取材

元教師を驚愕させたアジアの中学校・高校6つ



アジアの学校にどのようなイメージをお持ちでしょうか?元教師の僕が訪問したアジアの10か国12校の中から、日本ではありえない特徴を持つ中学校・高校6校をご紹介します。

こんにちは!世界新聞特命記者の雑色啓晴です。僕は今、バングラデシュの首都ダッカ(地図中星印)に居ます(赤線は陸路、青線は空路で移動)。ここが僕の旅のアジア最終国です。今後インドに戻り、パキスタンに入ろうと思っています。


僕は旅立つ前に、中高一貫校で理科教師をしていました。それ故、「世界の中学・高校を見学する」ということを旅の1つのテーマとしています。その目的は「新しい授業手法を得る」「世界の学校の特色を知る」「各国生徒のリアルを知る」「クラブ活動を日本と比較する」の4点です。


上記のルート順に学校を紹介していきます。それぞれの最後に生徒へのインタビューも記載しておきます。

◆バリ島では日本語が必修だった
インドネシアではバリ島にある公立SMA NEGERI 1 KUTA高校に訪問しました。


校舎に入る前に驚くのが、広い敷地の周りを一周して駐車してある原チャリの数です。バイク社会が垣間見られます。


校舎は公立とは思えない程とても綺麗でした。通勤通学するにも心躍りますね。


教室に入り驚いたのは生徒数です。前に僕が担当していたクラスは約35人ですが、ここには50人程いました。まとめている先生方に脱帽です。


そして、日本語が1年間必修であることを知りました。写真は日本語の先生と質問しに来ていた生徒です。質問内容は「恋人と一緒に映画館で映画を見ます」と「映画館で恋人と一緒に映画を見ます」ではどちらがいいですか?でした。


彼女は3年生(18歳)のリーシャさん。数学・英語・経済の授業が好きで、放課後は英語クラブで活動していて、ディベートの受賞経験もありとか。夢は法律関係の仕事に就くことだと言っていました。


日本語必修から、政府が日本人観光客誘致へ力を入れていることが伺えました。高校生の内から第二外国語を学ぶ環境があるというのは、英語だけでヒーヒー言っている僕らには想像がつきませんね。

◆クアラルンプールでは性教育が週4コマ行われていた
マレーシアではクアラルンプールにある公立のVICTORIA INSTITUTIONという100年以上続く伝統ある学校を見学しました。日本で言う中学校・高校とさらには大学予備校と呼ばれるものが併設され、人によっては7年間所属します。


校舎は趣を感じさせる造りになっていて、敷地は終わりが見えないほど広かったです。


敷地内には礼拝堂(モスク)があり、マレーシアがイスラム国家であることが伺えます。


時間割の説明を聞いているとジェンダー・サイエンスなるものが週4コマ行われていることがわかりました。初めは文化的・社会的な性について学ぶものかと思っていましたが、授業を覗くと、月経周期について勉強していました。


そして、その影響もあるのか生物室には虫の標本と並んで……胎児の標本がありました。これはアジア一の驚きです。


右の男子生徒はイスカンダー君です。現在中学2年(14歳)でテコンドー部に所属しています。好きな授業はITで、将来はエンジニアになりたいと言っていました。


日本で性教育はまだまだ偏見があり、教育方法も改善の余地があるでしょう。先進国で唯一エイズ患者が上昇しているという事実もあります。この訪問から、性の問題も臆することなく伝えられる教師になりたいと確認できました。

また、インド系・マレー系・中国系の子達が一緒の言語で勉強している姿が僕には新鮮に映りました。それ故、英語教育は進んでいて、英語だけではなく理科・数学の授業が英語で行われているのも印象的でした。

◆カンボジアでは「映画」の授業があった
カンボジアではプノンペンで、私立のELT(English Language Teaching Institute)にお邪魔しました。外務省の情報によると、カンボジアでは教師不足から公立では半日しか授業ができず、生徒たちは空いた時間で塾や私立の学校に行くのが一般的なようです。その為、このELTには1日コースと半日用のコースが設けられていました。

まず、外観は一部上場企業のオフィスのようですね。ここはカンボジアですよ。


そして、中に入ると近代的な造りに驚かされます。受付に並ぶパソコンもMacで統一されています。こんな学校で働きたいです。


また、図書館は白で統一されていて、どこか違う国に来たようでした。


英語の授業の様子です。ここは幼稚園から高校までをカバーしており、こちらは小学生の教室です。教科書を流暢に音読していました。


また、時間割を見せてもらうと、なんと……映画の授業がありました!シアタールームが3つもあるそうです。


右の女子生徒は中学3年生のレンハ-さん。好きな教科は国語(クメール語)で、学校で映画を見ることが好きだと言っていました。将来の夢はまだ決まっていないようです。


僕がカンボジアの学校と聞いてイメージしていたのは荒野に建つ木造校舎でした。でも、実際はこのような近代的な学校もあり、僕の中の偏見がまた1つ拭えました。

また、「映画」を生徒に見せるのは有意義だと感じました。僕は授業中に視覚資料の提示に重きを置いています。生徒がイメージしやすくなるからです。その点、映画で授業に関連したものを見せるのは挑戦したい授業方法の1つです。

