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AI導入で利益率が上がるまでには市場の想定よりも長期間かかる可能性がある


AIへの投資によって企業の利益がすぐに伸びるとは限らず、テクノロジー分野以外では投資対効果(ROI)が表れるまでに長い時間がかかる可能性があると、アポロ・グローバル・マネジメントのチーフエコノミストであるトーステン・スロック氏が指摘しています。

AI: The ROI Runway Could Be Long Outside the Tech Sector | The Daily Spark
https://www.apollo.com/wealth/insights-news/insights/daily-spark/ai-the-roi-runway-could-be-long-outside-the-tech-sector


スロック氏は、AI企業の株価評価には「S&P 500から主要テクノロジー7社を除いたS&P 493の利益率が将来的に上がる」という期待が織り込まれていると説明しています。ところが、2026年6月時点ではテクノロジー分野以外で利益率が上昇している兆候は見られないとのこと。AIへの期待が株価を押し上げている一方で、AIを使う側の企業が実際に利益を増やすまでの道のりはまだ見えにくいという状況です。

AI導入の採算を考える上で重要になるのが、AIを動かすたびに発生する「トークンコスト」です。AIを導入した企業の利益が実際に改善しなければ高いトークンコストが正当化されることはなく、トークンコストを下げないとAIの利用量が増えない場合、大手クラウド事業者などの収益が想定ほど伸びない可能性があります。スロック氏は、トークンコストやモデルの使い分け、トークン市場をめぐる議論が重要になっている理由も、AI企業の将来収益と深く結び付いているためだと述べています。


テクノロジー分野ではAIを既存製品や社内プロセスへ短期間で組み込めるケースが散見されます。一方で医療・銀行・保険・エネルギー・公益事業・防衛・航空宇宙・製薬・ライフサイエンス・製造・物流・建設・不動産・教育・法務・公共部門などテクノロジー以外の多数の分野では規制対応・データ管理・業務設計の変更が必要になるため、AIによる生産性向上が市場の想定より遅れる可能性があるとのこと。

また、実際にAIの運用を始める前段階では、AIの社内プロセスへの組み込みに加えてAIを前提にしたルール作りにも時間がかかります。たとえばAIで書類確認を高速化できても、確認結果を誰が承認するのか、ミスが出た場合に誰が責任を負うのか、社内データをどこまでAIに渡してよいのかが決まっていなければ、業務全体の時間短縮にはつながりません。

いずれはテクノロジー分野以外にもAIが導入されていくとしても、株式市場はAIによる利益成長をかなり前倒しで織り込んでいる可能性があり、導入の遅れが問題になるとのこと。スロック氏は生産性が「5カ月」で急上昇するのではなく「5年」かけて伸びる場合、すぐに利益が増えることを前提にした株価は見直しを迫られる恐れがあると指摘しています。


また、企業がAI投資の成果をすぐに確認できなければ、AI関連支出を抑える可能性もあります。スロック氏はAIの処理費用を減らすための最適化に注目が集まっている状況について、AI導入が想定よりもでこぼこの多い道のりになる可能性を示す早期の警告だと説明しています。

AIは業務を速くする道具として期待されていますが、利益率を押し上げるにはAIを導入した企業側の業務・データ・規制対応・費用管理がかみ合う必要があります。スロック氏は、投資家が期待するAI企業の収益と、企業がAI投資から実際にROIを得るまでに必要な時間のずれが、AI企業の評価に大きな影響を及ぼす可能性があると述べています。

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