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戦争中に生死のかかった塹壕の中で兵士が作り続けてきた「トレンチアート」とは何か?

by The U.S. Army

銃弾・榴散弾・骨・毛髪など、戦争の残骸を使って戦いの最中にある兵士たちが作り出す人工物が「トレンチ・アート」です。時に必要に迫られ、時に苦しみから生みだされたトレンチ・アートは「過去の戦争を思い出させるもの」という意味合いを持ちつつも、実用的で美しいものも多く、現代でもファンが多くいます。トレンチアートはなぜ生まれて、どのような歴史をたどってきたのか、知られざるトレンチアートの世界をMediumがまとめています。

Trench Art Is Hauntingly Beautiful — War Is Boring — Medium
https://medium.com/war-is-boring/the-haunting-beauty-of-trench-art-c8f0966378d8

第一次世界大戦の西部戦線では約4年間に渡って塹壕戦が行われ、兵士たちは何カ月も塹壕の中で過ごす事になりましたが、その中で兵士たちが暇つぶしとして手元にあるもので作ったのがトレンチ(塹壕)アートです。弾丸の殻やドッグタグ・金属片などからコップ・サイコロ・肖像画を作成し、小さな弾丸はペンに、壊れたナイフはレター・オープナーになるなど、実用的なものが多く作られました。

by Christian Senger

これがトレンチアート。実用的な物から装飾品まであります。


薬きょうでつくられたキリスト像。


また、兵士だけでなく、民間人も戦場に落ちている金属片を溶かして子どものオモチャや工具・農機具を作成。そして戦争が終わっても、人々は戦いの残骸を形のある物に変え、観光客やノスタルジックな気分に浸る兵士たちに販売することで安定した収入を得たそうです。

このような経緯のためにトレンチアートの起源が第一次世界大戦だと思っている人は多くいますが、実際は19世紀にすでに作られていました。


1803年に起こったナポレオン戦争でイギリス軍はフランスの兵士10万人を捕らえ廃船に閉じ込めましたが、およそ10年に渡る監禁生活の中でひまを持てあましたフランス兵士たちはトレンチアートを作り始めます。物資が乏しいので、その多くが食事に入っていた骨や服の切れ端、自分の毛髪などを使用したとのこと。さらに彼らはトレンチアートを食事や、よりいい作品を作るための素材と交換し、トレンチアートはまるでお金のような役割を果たしました。外の世界の経済と同じように、真ちゅうなどの素材を管理するギルドのような役割を果たす兵士まで出てきたほどです。

作品のテーマは故郷の風景からドミノのコマまでさまざま。彼らが作った複雑で繊細な作品は数百年が経過した今でもまだ残っています。芸術家の作品は環境が決めると言われますが、イギリス人の船に閉じ込められたフランス兵たちの作品にある傾向が見られるのも、これが理由。彼らはオーディエンス、つまり、「イギリス船が見たい」というイギリス人看守たちの要望に応えたのです。


以下はクリベッジという2人用のゲーム。


25ポンド砲のケースを使って作られた女性の裸体。


トレンチアートの慣習は現在にまで受け継がれ、アフガニスタンに向かった兵士たちもまた、作品を作りました。中には作ったトレンチアートをそのまま家に持ち帰った者もいます。アフガニスタンのイギリス軍基地Camp Bastionに滞在したDarren Adamsさんもその1人で、薬きょうから父親のために栓抜きを、娘のためにオモチャの列車を作ったそうです。


なお、お金持ちのコレクターや珍しい戦争の遺物好きの人々によって今でもトレンチアートの売買が行われており、eBayで競り落とされる他、カナダのギャラリーではナポレオン時代の美しいトレンチアートを集めた展示会も行われています。

by The U.S. Army

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in メモ,   デザイン, Posted by darkhorse_log

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