「VRを利用すれば注射嫌いを克服できるかもしれない」という研究結果
子どもに仮想現実(VR)を体感させながら注射をすることで、子どもたちが感じる痛みや恐怖を和らげて、注射が嫌いな子どもでも安心して予防接種を受けられるという研究結果が報告されています。
FAU | Virtual Reality Headset Reduces Children’s Fear of Needles
http://www.fau.edu/newsdesk/articles/virtual-reality-study.php
子どもが健康に生活を送るためには、水痘・麻疹・インフルエンザなど、さまざまなウイルスに対する予防接種をきちんと受けていることが重要です。しかし、中には注射の針を怖がり、大声を出して泣きわめいてしまう子も。もし注射を嫌がって予防接種を受けなければ、本来感染を防げるはずだった病気にもかかってしまい、子どもの命に関わる可能性もあります。
フロリダ・アトランティック大学医学部教授を務める小児科医のチャド・ルドニック氏は、VR空間で子どもの注意をひきつけている間に注射をすれば恐怖も和らぐのではないかと考え、8歳の子どもにVRヘッドセットをかぶせて注射を行いました。ルドニック氏の読み通り、子どもはおじけづくことなく注射を受け、母親は「一体どうなってるの?」と驚いたそうです。
この結果を受けて、ルドニック氏は医学部の学生と協力し、小児患者の予防接種に関連する恐怖や痛みを軽減する手法としてVRのヘッドセットを使用することの実現可能性・効率性・有用性をテストしました。ルドニック氏は、スマートフォン挿入型のVRヘッドセットを用意し、6歳から17歳までの被験者が30秒のVRムービーを視聴している間に予防接種を済ませました。それと同時に、顔の表情から恐怖と痛みのレベルを測定し、VRヘッドセットを使った時と使っていない時でどれだけ恐怖と痛みが変化しているのかを調査しました。また、被験者の両親に対しても、自分の子どもの恐怖や痛みが変化しているように見えるか、アンケート調査を行いました。
その結果、小児科での被験者の94.1%で、VRヘッドセットの使用による恐怖と痛みの減少が確認できました。また、両親からのアンケートでも、VRヘッドセットの使用によって恐怖や痛みが緩和されたように見えたという意見がほとんどだったとのこと。さらに、次回の予防接種に再びVRヘッドセットを使いたいと希望した患者が9割を超えたそうです。
ルドニック氏がテストに用いたVRヘッドセットは50ドル(約5500円)、スマートフォンのアプリは1ドル(約110円)以下のもの。VRヘッドセットの使用は、子どもたちに予防接種を積極的に受けてもらうための、安価で簡単に実装できる非薬理的な手段として期待できます。ルドニック氏は「子どもが注射を嫌がる割合を減少させ、結果として定期的に予防接種を受ける子どもの割合を高めるためにも、小児科医がVRヘッドセットを使用するメリットを検討する価値はあります。この方法によって、予防接種可能なウイルスの罹患率や死亡率を潜在的に下げることができるようになるかもしれません」と期待しています。
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