なぜ機内食はまずく感じるのか?
by Johan Larsson
飛行機内で提供される機内食やお菓子を食べると、普段とは異なった味に感じられることがあります。なぜ上空では人間の味覚が変わってしまうのか、また、航空会社はどのような対策を講じているのかを、BBCが明らかにしています。
BBC - Future - Why does food taste different on planes?
http://www.bbc.com/future/story/20150112-why-in-flight-food-tastes-weird
飛行機内で提供される機内食を味気なく感じるのは、「機体が高度3万フィート(約9000メートル)の上空まで上がっていくにつれて、味覚と嗅覚に変化が起こり、気圧が保たれた機内において塩味と甘味の知覚能力が落ちてしまうせいです」と、アメリカン・エアラインズで機内食の総括を担当しているラス・ブラウン氏は語ります。上空で味覚が変化する原因について、オックスフォード大学で実験心理学を研究するチャールズ・スペンス教授は「湿度の低下」「気圧の低下」「周囲の音」の3つの要因が関係している、といいます。
飛行機が離陸し高度を上げるにつれて気圧が下がり、機内の湿度も徐々に低くなっていきます。高度約9000メートル付近では湿度が12%以下と、砂漠よりも乾燥した状態になるそうです。2010年に行われた調査によると、上空では甘味と塩味を感じる舌の器官が地上と比べて30%ほど鈍くなるとのこと。酸味・苦味・辛味を感じる器官は気圧や湿気の低下による影響をほとんど受けないそうですが、人間は「料理の匂い」からも味を感じ取っていて、乾燥した機内では匂いを知覚する鼻の粘膜がうまく働かず、普段よりも食べ物を味気なく感じるようです。
by M Glasgow
そのため、航空会社では機内食に塩やスパイスを多めに加えることで、料理をよりおいしく食べてもらえるように工夫しています。ブラウン氏は「適切な量の調味料を足すことが風味豊かな機内食を提供する鍵となります」と語ります。また、ユナイテッド航空の料理長であるジェリー・マクローリン氏によれば「刺激的なスパイスを使うことで機内食にコクを出している」とのこと。大音量のBGMを聞きながら食事をすると塩味や甘味を薄く感じるという研究に基づき、機内では飛行機のエンジン音が断続的に聞こえてくることを考慮して、料理の塩味を濃く仕上げているそうです。
by Kārlis Dambrāns
さらに、「気圧・湿度の低下」と「音の影響」に加えて、「機内食の調理法」にも原因があるとのこと。多くの航空会社は、地上で調理後に冷凍保存した機内食を、上空で熱対流式オーブンを使って温めます。熱風によって料理を温める方式が主流なのは、電子レンジ調理や直火調理は禁止されているためで、これにより地上で提供される料理と異なる味に変化してしまうとのこと。
by Christopher Doyle
なお、航空会社各社は、味わい深い料理を上空でも楽しめるように、機内の環境を再現した実験施設で日々機内食を開発しているとのこと。一例として下記のような工夫を行っているそうです。
・真空調理法など新しい調理方法の活用
・イワシ、海草、キノコ、トマト、しょうゆなど、気圧の変化に影響を受けない「うま味」を含む料理を考案
・フルーティーで酸味の薄いワインの提供
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