◆ハノイの物理教師はFacebookページが「1万いいね」の超有名人だった
ベトナムではハノイにあるこちらの公立高校を訪れました。


校舎は3棟あり、レトロな雰囲気が漂っていました。


そして、校内を案内して頂いたモミアゲが素敵なこちらの先生が、TVなどでも取り上げられている物理の有名教師でした。


彼のFacebookのページを見ると「1万いいね」を超えていました。日本でこれだけ有名な公立の先生はいるでしょうか?


彼は高校1年生(16歳)のロン君です。英語が得意で将来は社会貢献できる仕事に就きたいそうです。放課後は1時間約30円のネットカフェに行くのが日課です。


先日、日本の公立中学校で校長をしていた70歳を超える旅人に出会いました。彼は「閉鎖的・排他的」が日本の学校教育の問題点だと仰っていました。推測ですが、ここベトナムではそれとは対照的な開放的学校環境があるからこそ、話題を呼び、公立の教師が有名になれるのだと感じました。

◆ネパールでは週1でクイズ大会が行われていた
ネパールではカトマンズにある公立のDURBER HIGH SCHOOLを見学しました。


校舎は写真のように伝統的な造りになっていました。


そして、この日は授業そっちのけでクイズ大会の日でした。全校生徒(150人ほど)が大教室に会します。


先生たちが中心になって、日ごろ学習したことからクイズを出題します。これは先生にとっても生徒の理解力が把握できるので楽しいですね。


そして、(おそらく)同学年が5つのチームに分かれ、日ごろの勉強の成果を競い合いあいます。


奥のチームが答えていて手前のチームは悔しそうです。このようなクイズ大会やディベートが毎週開かれていると言っていました。


彼は18歳のルディアル君。数学が好きで統計学などを放課後にも勉強しているようです。将来は軍隊に入りたいそうです。


このクイズ大会のようなゲーミフィケーションを学校全体で行っているのが素晴らしいです。日本でも、体育祭・学祭と並んでクイズ祭があっても面白いですね。もっと楽しみながら学べる環境づくりを取り入れたいと感じました。

◆図書館がないバングラデシュの学校
バングラデシュではダッカにある私立のAl Sabah Academyを見学しました。5歳~15歳までの小中学生が学んでいて、午前中が女子、午後が男子と通学時間が分かれていました。


校舎にはドラえもんなどのキャラクターが描かれていました。


バングラデシュはイスラム国家のため、女子生徒はスカーフを頭に覆った人が多いです。混同して名前覚えるのが大変そう(笑)。


バングラデシュには観光客が少ないため、外国人は映画スター並の扱いを受けます。生徒たちにサインをねだられています。


このように、日本語で名前を書いてあげて、過剰表現ではなく100枚ぐらいのサインをしました(笑)


彼女は14歳のコニカさんです。得意科目は英語で、将来は医者になりたいと言います。放課後は家の手伝いをしています。


この学校の学費は月300タカ(約400円)です。それでも、30%の生徒は支払えないと言います。また、図書館・パソコンルーム・実験室がこの学校にはありません。案内をしてくれた英語教師は、「これらは教育に必要不可欠だから何とかできないか」と僕にお願いしてきました。僕は記事を書いて周知することを約束しました。もし、援助可能な方がいましたら僕のサイト・COSMOPOLITANの問い合わせメールフォームからご連絡ください。

◆まとめ
今回、アジアの途上国全体で感じたことは、「予想よりも教育設備が整っていること」「英語教育の充実」が挙げられます。途上国は都市部でも殺風景な木造校舎で勉強というのはどうやら僕の偏見でしたし、僕の英語でのインタビューに快く回答出来る子が多かったです。

対照的に予想通りなのはクラブ活動です。日本ほど盛んな国はありませんでした。最後に、わりと残念なのは黒板文化が当たり前ではないことです。見学した約半数はホワイトボードでした。僕は黒板にチョークで書く感触や音が好きなのでこの文化をもっと大切にしたいと感じました。

これからも中東・アフリカ・南米と現地から学校情報を伝えていきたいと思います。

文・取材:雑色啓晴 http://zoshiki.com/wp/

監修:世界新聞 sekaishinbun.net


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in 取材, Posted by logc_nt

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