失われつつあるゲームの歴史を保存する運動に取り組む非営利団体「Video Game History Foundation」とは具体的にどんな活動をしているのか?


1930年頃まで製作された映画の大部分は戦争や火災によって失われてしまい、その大部分が今はもう見られなくなったことが、第二次世界大戦以前の映画史の研究が思うように進まない原因ともなっています。1912年に発明された「エル・アヘドレシスタ」から数えると、コンピューターゲームも100年以上の歴史があります。そこで、学術的・歴史的に価値のあるゲームやその資料を失われないよう保存する目的で設立された非営利団体が「Video Game History Foundation」です。ゲーム関連メディアであるWaypointによるVideo Game History Foundation設立者への取材ムービーが、Viceのチャンネルで公開されています。

Meet the Man Trying to Save Lost Video Games - YouTube


「Video Game History Foundation」を設立したFrank Cifaldiさんです。


Cifaldiさんの幼少期には、北米版ファミリーコンピュータであるNintendo Entertainment System(NES)が全米でブームとなっていて、皆が夢中になって遊んでいたとのこと。


1998年になって、Cifaldiさんは自分のコンピューターを手に入れ、インターネットにアクセスするようになりました。ネットにはCifaldiさんと同様にNESを夢中になって遊んでいた人がたくさんいて、中にはゲームソフトからデータだけ抜き出して、カセットは安全な場所に保管しているような人もいたとのこと。


人びとの記憶から消えつつあるゲームについても、当時発行されたゲーム雑誌を見ると、ゲームが発売された国や時代をはっきりと理解できるとCifaldiさんは述べています。


重要なのは雑誌だけではありません。例えば「ロックマン」の日本版ポスターや……


「パンチアウト」の雑誌広告。Cifaldiさんは、こういったゲーム関係のアイテムを大量に保管しているコレクターのコミュニティーにも参加しているとのこと。


ムービーの中でCifaldiさんが訪れたのは、Cifaldiさんの古い友人であるMike Mikaさんです。Mikaさんは「失われつつあるゲームやその資料を積極的に保存していこう」というCifaldiさんの考えに早くから賛同してくれていた1人です。


案内された地下室に下りると……


その中にはゲーム関係のアイテムがぎっしり。


壁におびただしい数のゲームコントローラーがつり下げられているほか、「Street Fighter II」の北米版アーケードマシンなどもずらりと並んでいます。


棚にはAtari 2600など40年以上前のゲームから……


PlayStationやDreamcastなど比較的最近のゲームのタイトルや日本語版のソフトも見られます。


「これは埋め立て地から出てきたものだよ」と言いながらMikaさんが取り出した袋に入っているゲームは、1982年に起こった「アタリショック」の象徴とも言えるAtari 2600専用ソフト「E.T.」です。「これは本当に埋め立て地の臭いがするのかい?」というCifaldiさんの問いに対して……


Mikaさんは「そうだよ、2週間は鼻から臭いが取れなかったね」と言いながらE.T.のカセットが入った袋から距離を取ります。しかしMikaさんの忠告に構わずCifaldiさんは思いっきり袋の中の臭いを嗅ぎます。


「ああ……ぼくは気にならないけど、カビ臭いね」とCifaldiさんは真剣な面持ちで臭いの感想を述べます。


「ゲームやゲームに関することを徹底的に研究するFrank(Cifaldiさん)の姿勢は素晴らしいものです。私たちの行っているVideo Game History Foundationによるゲームの保存活動が進めば、ゲームについてのさまざまな問題が解決するでしょうし、私にとっても大きな意義があります」とMikaさんは語ります。


Cefaldiさんはゲーム雑誌や企画書などを2003年から集めています。これらのゲーム史研究に価値のある資料は、コレクターからはほとんど見向きもされていないとのこと。熱心なコレクターの中には雑誌を集めている人はいますが、Cifaldiさんのように研究用の資料として収集している人はほとんどいません。


Cefaldiさんの熱心な研究によって、歴史から消えてしまいそうなゲームが再発見されたこともあります。例えばこの「Where in North Dakota Is Carmen Sandiego?」というApple II向けのゲームは、教育番組「Where on Earth Is Carmen Sandiego?」(邦題・怪盗カルメンサンディエゴ)をビデオゲームにした「Where in Time Is Carmen Sandiego?」のノースダコタ版で、現存するゲームは世界に3つしかありません。


ゲーム画面はこんな感じ。「Where in North Dakota Is Carmen Sandiego?」はノースダコタ州成立100周年を記念して開発された学校教育用ソフトで、ほとんど市販されていなかったこともあって、当時遊んだことを覚えている人がいる程度で、最近までほとんど知られていませんでした。


そこで、Cifaldiさんはすぐさまノースダコタへ飛び、ゲームだけではなく、写真・開発会社の企画書・ゲームとセットになっていた「ノースダコタ年鑑」などの教材も徹底的に探し回りました。そして、ついにノースダコタのゲーム屋で通販用の在庫として残っていた「Where in North Dakota Is Carmen Sandiego?」の3つを確保できたとのこと。


入手したフロッピーディスクから複製されたコピーは、オンラインでアクセスが可能な状態に保存されました。そして、Cifaldiさんは手に入れた3本の「Where in North Dakota Is Carmen Sandiego?」のうち未開封品を手元に保存しているというわけです。「Where in North Dakota Is Carmen Sandiego?」の1件は、Video Game History Foundationの活動によって歴史から消えてしまいそうなゲームを救い上げた例の1つと言えます。


なぜゲームに関する歴史的資料を集めなければならないのかという問いに対して、「スーパーマリオブラザーズ」がなぜ画期的で素晴らしいゲームなのかは、発売された当時の状況を知らなければ評価できない、とCifaldiさんは主張します。


当時のゲーム雑誌を読んで、当時の人たちがどういう意見を言っていたのかを見ることで、そのゲームが発売された当時の時代背景や世論が分かります。


これは1978年の最新ゲーム機だったAtari 2600の雑誌広告です。「今夜はテレビを見てはダメ。テレビで遊ぼう!」というコピーから、40年前には既に「テレビゲームで遊ぶ」という概念が一般的に理解されていたことが分かります。


「ゲームは芸術的な表現手段でもあり、ただ遊ぶだけではなく文化的遺産の一部として研究できる対象としても捉えることができます。『企業はどうやってゲームを売ってきたのか』『ゲームが与える影響というのは一体どんなものか』を私たちは知る必要があります」とCifaldiさんは語ります。


Video Game History Foundationの活動は、古くからあるビデオゲーム史を伝えるためにゲームの資料を確保すること、そして誰もが資料にアクセスできるようにすることです。


Video Game History Foundationは非営利組織のため、ボランティア活動で運営されており、Cifaldiさん自身ももちろん給料はなく、ゲーム文化の発展に寄与するためにフルタイムで運営に関わっているとのこと。「お金が欲しいから働いているのではなく、今にも消えてしまいそうなゲームを救い上げて、ゲームの歴史を守っていく務めが非常に重要だと思うから自分は活動を続けているのだ」というCifaldiさんのコメントでムービーは終わります。

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