日本より進んだ英語教育など元教師が驚愕したアフリカの学校3つ
アフリカの学校と聞いて、どんなイメージを抱くでしょうか。草むらに佇む木造校舎……?とんでもない。場合によっては、日本は遅れを取っているといえるでしょう。
こんにちは!旅人が世界を伝える世界新聞特命記者の雑色啓晴です。僕は今、北欧のスウェーデン(星印)に居ます(赤線は陸路、青線は空路で移動)。年末まで、東アフリカに2か月間滞在していました。
僕は旅立つ前に、中高一貫校で理科教師をしていました。それゆえ、「海外の中学・高校を見学する」ということを旅の1つのテーマとしています。その目的は「新しい授業手法を得る」「海外の学校の特色を知る」「各国生徒のリアルを知る」「クラブ活動を日本と比較する」の4点です。
今回掲載する3校はいずれも写真取材の許可が出たもので、それぞれ生徒へのインタビューも掲載しています。これまでにアジアの学校まとめ、インド・中東・東欧の学校まとめの2本の記事を掲載しました。
元教師を驚愕させたアジアの中学校・高校6つ - GIGAZINE
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◆チョークが飛ぶ、エチオピアの65人クラス
エチオピアではジンマにある公立のJiren Secondary Schoolを訪問しました。セカンダリースクールといっても15歳~18歳(9・10・11・12年生)の日本でいう高校です。授業料は無料です。
大きな校舎というものはなく、敷地内に写真のような小屋が10棟ほど設置され、そこが教室となっていました。
これは時間割です。よく見ると、6時間目が12時前に終わっています。その理由は生徒数の多さにあります。一学年が約1300人という膨大な人数なので、午前と午後の2部制になっています。兄弟で入れ替わりに通学していました。ちなみに右上の部分が「2007年」となっていますが、エチオピア歴という独自の暦なので、間違いではありません。
教室の様子です。エチオピアの人たちは写真に照れます。男女比が4:6と女子が多いです。アフリカでは、未だに女子は家の手伝いなどで学校に行きにくいという偏見があったので、少し驚きました。
こちらは9年生(日本の中学3年生)の化学の授業。英語で教えていました。すべての教科を英語で教えるそうです。アフリカでも、英語教育の日本との格差を感じてしまいました。また、このクラスの人数はなんと65人。日本の倍ほどの数です。
このため、2人用の机に3人で座っていて、ノートが取り辛そうでした。担当先生も65人の生徒の理解を把握するのは難しいと言っていました。しかし、少しでもうるさくした生徒にはチョークを投げて、クラスをまとめていました。
教室は思ったよりも綺麗でしたが、よく見ると床が穴だらけでした。
生徒は至って真面目です。先生の質問にはみんな積極的に答えていました。授業が終わっても質問していました。
右のブルークアバラ君は9年生(15歳)で数学が得意で、将来は技術者になりたいと言っていました。放課後は家の手伝いがあるそうです。
教頭先生が教えてくれました。エチオピアの教育は1996年までアメリカ・イタリア・イギリスの方式を取り入れていたようです。しかし、主要産業を一次から二次にシフトしたいので、中国・インドの教育をお手本にするようになりました。具体的には、訓練学校など技術を促進させる教育機関を設けました。そして、11〜12学年には成績優秀者上位20%だけが進学して、それ以外の生徒は訓練学校に行くようになったようです。
僕はやはり、1クラス65人という事が衝撃でした。それをまとめる先生の疲労は計り知れません。しかも、理系の先生が不足しているため、午前午後と授業に出ずっぱりだそうです。それなのに、月給は200ドル(約2万3500円)以下なのだとか。
◆特別学級が充実しているマラウイの学校
マラウイでは ムジンバにある公立・Mzimba Secondary Schoolを見学しました。ここも、15歳~18歳が通っている、日本でいうところの高校に当たります。授業料は3か月で500クワチャ(約125円)でした。
ここの生徒は寮で生活しています。校舎はエチオピア同様、敷地内にいくつか小屋が設置されていました。マラウイの空は絵に描いたような青さでした。
見学させてもらった日は冬休み前の試験中でした。教室内の見学はできなかったのですが、学校関係者の話によると、1クラス90人もいるとのことでした。エチオピアよりも多いですね。
