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AIを用いてネットニュースの信頼性や政治的な偏りを判断するという研究報告


インターネットの世界的な普及は、圧倒的な量とスピードの情報伝達をもたらしました。それと同時に、情報の信ぴょう性が強く問われるようになり、特にソーシャルメディアでは、偏った政治活動や自己利益を目的としたフェイクニュースが多く見られるようになりました。そんな中、マサチューセッツ工科大学(MIT)とカタール大学が、「情報ソースを精査することでフェイクニュースであるかどうかを見極めるAI」を開発していることを明らかにしました。

Predicting Factuality of Reporting and Bias of News Media Sources
(PDFファイル)https://arxiv.org/pdf/1810.01765.pdf


Detecting fake news at its source | MIT News
http://news.mit.edu/2018/mit-csail-machine-learning-system-detects-fake-news-from-source-1004


ソーシャルメディアでは、フェイクニュースや差別・中傷、偏った政治広告が多く展開されています。Facebookは、SNSの安全性を強化する作業に取り組むため、既に1万人以上のオペレーターを投入しており、2018年末までには2万人まで増やすと報じられています。また、YouTube・Twitterも同様に大量の人員で対策に当たっているとのこと。

MITのコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)とカタール大学のカタールコンピューティング研究所(QCRI)の研究者は、個々の主張だけではなく「ニュースソース自体に焦点を当てること」がフェイクニュース検出の最善のアプローチであると考え、機械学習を使用して「ソースの正確性」と「政治的中立性」を判断するシステムを開発しています。

by freie-presse.net

研究チームは、2000以上のメディアソースの偏向を人力でチェックしている「Media Bias/Fact Check(MBFC)」から取得したデータを機械学習のデータセットに登録し、AIがMBFCと同じようにニュースサイトの信頼性と政治的偏りをチェックできるようプログラミングしました。

AIは新しいニュースの信頼性を高・中・低の三段階で評価し、同時に政治的偏りを左翼・右翼・中立の3種類に分類することができます。実際に新しいニュースが報道される度にAIでチェックしてみたところ、ニュースの信頼性は65%、政治的偏りは70%ほどの精度で判断することができたそうです。


AIによるニュースの精査を通じて、フェイクニュースは主観的で感情的な言葉を多用する傾向にあることが判明しました。また、政治的偏りの面では、特に左翼に偏ったものは他より「危害/不安」や「公正/相互利益」といった言葉が頻出する傾向にあったと報告されています。

ACRIの研究者であるプレスラフ・ナコフ氏によると、このAIシステムは「極端」「陰謀論」などの単語を検出するだけでなく、ページソースにWikipediaなどへのURLテキストが存在しているかどうかもチェックしているとのこと。複雑なサブディレクトリや特殊文字を使うURLのニュースソースは信頼性が低いと見なしていたそうです。

研究チームはAIの開発と同時に、1000を超えるニュースソースの信頼性と偏りを評価したオープンソースのデータセットを作成したとのこと。また、「英語で学習されたAIが他の言語にも適用できるのか」「地域固有の偏見を探ることができるか」も検討される予定にあると研究チームは述べています。

by Cody Williams

ナコフ氏によるとAIはまだ開発途上であり、精度が向上してもAI単体で利用するのではなく、あくまでも従来のフェイクニュースチェックと組み合わせて使用することが最も効果的だとこと。「ニュースをさまざまな人に伝える方法について考えることは実に興味深いものがあります。これらのツールは、人々が問題について考えることを手助けし、今までにはなかった視点を探求するのに役立ちます」とナコフ氏はコメントしています。

CSAILの博士研究員で、論文の主任筆者であるラミー・バリー氏は「およそ150件の記事があれば、そのニュースソースが信頼できるかどうかを検出できます。記事を公開するウェブサイトだけではなく、ニュースソースを吟味することで、記事が拡散される前に新しいフェイクニュースが生まれることを防ぐことができます」と語っています。

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in ソフトウェア, Posted by log1i_yk

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