メモ

「コレクター」が人類にとって重要な存在である理由とは?

by Sergio Busquets

生き物の頭蓋骨からお菓子「ペッツ」の容器まで、世界にはさまざまなものを収集する人がいます。「コレクター」と呼ばれる彼らは、なかなか人の理解を得られなかったり、好奇の目で見られたりすることもありますが、一方で、人類にとって非常に重要な役割を担っているようです。

Why the world needs collectors | Wellcome Collection Blog
http://blog.wellcomecollection.org/2015/02/18/why-the-world-needs-collectors/

作家ジョン・ファウルズが1963年に発表した「コレクター」という作品の中で、チョウの採集を趣味とする孤独な男性が好きな女性を誘拐し、コレクションに加えるという描写がありました。「コレクター」という言葉を聞き、上記のような姿や、棚にびっしりと収集品を並べている姿を想像する人も多いはず。しかし、これらのコレクター像は正しいものではありません。

子どもはある時期になると、自分の周囲の世界を理解しするために物を収集しだしますが、実はコレクターが行っているのはこれと同じこと。好奇心にかき立てられアイテムを収集するコレクターは「好奇心」の象徴であり、同時に、多くの人の好奇心を「促進する」機能を持つファシリテーターでもあると考えられています。つまり、コレクターは世界に埋もれていた何らかのアイテムを、一般の人々でもアクセスしやすい状態にする役目を持っているのです。


例えば、「錠剤」の概念を作りだし、膨大な財を築き上げたヘンリー・ウェルカムは医療機器や医療現場を再現したミニチュアなど、医療に関わるさまざまなものをコレクションしていました。彼のコレクションを見れば、我々は「古代ローマの助産婦がどのようなことをしていたのか」「古代エジプトで流行した病は何か」「16世紀の外科手術の様子はどんなものか」など多くのことを理解できます。個人が好奇心の赴くままに集めたものが、時代を経て、人々が歴史を知る上での重要なアイテムになったのです。

また、生物学者のカール・フォン・リンネがコレクションしていた植物の標本は、彼が生物の分類法を科学会に普及させるのに活躍したとのこと。リンネが普及させた二名法という分類法は、現在でも使われています。


コレクターが集めるのは物理的なアイテムにとどまりません。17世紀に紳士用装身具の販売を行っていたジョン・グラントは、当時ペストが流行していたロンドンで、教会の資料を基に死亡表を分析して、一見偶然に見える人口減少に規則性があることを明らかにしました。「情報」の収集家であったグラントは、人口統計学の基礎を築いたと考えられており、後にナイチンゲールは人口統計学を用いた鶏頭図を使って兵士たちの死亡原因を示しました。

しかし、コレクターの中にはアイテムを一般公開しない人もおり、人々の目に触れないコレクションも世界には多く存在します。フランスの陶芸家ベルナール・パリッシーは「学と好奇心があり、自分のコレクションから得る物がある」と判断した来訪者にだけコレクションを公開していたと言われています。医療グッズを収集したウェルカムもまた、一般大衆に向けてコレクションを公開することに前向きではなかったのですが、彼の死後、解剖博物館にコレクションが手渡され、日の目を見ることになりました。


コレクションを公開するかどうかの違いはあれど、コレクターが行う収集行為は知識の共有にとって非常に重要なもの。人からは奇妙に写ったりもしますが、今「くだらないものを集めている」ように見える行動も、未来の人類の財産になる可能性を秘めているのです。

by Juliana Coutinho

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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