文学賞受賞者のAI使用疑惑を受けて受賞作品を掲載していた文芸誌が「編集権のない出版提携から撤退する」と発表

国際的な文学賞である「コモンウェルス短編小説賞」の2026年度受賞者発表において、受賞した5作品中3作品が「生成AIで書かれた可能性が高い」と指摘される事態が発生しました。騒動を受け、コモンウェルス短編小説賞の受賞作をオンラインで公開している文芸誌のグランタは「今後編集権がない状態で作品を掲載しない」と発表し、10年以上続いたコモンウェルス短編小説賞受賞作の掲載をやめることを表明しました。
Granta stops publishing short story award winners over AI controversy | Granta | The Guardian
https://www.theguardian.com/books/2026/jun/20/granta-magazine-commonwealth-short-story-prize-ai
Granta ends external publishing partnerships after Commonwealth Prize AI ‘controversy’
https://www.thebookseller.com/news/granta-ends-external-publishing-partnerships-after-commonwealth-prize-ai-controversy
コモンウェルス短編小説賞はイギリスの政府間組織であるコモンウェルス財団が2012年に創設した文学賞で、審査対象となるのは2000~5000語の未発表の短編小説であり、「アフリカ」「アジア」「カナダ&ヨーロッパ」「カリブ海」「太平洋」という5つの地域ごとの受賞者と、これらの中から1人の最優秀者が選ばれます。2026年度のコモンウェルス短編小説賞には史上2番目に多い7806作の応募があり、5月に各地域の受賞者が発表されましたが、このうちカリブ海地域の受賞者であるジャミール・ナジール氏の作品『The Serpent in the Grove(森の中の蛇)』が「AIで生成されたのではないか」と指摘されました。さらにその後、カナダ&ヨーロッパ地域の受賞作である『The Bastion’s Shadow(要塞の影)』とアジア地域の受賞作『Mehendi Nights(メヘンディの夜)』についてもAIで生成された疑いがあると指摘されています。
国際的な短編小説賞を受賞した5作品中3作品が「生成AIで書かれた可能性が高い」と指摘される事態に - GIGAZINE

コモンウェルス財団はAI使用疑惑を受けて声明を発表し、未発表のオリジナル作品にAI検出器を使用することは著作権や作者の同意に関する重大な懸念を引き起こすため、審査プロセスにおいて実施していないと明かしました。その上で、最終選考に残ったすべての作家はAIを使用していないことを自ら表明しており、「AIの使用を確実に検知できる十分なツールやプロセスが登場し、かつ未発表のフィクション作品を扱う際の課題にも対応できるようになるまでは、財団とコモンウェルス短編小説賞は信頼の原則に基づいて運営されなければならない」と述べています。また、コモンウェルス財団事務局長のラズミ・ファルーク氏は「コモンウェルス短編小説賞の中核を成すのは、信頼、尊重、そして芸術的誠実さという価値観です。私たちは、これらの価値観を賞を通して守り続けるだけでなく、今後何年にもわたってさらに強化していくよう努めてまいります」と語りました。
一連の騒動を受け、コモンウェルス短編小説賞の受賞作をオンラインで公開している文芸誌・グランタは、全受賞作の公開ページ上部に「グランタの編集者は、作品受領後の校正以外ではこれらの作品や選考に一切関与していません。今年は、一部の作品が少なくとも部分的にAIによって生成されたのではないかという臆測が流れています。作家が自身の作品ではないものを提出したという指摘について、グランタは誠実に受け止めていますが、確たる証拠が明らかになるまではこれらの作品をオンラインで掲載し続けます」という声明を表示していました。
そしてグランタは2026年6月19日に発表した新たな声明で、改めてコモンウェルス短編小説賞の選考には携わっていないことを明確にした上で、「編集上の公正さを保つため、グランタ・トラスト理事会は、今後外部との出版提携を行わないことを決定しました」と発表しました。

グランタは10年以上にわたりサイト上でコモンウェルス賞の受賞者を発表し、その作品を掲載してきました。今回の発表により、今後の受賞作品や受賞者記事を掲載しなくなります。なお、2026年度のコモンウェルス賞については、公益のために引き続き公開するとしています。
グランタは声明で「かつてのパートナーであるコモンウェルス財団の今後のご活躍をお祈り申し上げます」と述べています。
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