知能の高い人はより良いアイデアのために古いやり方を捨て去ることができるとの研究結果

特定のタスクに繰り返し取り組んでいる時、「やり方を変えた方がうまくいくのでは?」と考え、すんなり新しいやり方に切り替えられる人もいれば、これまでのやり方から離れられない人もいます。社会的学習に関する新たな研究では、知能の高い人は新しい解決策が利用可能になった際、古いやり方を捨て去って切り替えられる可能性が高いことがわかりました。
Individual differences in intelligence and personality guide human social learning - ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0191886926000024
Highly intelligent people are more likely to ditch old habits for better ideas, study finds
https://www.psypost.org/highly-intelligent-people-are-more-likely-to-ditch-old-habits-for-better-ideas-study-finds/
他者から学ぶ能力は「社会的学習」と呼ばれ、この能力のおかげで人間は他者を観察し、交流することで知識・行動・態度・スキルを習得できます。たとえば、子どもがクラスメイトや教師の行動を観察することで、教室での正しい振る舞い方を学ぶのも社会的学習のひとつです。
また、社会的学習には自分にとって有益だと思われるものを模倣するだけでなく、負の結果につながると思われるものを避ける能力も含まれます。このプロセスは自動的に行われるのではなく、人は自分が目にしたものを解釈し、その行動が妥当かどうかを判断する必要があります。西オーストラリア大学の心理科学部准教授を務めるニコラス・フェイ氏らの研究チームは、知能や性格における個人差が社会的学習をどの程度左右するのかを調べるための実験を行いました。
1つ目の実験には、西オーストラリア大学の学部生201人とオンラインで募集した369人の被験者が参加しました。被験者の平均年齢は大学生が20~21歳であり、オンラインの被験者は44~45歳でした。両グループは知能検査と性格検査を受けたほか、「南京錠(なんきんじょう)課題」と「迷路課題」という2つの問題に取り組みました。
南京錠課題では、被験者は提示された7桁の番号を記憶し、番号付きボタンをその通りに押すことで南京錠のかかった宝箱を開けて、「賞品」を獲得する方法を学びました。トレーニング中に3つの南京錠が開けられましたが、4つ目の南京錠を開ける際、被験者はこれまでと同じ解錠方法を踏襲するか、それとも新しい解錠方法に切り替えるかを選択できたとのこと。
被験者に提示された解錠方法は、7桁の数字のうち「前の数字と異なる数字の個数」によって、異なるレベルの評価を受けていました。レベルは低い方が簡単であり、最も簡単なのは「2222222」「7777777」のように7桁の数字すべてが同じ「レベル1」、最も難しいのは「7569231」「4109723」のように7桁の数字すべてが異なる「レベル7」となります。たとえば以下の数字「9577754」は、7桁のうち2桁が前の数字と同じなので「レベル3」となるわけです。

ある試行では、被験者は4つ目の南京錠を開ける際、以下のようにトレーニング時と同じレベルの数字(「9577754」など)か、トレーニング時よりも簡単なレベルの数字(「2222222」など)を選択できました。被験者がトレーニング時のレベルではなくより簡単なレベルを選択した場合、古いやり方を捨てて効率的な新しいやり方を選んだということになります。

別の試行では、以下のようにトレーニング時と同じレベルの数字(「9577754」など)か、トレーニング時よりも難しいレベルの数字(「7843723」など)を選択できました。被験者はトレーニング時よりも難しいレベルを選択することも可能ですが、これは認知的負荷が高く、以前より非効率なやり方を選んだということになります。他にも、トレーニング時と新たな選択のレベルが同じなど、さまざまな条件で被験者は選択を行ったとのこと。

迷路課題では、被験者は「タクシーを迷路の入り口から出口まで走らせる」というタスクに取り組み、やはり3回のトレーニングを行った後に従来のやり方を選ぶか、新しいやり方を選ぶかを選択できました。以下の「A」がトレーニング時の経路で、「B」はより難しい経路を選択可能だった場合、「C」はより簡単な経路を選択可能だった場合を示しています。「D」は被験者が操作する画面です。

実験の結果、被験者はトレーニングで習得したやり方よりも新しいやり方が優れている場合、新たなやり方に切り替える可能性が高いことが判明。一方で、従来のやり方と新たなやり方のレベルが同じだった場合、従来のやり方を使う可能性が高かったとのことです。
そして、知能の高い人は新たなやり方に切り替える傾向が強く、特に新たなやり方が優れている時にその傾向は強いことがわかりました。新しいアイデアや経験に興味を持つ傾向がある「経験への開放性」が強い人も、新たなやり方に切り替える傾向が強かったものの、従来のやり方よりもレベルが同等または低いやり方に切り替える可能性も高いことが報告されています。
研究チームがトレーニングの回数を増やして同様の実験を行ったところ、トレーニング期間が長いほど被験者が新しいやり方に切り替える可能性が下がることも示されました。研究チームは、トレーニングされた解決策への慣れが深まるほど「維持バイアス」が高まり、社会的学習が抑制されると考えています。
今回の研究はあくまで短い課題で行われたものであり、被験者が新しいやり方に切り替える具体的なメリットはなかったという点に注意が必要です。それでも研究チームは、「今回の研究結果は知能や性格における個人差、そして経験的要因が人間の社会的学習において重要であることを示しています」と述べました。
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