これは試験の日程表。所々に休み時間が目立ちます。教室や人員が足りていないのでしょうか?「LIFE SKILLS」はHIVなどの感染症から身を守る手段を学ぶ科目でもあるようです。マラウイは、Wikipediaの「マラウイにおけるHIV/AIDS」の記事によると、「15歳から49歳までの成人のうちの約14.1%がHIVに感染していることが明らかとなっており、世界で最もHIV/AIDSが流行している地域の1つ」とされています。
試験問題は教科ごとに解答時間も異なっていました。こちらは「農業」のテスト。右上に時間が記入されています。1時間30分です。
こちらは英語のテスト。1時間10分です。他の教科も見せていただきましたが、母国語を除き、英語で問題が作られていました。
こちらは化学実験室の薬品庫の写真です。一見豊富に見えますが、どれも古すぎて使えず、4・5年後に政府が買ってくれるかもと言っていました。化学と物理は一つの教科として一緒に教えていました。しかし、先進国に倣って来年度から別々に教えるそうです。
学校にはJICAの支援のマークが見られました。マラウイは青年海外協力隊員が多い国としても知られています。このマットもJICAによる支給だそうです。1978年には数学の日本人教師が派遣されていました。40年ほど前に、アフリカの地に踏み入る勇気に感服しました。
この学校には特別学級もありました。視覚障害・聴覚障害の子ども18人がテストを受けていました。写真のように点字用の印刷機など、彼らに対する設備がしっかりしていました。北欧の国が支援しているようです。
こちらは、点字で書かれたノート。文字の下に点字が打ってあります。
左の彼女は15歳(1年生)のウィンさん。英語が得意で、放課後はマラウイの主食であるシマ(トウモロコシの粉をペーストにした食べ物)をいつも食べていると、冗談を言ってくれました。夢はまだ決まってないようです。
恥ずかしながら、アフリカで障害を持った生徒に対する環境があることを想定していませんでした。特別学級の内、3人がアルビノの生徒でした。アルビノとはメラニンの欠乏により体毛や皮膚が白くなる疾患です。アルビノのルーツは東アフリカと考えられており、街を歩いていても見かける事が多かったです。彼らを含めた、特別学級の支援がアフリカ全土で維持されることを願います。
◆マンゴー食べ放題、ザンビアの理科大好き校
ザンビアでは、世界三大瀑布の一つビクトリアフォールズのある街リビングストンの公立・David Livingstone Secondary Schoolを見学しました。ここは、14歳~18歳(8年生~12年生)が通う、日本でいう中学と高校が合わさったものです。
敷地内は緑があふれていて、ほかの国同様の縦長の平屋がいくつも建てられていました。アフリカには、日本のような校舎という概念はないようです。
そんな中エイズについて警告する看板を発見しました。ここもエイズの多い国の一つです。
訪問させて頂いた時は冬季休暇だったのにもかかわらず、生徒たちは年始のテストのために自主的に勉強をしていました。
冬季講習もありました。こちらはその教室です。
リビングストンでは街中でマンゴーの木を見かけます。もちろん校舎内もマンゴーの木でいっぱいでした。マンゴーの実が飽和状態です。生徒たちは実を落とし、校舎内でかぶりついていました。
僕もちゃっかり2つもらいました(笑)
右の生徒は17歳(11学年)のキート君。物理と化学が得意で、将来はエンジニアになりたいようです。放課後は勉強をしています。
ここの生徒たち4人にインタビューさせて頂きましたが、「放課後すること」の答えは、みんな決まって「勉強」でした。しかも、看護師や技術者など理系の職に就くため、理科を得意にしていました。日本でインタビューしたらこうなるでしょうか?
◆まとめ
草むらに佇む、窓がない木造校舎。これが僕のイメージしていたアフリカの学校でした。しかし、実際は名の知れていない都市でさえ、教育カリキュラムや設備が思った以上にしっかりしていました。
特に「英語教育の充実」と「理科好きの生徒が多い」ことには驚きました。最初、フランス語のイメージが強くて心配しましたが、授業やテストがすべて英語で行われていたように、東アフリカではほとんど英語に困りませんでした。今までの学校訪問を顧みても、日本のように英語の授業を母国語で行っている国は数えるほどです。
また、日本のような科学技術国に理科嫌いの生徒が多いことを話すと、いつも「冗談だろ」と言われます。理系職業の給料が高いことが原因なのでしょうが、「物理・化学が好き」と堂々と言っている生徒を見ると、将来を担う頼もしさを感じました。
僕の旅も残り2か月、最後は中米・南米の学校の様子を届けたいと思います。
文・取材:雑色啓晴 http://zoshiki.com/wp/
監修:世界新聞 sekaishinbun.net
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