとつにまとめられた道徳的な理論』を提供することが可能であることを示している」とも記されています。

ただし、962件の事例のうちミクロネシアのチューク諸島で1件だけ例外的な事例が存在したことも示されています。チューク諸島では「他人から公然と盗むことは、優位性を示し、他人の攻撃的な力に脅かされないことを証明する立派な行為」とされているそうで、これが7つの道徳的規範には当てはまらない例外的なものであるというわけ。

by Corey Motta

また、共同体において対立することにつながるような行動は道徳的に悪い行動であると見なされており、「親族を無視すること」「所属するグループを裏切ること」「相手に報いないこと」「臆病であること」「敬意を欠くこと」「不公平であること」「盗むこと」は不道徳なことと認識されているそうです。

世界中に存在するすべての文化・すべての社会集団がこれらの道徳的規範を同じようにランク付けしたり、優先順位付けしたりするわけではありません。しかし、ほとんどの社会で7つの道徳的規範はポジティブなものとみなされており、非常に多くの異なる社会でこの種の道徳的規範が観察されたという事実は、倫理面において道徳的普遍主義として知られるものが大いに役立つことを示しています。

カリー氏は「道徳的普遍主義者と道徳的相対主義者の間の議論は何世紀にもわたって繰り返されてきましたが、我々はいくつかの新しい答えをもっています。つまり、世界中の人々が同様の社会問題に直面し、それらを解決するために同様の道徳的規範を使用している、ということです」と語り、道徳的普遍性の存在を支持しています。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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