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AR機器の性能を飛躍的に向上させAppleも内製に乗り出す「マイクロLEDディスプレイ」の実用化が近づく


OLED(有機ELディスプレイ)を超える次世代ディスプレイ技術として期待されているマイクロLED(mLED)が、実用化まで間もなくの段階に進んでいます。マイクロLEDは有機ELディスプレイよりも輝度・彩度・電力効率の面で優れており、スマートフォンのバッテリー消費を抑えて長時間使用を可能にするほか、VR・ARデバイス用の高精細ディスプレイとしての活用が期待されています。

Coming Soon to a Wrist Near You: MicroLED Displays - IEEE Spectrum
https://spectrum.ieee.org/semiconductors/optoelectronics/coming-soon-to-a-wrist-near-you-microled-displays

2018年1月、イギリスの半導体デバイスメーカーであるPlessey Semiconductorsが2018年前半に業界で初めてとなるモノリシックマイクロLEDディスプレイの出荷を行うための準備を進めていることを発表しました。マイクロLEDは大きさが0.1mm以下という微小なLEDを電子基板上に直接形成し、ディスプレイの画素一つ一つとして光らせるというもので、従来の液晶パネルとは比較にならないほど高い性能を持つと評価される有機ELディスプレイをさらに上回る性能を発揮するといわれています。

次世代ディスプレイ用技術の最有力候補として期待されるマイクロLEDディスプレイを世界で初めて本格的に出荷するのはPlessey Semiconductorsということになりそうですが、その後ろにはさまざまなメーカーが続き、さらにはAppleやFacebookといったIT大手も猛烈な勢いで追いかけているとみられています。

AppleやFacebookがマイクロLEDディスプレイに注目する理由は、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)の分野で大きな進歩をもたらすことが期待されている点にあります。マイクロLEDディスプレイには「高画質」「高精細」「高効率」という性能に加えて「高輝度」という特徴を備えています。自発光型ディスプレイとして高い輝度を誇る有機ELディスプレイの場合、およそ1000nit程度の明るさが最大クラスとされていますが、マイクロLEDディスプレイはそれをはるかに上回る10万nitを実現し、将来的には100万nitクラスの高輝度の実現が期待されています。


この超高輝度がいかされるのが、特にAR技術の分野です。透明のガラスに仮想現実の映像を投影して現実と仮想をミックスさせようとすると、自然光の強さに負けない明るい光を投影する必要があります。これまでの技術では、太陽や電灯などの光の強さに負けないほど強い光りを投影することは難しかったのですが、nit数で2桁~3桁も違う高輝度性を持つマイクロLEDディスプレイはこの問題をクリアできると期待されています。


フランスのスタートアップで、ナノワイヤーベースのマイクロLEDディスプレイの開発を進めているAlediaのCEO、Giorgio Anania氏は「これはテクノロジーにおける新しい世代へのシフトということになるでしょう」と述べています。Alediaは2018年1月にベンチャーキャピタルから3700万ドル(約40億円)の出資を受けています。また、同様の技術でマイクロLEDディスプレイの開発を進めるスウェーデンのGloはGoogle主導の下で1500万ドル(約16億円)の出資を受けています。

Appleはこの分野に、「開発企業を買収する」という手法で参入を果たしています。同社は2014年にマイクロLEDディスプレイ開発スタートアップのLuxVueを買収しており、その後の特許出願状況からは開発規模の拡大が図られていることが伺えるとのこと。また、Oculus VRを傘下に収めているFacebookもマイクロLEDディスプレイ業界に手を伸ばしており、2016年に開発企業のInfiniLEDを買収しています。


マイクロLEDディスプレイの高輝度性は前述のとおりですが、「高効率性」も従来の技術とは比較にならないほど高くなっています。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの電力効率性は「5~7%」程度というのが一般的な値ですが、マイクロLEDディスプレイに使われる窒化ガリウムLEDの効率はなんと70%にも達するとのこと。この効率性は素子の大きさに左右されるため、マイクロLEDディスプレイで使われる素子ほどの大きさにまでサイズダウンすると効率性は下がります。それでも最終的な効率性は「15%」ほどになるとも見られており、これは技術的にみて「革新的」と呼ぶにふさわしいレベルにあります。

まだ開発が進められているマイクロLEDディスプレイは、製造時の不良率が高いために歩留まりが悪く、まだまだコストが高止まりしている点が実用化に向けた大きな課題の一つになっているとのこと。しかし、有機ELディスプレイが徐々にスマートフォンの世界に浸透し始めたように、マイクロLEDディスプレイがスマートフォンやスマートウォッチ、ARデバイスの分野に入り始めるのはそれほど遠い未来ではないとみられています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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