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MozillaがAdobeと提携してHTML5でデジタル著作権管理(DRM)をサポート

By Sparrow*

デジタルコンテンツは容易に無劣化での複製が可能なため、著作権を保護する仕組みとしてデジタル著作権管理(DRM)という技術が用いられています。今後、ウェブに広く普及して行くことが見込まれるHTML5へのDRMの導入のため、ウェブブラウザFirefoxを開発するMozillaがAdobeと連携することを発表しましたが、オープンなインターネット世界を求める団体からは批判の声が上がっています。

Reconciling Mozilla’s Mission and W3C EME ✩ Mozilla Hacks – the Web developer blog
https://hacks.mozilla.org/2014/05/reconciling-mozillas-mission-and-w3c-eme/

Firefox’s adoption of closed-source DRM breaks my heart | Technology | theguardian.com
http://www.theguardian.com/technology/2014/may/14/firefox-closed-source-drm-video-browser-cory-doctorow

FSF condemns partnership between Mozilla and Adobe to support Digital Restrictions Management — Free Software Foundation — working together for free software
https://fsf.org/news/fsf-condemns-partnership-between-mozilla-and-adobe-to-support-digital-restrictions-management?pk_campaign=mozilla_eme&pk_kwd=social_media

Can This Web Be Saved? Mozilla Accepts DRM, and We All Lose | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2014/05/mozilla-and-drm

現在、DRMで保護されたコンテンツのウェブブラウザでの再生は、Adobe FlashやMicrosoft Silverlightなどのプラグインによってサポートされています。しかし、HTML5においてはvideoタグが実装されることでプラグイン不要でムービーの再生が可能となるため、従来のプラグインによるDRMサポートはできません。そのため、Google・Microsoft・Netflixの3社によってWeb標準化団体のWorld Wide Web Consortium(W3C)に対して、HTML5で暗号化されたムービーや音声を再生できるAPIの標準化を求める働きかけが行われるなど、プラグインに頼らない形でのDRMサポートの必要性が主張されていました。

このような要求に対応して、W3CはHTMLMediaElementの機能を拡張する「Encrypted Media Extensions」を策定することでDRMに対応する方針を示し、GoogleはすべてのChromeでDRMに対応することを発表し、MicrosoftもInternet Explorer 11でのDRMサポートを行っています。Chrome・IE両ブラウザがHTML5でのDRMサポートを早々と表明した中、Firefoxを開発するMozillaは、これまでDRMサポートを明確にしてきませんでしたが、ついにAdobeと提携してDRMをサポートすることを表明しました。

FirefoxでのDRMサポートが他のブラウザに比べて遅れた理由は、Mozillaの理念によるところが大きいと考えられています。すなわち、「インターネットは公共の資産でありオープンであることがインターネットをより良いものにする鍵だ」というMozillaの理念は、クローズドな概念であるDRMのサポートになじまないという判断です。そのためHTML5でFirefoxがDRMをサポートするためAdobeとの提携を発表すると、高尚なMozillaの理念に賛同していた、オープンなソフトウェア環境を志向する団体や個人からは失望・落胆・怒りなどの感情を交えた批判的意見が表明されたというわけです。

By Francesco Lodolo

もっとも、Mozillaの今回の判断が苦渋の決断であったことは、Mozillaの上級副社長アンドレアス・ギャル氏のブログのコメントからも見て取れます。ギャル氏は、「While we would much prefer a world and a Web without DRM, our users need it to access the content they want.(私たちはDRMのない世界を望んでいますが、FirefoxのユーザーはDRM保護されたデジタルコンテンツへのアクセスを望んでいます)」と述べています。これは、Netflixなどのムービーストリーミングサービスが大流行する中で、このままではFirefoxユーザーはストリーミングサービスを利用できなくなること、ひいてはDRMをサポートするChromeやIEにユーザーが乗り換えてしまうことを危惧する末に決断された苦渋の選択だったということを示唆するものと言えそうです。

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