アニメーター出身ではない「非作画系監督」はどうやってアニメを演出するのか?『楽園追放』水島精二×『デデデデ』黒川智之両監督によるトークイベント in マチ★アソビ Vol.30

2026年11月13日に公開される『楽園追放 心のレゾナンス』の水島精二監督と、劇場アニメ『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』や『ぼくらのよあけ』で知られる黒川智之監督による「非作画系監督はどう演出するのかトークショー」が、2026年5月16日のマチ★アソビ Vol.30で開催されたので、そのレポートをお届けします。
非作画系監督はどう演出するのかトークショー(水島精二 x 黒川智之)
https://www.machiasobi.com/event/580/
トークショーが開催されたのはufotable CINEMAのシネマ2です。

水島監督は撮影や制作進行を経て、一度はゲーム業界に転身したものの再びアニメ業界に戻り、『影技 -SHADOW SKILL-』『ルパン三世 ワルサーP38』などの演出を経て、『ジェネレイターガウル』『地球防衛企業ダイ・ガード』などで監督を務めました。水島監督いわく、「監督になれたのは非常に運が良かった」とのこと。

黒川監督は学生時代に実写映画の監督を志望していたものの、アニメ製作会社から業界に入り、制作進行を経て演出家へと転身。その後、比較的早い段階である入社5〜6年目で、OVA『MURDER PRINCESS』監督デビューを果たしました。両監督の接点は黒川監督がフリーランスになる転機に吉祥寺の劇場で偶然出会い、水島監督に挨拶をしたことがきっかけというエピソードも明かされました。

アニメの監督には、アニメーター出身で絵を描くのが得意なタイプの監督と、制作や撮影から演出に進んだ非作画系監督に分類されるとのこと。昔は非作画系の監督が少なくなく、水島監督と黒川監督も後者の非作画系監督に当たります。
また、アニメーター出身ではなくても「達者な絵を描く」ことに定評がある監督もいて、「独特で非常に上手な絵を描く非作画系監督」の一例として2026年5月に亡くなられた佐藤竜雄監督の名前が挙げられました。佐藤竜雄監督は自身のX(旧Twittr)アカウントで絵コンテの一部を公開しています。
とりあえずまちカド10話で気に入っている一連のコンテの一部だけあげて寝ます。では! pic.twitter.com/B1JX3cAlCZ
— 佐藤竜雄 (@seitenhyohyo) January 6, 2020
さらに近年はアニメーター出身ではないものの、美術大学出身で絵が非常にうまい監督も多いそうです。
話題は「絵を描かない非作画系の監督はどうやって芝居をアプローチしているのか?」という問いについて。例えばアニメーター出身の作画系監督は絵コンテで「ト書き」を省く傾向があるかも、と両監督は指摘。ト書きとは絵コンテでキャラクターの動作などを言葉で記した文字情報ですが、作画系出身の演出家は絵そのもので状況を説明できるため、ト書きを省略してしまうことも多いそうです。
しかし、どれだけ絵を描いてもアニメーターやプロデューサーなど見る人によって解釈が異なってしまう可能性はゼロではありません。文字情報であるト書きをしっかりと書き込むことは、誰が読んでもイメージの齟齬(そご)が起きないようにコントロールする重要な役割を担っているというわけ。

一方で非作画系監督はアニメーター出身ではありませんが、当然ながら自分の描いた絵がそのまま最終画面になるわけではないので、絵はあくまでイメージを伝えるものと割り切った上で、ト書きをしっかり書くそうです。両監督は「絵がきれいだからといって、コンテとして面白いとは限らない」とコメントしています。
例えば絵コンテに描かれた表面的な表情だけでは、「顔では笑っているけれど、心の中では泣いている」というような複雑な感情を持ったシーンだと、そのキャラクターの本当の心理状態を伝えきれない場合があります。
ここでト書きでの指示が省かれてしまうと、素直なアニメーターは表面上の「笑っている顔」の心情のまま作画を進めてしまうといった事故が起こり得ます。こうした事態を防ぐためにも、「本当の心理はこちら」とト書きで明確に補足しておくことは演出家にとって狙い通りの芝居を作ってもらうために必要不可欠といえます。
水島監督によれば、テレビアニメ『シャーマンキング』で作画出身の演出がコンテを担当した際にト書きが省かれていたため、水島監督自身があとからト書きを書き足したこともあったそうです。両監督によれば、「いい絵コンテ」について、「誰が読んでも解釈やイメージのズレが生じず、明確な芝居のプランが提示されている演出台本であること」だとのこと。
そして、非作画系の監督は絵そのもので勝負できないからこそ、実写的なアプローチや細かいテクニックを取り入れているのがポイントだと水島監督や黒川監督は述べました。

例えば、アニメにおける口パクに演出のテクニックがあるそうです。通常、口パクは「開き口・中口・閉じ口」の3枚の絵を組み合わせる手法が基本となっていますが、セリフが終わった瞬間に口を閉じるか、少し余韻を残すかなど、音声と口が閉じるタイミングを1コマ単位で細かく微調整することで、キャラクターの感情や喋りのニュアンスを表現することができます。
水島監督が総監督を務めたアニメ『D4DJ』では、アフレコ時に役者や音響スタッフがタイミングを理解できるようにするため、カッティングの現場で急遽絵を描き足してコマ数を調整する作業が行われ、1話の編集に最大で8時間かかったこともあったそうです。
しかしデジタル化が進んだ今では、映像を納品状態にする「V編」で担当者が自動的に綺麗なタイミングに整理してくれるようになりました。このデジタル化によって作業は効率化された反面、現場では機械的に口をパクパクさせるだけの状態に陥りやすくなり、結果として若手の演出が口パクのタイミングにこだわるスキルを身につける機会が失われているという課題も指摘されていました。
当日のイベントでは、会場の参加者からの質疑応答の時間も設けられました。

厳しく指導できない昨今の風潮が面白い作品作りに悪影響を及ぼすのではないかという質問に対しては、「指導に対して過敏に反応してしまう人はクリエイティビティよりも働くことに重きを置いていて、クリエイターとしてはいいものを出さないケースが多いので、クリエイティブの根幹を担う人材はそもそも熱意があるため、そこまで心配しなくていいかも」とのこと。また、近年はネット系のクリエイターが少人数で立ち上げてバックアップを受けるような新しい制作スタイルも生まれており、時代に合った面白い作品は絶えず出てくると両監督は答えました。
一方で、何度伝えても分からない場合は割り切るしかないというシビアな現実や、コロナ禍を経て人間のメンタルが弱くなっているという指摘もありました。
また、コンテの線の描き方については、「きれいな一本線で描くよりも、あいまいな迷い線が残っている方が、絵コンテを見るアニメーターに想像の余地を与え、解釈の幅を生む効果がある」とのこと。ただし、やはり迷い線は意図的というより急いで描いた結果でもあるそうで、水島監督は『楽園追放 心のレゾナンス』制作に当たって過去のコンテを見直した際、「この時どういうつもりで描いたんだっけ」と忘れて苦労したことを明らかにし、会場の笑いを誘いました。
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in 取材, アニメ, Posted by log1i_yk
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