サイエンス

LSDが自分と他人の境界線をあいまいにする仕組みが明らかに、統合失調症の治療の一歩

by Matias carcamo

幻覚剤の一つである「LSD」の効果には統合失調症の症状と同じく「自意識が崩壊し自分と他人の境界があいまいになる」というものがあります。LSDが脳のどの受容体に作用するのかを特定できれば、統合失調症の治療に役立つのは?ということで、LSDを投与した被験者の自意識への影響が薬でどのように阻害されるのかを、研究者が調査しました。

Role of the 5-HT2A receptor in self- and other-initiated social interaction in LSD-induced states — a pharmacological fMRI study | Journal of Neuroscience
http://www.jneurosci.org/content/early/2018/03/19/JNEUROSCI.1939-17.2018

Scientists Discover That LSD Blurs The Line Between You And Others : Health : Tech Times
http://www.techtimes.com/articles/223276/20180319/scientists-discover-that-lsd-blurs-the-line-between-you-and-others.htm

Scientists Made a Startling Discovery About Schizophrenia After Dosing People with LSD
https://www.livescience.com/62059-schizophrenia-lsd-sense-self.html

LSD blurs boundary between self and other | EurekAlert! Science News
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2018-03/sfn-lbb031318.php


統合失調症やうつ病といった精神疾患には「自意識」が大きく関わっています。例えば統合失調症の患者は自分の意識を追うことが難しくなり、うつ病の場合は自己中心な思考パターンに取り付かれて「自分」を反すうするようになります。

LSDを服用すると、統合失調症のような精神疾患と同じく自己と他人の境界線があいまいになることから、スイスのチューリッヒ精神医学大学病院の心理学者であるKatrin Preller氏らはLSDが人の自意識をどのように破壊するのかを調査しました。LSDを研究目的で被験者に投与することは世界的に制限されているのですが、スイスは研究目的のLSD投与が認められている数少ない国の1つとなっています。


研究では精神疾患を患っていない男性18人、女性6人の計24人を被験者とし、「LSD服用時」「LSDを服用していない時」「LSDと共にLSDの効果を阻害するケタンセリンを服用した時」の3パターンにおいて被験者の脳をMRIスキャンしました。MRIスキャンを行う際、被験者にはヘッドセットを通じてゲーム画面が表示され、まず「コンピューターで作られたアバターとアイコンタクトを行う」というタスクが課されます。そして1つ目のタスクを完了した後、被験者は次に「アバターが見ている空間に目線を反らす」という作業を行います。統合失調症患者のような自意識が崩壊している人は上記タスクを行えないそうです。

ケタンセリンはLSDが「5-HT2」と呼ばれるセロトニン受容体に作用することを阻害する薬です。動物を対象とした過去の研究からLSDが自意識に影響する仕組みは5-HT2がカギとなるのではと考えられていました。故意にLSDによる5-HT2への影響を阻害することで、LSDの効果を多少は減らせるのではないか、というのが今回の研究で調べられた点です。

しかし、研究で明らかになったのは、「多少」以上のものでした。ケタンセリンで5-HT2への影響を阻害されたグループは、プラセボグループと同程度にしかLSDの効果が得られなかったとのこと。

研究を行ったPreller氏は「LSDは5-HT2だけでなく、脳にある多様な受容体と相互作用しているので、このような結果は驚きでした」と語っています。ただし、LSDの効果が最も弱まったのは、ケタンセリンの初回服用時だったといいます。

by GoaShape

今回の研究によって5-HT2が自意識を制御するのに大きな役割を持っていることが暫定的にではあるものの結論づけられており、Preller氏らは次なる研究において、精神疾患を持つ患者に対して5-HT2をターゲットにする薬を投与することで症状が和らぐかどうかを調べるとしています。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log

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