取材

まるで雪でできたかのような世界一長い塩の洞窟へ行ってきた


塩にまつわる絶景といえば、ボリビアのウユニ塩湖が有名ですが、イランには世界一長い塩の洞窟があります。

こんにちは!世界新聞特命記者の雑色啓晴です。世界一周中の僕は以前、理科教師として中学・高校で教鞭を取っていました。この旅が終わったら、本格的に教師の道に進む予定です。その為、この旅の目的の1つは、将来子どもたちに話せる「理科ネタ探し」です。


今回僕は、イランのゲシュム島に世界一長い塩の洞窟があるというので、その様子を見学してきました。

場所は星印をつけたところです(赤線は陸路、青線は空路で移動)。


◆優雅に紅茶を啜る列車移動
僕はゲシュム島まで、イランの首都テヘランから列車と船を乗り継ぎ向かいました。所要約20時間です。その時乗った寝台列車が素敵だったので少し紹介します。テヘラン駅は写真のように立派です。


駅の構内の様子です。チケットは71万6000リアル(約2900円)でした。


車両に入ると10くらいの部屋があり、それぞれ4つの座席が設置されています。


席にはお菓子と紅茶が設けられており……


出発すると車掌がお湯を持ってきてティータイムのスタートです。


荒野を走る列車から見える景色は雄大で、日の入りが重なるとても贅沢な時間でした。


ちなみに夜は、座席の上に収納されているベッドが引き出され、座席が下段となり二段ベッドの様にして横になります。


列車で対岸の街バンダレ・アッバースまで来ると、船に乗り換えて1時間程でゲシュム島に到着です。


改めて、このような位置関係にある島です。ドバイが目の前です。


◆ゲシュム島ジオパーク
ゲシュム島は2005年に中東で初めてのジオパークとして登録されました。ジオパークとは、日本ジオパークネットワークによれば「ジオ(地球)に親しみジオを学ぶ旅、ジオツーリズムを楽しむ場所」「山や川をよく見て、その成り立ちとしくみに気付き、生態系や人間生活との関わりを考える場所」のこと。ユネスコに支援されている事もあり、僕は、世界自然遺産を学術的に特化させたものと考えています。


しかし、ユネスコによるジオパークの運営規則に従わなかった為、現在、ゲシュム島は登録を抹消されています

◆ジオパークを親しむツアーへ出発
ジオパークに登録されていたことからも分かるようにゲシュム島には塩の洞窟だけでなく、他にも自然に親しめるスポットがたくさんあります。

到着した日にツアーに申し込みました。マイクロバスに乗って島を巡りますが、ゲシュム島は道を走っているだけでも驚かされるような景観にしばしば出くわします。


ここは、マングローブ林です。このマングローブ林は島の10分の1程の面積を持つとも言われています。また、船頭さんによると時期が合えばこのマングローブ林でドルフィンウォッチングも出来るそうです。


そして、このツアーの目玉が「星たちの谷」と呼ばれる場所。ここには風化侵食によって形成された奇岩が並んでいます。


どうでしょうか、僕と比べるとその広大さがわかります。


トルコにあるカッパドキアを彷彿とさせますね。この他にも2か所巡りました。


◆塩の洞窟を目指して
さて、翌日は塩の洞窟に向かいます。しかしツアーやバスはありません。さらには道が荒い為、専用の車をチャーターしなくてはなりません。それが約8000円するとのことだったので近くの町までヒッチハイクで行き、そこで車をチャーターすることにしました。ちなみに、イランではヒッチハイクの文化が浸透していないのか、必ずお金を要求されるので、予めお金のやり取りはなくてもいいか確認しましょう。


ゲシュムという街から4台の車を乗り継ぎ、2時間程で最寄りのサラックという街に着き、車のチャーターに成功しました。それでも70万リアル(約2800円)かかりました。


こちらが引き受けてくれた運転手と(恐らく)その奥さんです。奥さんが付けているマスクは、イラン南部のバンダリーと呼ばれる伝統衣装で、特に年配の女性は外出する際に着用していることが多いです。


◆洞窟の前には雪のような塩の結晶が広がっていた
舗装なしの荒れた道を進みます。その道の両側には、層の脆さの違いの結果生じた鋭利な形が上部に残された崖などが広がり、ここでも風光明媚な地層が観察できました。


一時間程走ると車は止まり、運転手がここだと言ってきます。どうやら、洞窟までの案内はなさそうです。車外に出るとそこには一面に塩の結晶が広がっていました。


横になっているのが僕です(笑)。


端をポキッと折って、塩を確かめてみました。


この一面の結晶を歩いていくと、どこから来たのか小川のような塩水が流れています。舐めてみるととても濃度が濃く感じました。真っ白な塩が雪のように見え、まるで春先の雪解けに立ち会えたかのようです。


雪の結晶は大きいものになると人間の脳のようでした。


◆洞窟に潜入
その小川を辿っていくと何やらぽっかりと穴が開いています。


それを登り、覗き込むと…..ありました!洞窟の入り口です。上からぶら下がる塩のつららが排他的な冷たさを醸し出しています。


早速中に入ります。すると、洞窟内は四方が真っ白な塩の結晶で覆われて、何とも言えぬ美しさでした。しかし、1m程進むと思った以上に暗く、ヘッドライト1つでは数cm先しか見えませんでした。写真は天井のものです。


味を確かめるのはお約束ですね(笑)。


入り口を振り返ると、息を飲む景色が広がっていました。


僕が立つとこんな感じです。


先に進むにつれ、どんどん暗くそして狭くなっていきます。高さは60㎝ぐらいでしょうか。小川に足を浸け、しゃがまないと前に進めません。10m程進んだところで明かりが全く足りず、恐怖を感じたのであきらめることにしました。


この塩の洞窟は6.5kmの長さで世界最長と言われています。100mまでは見学可能とのことでしたが、気軽に1人で行けるものではありませんでした。下記動画でさらに神秘的な奥の様子を見ることができます。

World's Longest Salt Cave in Iran's Qeshm - YouTube


◆なぜ、塩の洞窟ができるのか
この場所は岩塩ドームと呼ばれる緩やかな塩の丘に位置しています。標高は397mです。まず、そこに地殻変動などの理由で洞窟ができます。後は、雨が降ると岩塩ドームに浸み込み、塩を取り込みながら下へ浸透していきます。それが洞窟に達すると、再び結晶化して塩のつららができます。また、僕が見た小川は雨水が浸み込み、それが湧き出たもののようです。

ゲシュム島
http://japaniranhiroba.com/readmore.php?language=english&ID=56

従って、上下両方から洞窟内で結晶の生成が可能となるため、四方が塩に囲まれた洞窟になるのだと思われます。洞窟を出た後にふと自分の靴を見ると、塩が結晶化していました。


◆最後に
今回、ここまで観光地化されてない名所は珍しいと感じました。だからこそ冒険好きの方にはおすすめの場所です。また、3年以内にはイラン本土とゲシュム島の間に橋がかけられるようで、鉄道やバスで直接行けるようになるようです。もしイランに行く機会があれば大きな懐中電灯を持ってゲシュム島に足を運んでみてはいかがでしょうか?

文・取材:雑色啓晴 http://zoshiki.com/wp/

監修:世界新聞 sekaishinbun.net


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in 取材, Posted by logc_nt

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