アート

画像生成AIで作った画像が写真コンテストで優勝、制作者は「AI画像は写真ではない」と述べ賞を辞退


ソニーが支援する写真コンテスト「ソニーワールドフォトグラフィーアワード(SWPA)」にAIで生成された画像が出品され、クリエイティブ部門の総合優勝作品として選ばれる事態が起こりました。出品者は「AIで生成された画像のための別の部門を作るプロセスを加速させるために出品した」と語り、受賞を辞退しました。

Sony World Photography Awards 2023 | boris eldagsen
https://www.eldagsen.com/sony-world-photography-awards-2023/

Artist Refuses Prize After His AI Image Wins at Top Photo Contest | PetaPixel
https://petapixel.com/2023/04/14/artist-refuses-prize-after-his-ai-image-wins-at-top-photo-contest/

ベルリン在住のフォトメディアアーティストであるボリス・エルダグセン氏は、2023年度のSWPAクリエイティブ部門に「THE ELECTRICIAN」と題した画像を応募しました。この画像は2人の女性が写ったポートレートのように見えますが、実はAIで生成されたものでした。

by Boris Eldagsen

この画像は、エルダグセン氏が2022年から取り組んでいる「PSEUDOMNESIA: Fake Memories」と題したシリーズを構成する作品のひとつです。エルダグセン氏は、「PSEUDOMNESIA」とはラテン語で疑似記憶、偽の記憶を意味し、単に不正確な記憶とは異なり、起こったことのない出来事をあたかも本当の出来事かのように思い出すようなものだと説明しており、そうした言葉をテーマに「存在しなかった、撮影されることのなかった過去の偽の記憶」をイメージして、AIで画像を生成しているとのこと。

by Boris Eldagsen

「THE ELECTRICIAN」はSWPAクリエイティブ部門の最終選考に残り、最終的に審査員によって同部門の総合優勝作品に選ばれました。

受賞が発表されると、エルダグセン氏は自身のブログで受賞とAIについて感想を述べました。


「クリエイティブ部門を受賞し、大変うれしく思っています。私は1989年から写真を撮り始め、2000年からフォトメディアアーティストとして活動しています。20年間写真を撮り続けた後、私の芸術的な焦点は、AIジェネレーターの創造的な可能性を探求することに移っています」

「私にとって、画像生成AIを使った仕事は、私がディレクターとなって作り上げる共創作品です。ボタンを押すだけでなく、テキストプロンプトを洗練させることから始まり、複雑なワークフローを開発し、さまざまなプラットフォームやテクニックをミックスして、このプロセスの複雑さを探求することなのです。そのようなワークフローを作り、パラメーターを定義すればするほど、クリエイティブな部分は高まります」

「私は自分の画像を『イメージ(images)』と呼んでいます。それらは、視覚言語としての『写真』を使って合成的に作られたもので、『写真』ではありません。公募に参加することで、アワード主催者がこの違いを認識し、AIで生成された画像のための別のコンペティションを創設するプロセスを加速させたいと考えています」

by Boris Eldagsen

エルダグセン氏の受賞は賛否両論あり、カメラも光も使わずに作られた画像が、実際の写真家よりも上位の写真賞を取ることができたという事実を人間の写真家たちが嘆いているようです。

上記の感想を掲載してから1ヶ月後の2023年4月13日、エルダグセン氏は改めて「私の画像を選んでいただき感謝します」と述べ、「AIで生成された画像であることを知っていた、あるいは疑っていた人はどれくらいいるのでしょうか。何か納得できないですよね?AI画像と写真は、このような賞で競い合うべきものではありません。違う存在なのだから。AI画像は写真ではない。だから、私はこの賞を受け取りません」とブログにつづり、受賞を拒否する意向を示しました。

これにより、賞金5000ドル(約67万円)とソニーのカメラ機材を含む賞品と、書籍や展覧会による全世界での宣伝などを含む栄光が放棄されました。

エルダグセン氏は「AI画像を応募できるコンテストが用意されているかどうかを確認するために応募しましたが、実際は用意されていませんでした。写真業界はオープンな議論を必要としています。何を写真と見なし、何を写真と見なさないかについての議論です。写真という枠組みは、AI画像を応募させるのに十分な大きさなのか、それともそれは間違いなのか。私は、この賞を拒否することで、この議論を加速させたいと考えています。AIに移行する以前から30年間写真家として活動してきた私は、この議論の長所と短所を理解しており、喜んで議論に参加するつもりです」と述べています。

なお、SWPAはこの件に関する公式声明を一切出しておらず、それどころかエルダグセン氏の画像と名前をSWPAのウェブサイトから削除する対応を行いました。

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in ソフトウェア,   アート, Posted by log1p_kr

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